ドナルド・トランプ勝利はFacebookのせい? 米メディアが猛攻撃

トランプ勝利はFacebookのせい? 米メディアが猛攻撃

デマも真実も一緒くたに拡散。

今回の大統領選挙、多くの人はドナルド・トランプ氏の勝利をまったく予想していませんでした。彼が6000万票近くを集めたこと、そしてそれをその日までほぼ誰も予期できなかったことについて、いたるところで大反省会と犯人探しが繰り広げられています。

ヒラリー・クリントン氏も民主党もメディアも自分に近い人の声しか聞いていなかったこと、選挙の話題性のわりに投票率が低かったこと、選挙直前にFBIがヒラリーのメール問題を蒸し返したこと、などなどなどいろいろな原因が考えられますが、今メディアの中で犯人のひとりに挙げられているのが、Facebookです。何が問題だったのか、米GizmodoのJ.K. Trotter氏がまとめています。

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今回の選挙期間中ジャーナリストたちは、有権者の情報源であるFacebookの力、ニュースや情報を形成し、歪め、支配する力に注目していました。匿名の安っぽいウェブサイトが、明らかな虚偽をFacebookに拡散しやすいような形で記事化している、とThe New York TimesSlateなどあちこちで指摘されてきました。これらのデマ記事の多くはトランプに有利に書かれていたため、今ジャーナリストたちは、トランプの当選をFacebookのせいにし始めています

「アメリカ人はこれまで、(トランプの)本当の姿を見ていなかった。なぜならFacebookが、真実よりも読者を引き付けることを優先しているからだ」とツイートしたのは、Atlanticの編集者、James Hamblin氏です。DeadspinのAlex Pareene氏も、Facebookは「北米に2億人以上いるアクティブユーザーを、間違った情報、ばかげた虚偽の沼地にはめた」と言っています。Nieman LabのJoshua Benton氏も、「(Facebookは)素晴らしいが...(中略)市民の情報にとっては弱点となってしまった」と言います。

一番厳しく糾弾しているのはNew York MagazineのMax Read氏で、「ドナルド・トランプはFacebookのせいで勝利した」と題した記事でこう書いています。

トランプは、最近まで共和党の歴代大統領候補すら誰も支持を表明しないほど、政治とは縁遠い人物だった。その彼が政治システムの最高位に就任できてしまった条件は、意外なものかもしれない。その条件とは、Facebookである。(中略)Facebookがトランプに勝利をもたらした方法は、一番わかりやすいところでは、デマや作り話の問題に対処する能力(またはそれをする意志)がないことだ。(太字は訳者)

Read氏は、Snopesに掲載された「ロシアがCIAに質問:なぜヒラリー・クリントンは1億3700万ドル分の違法兵器を買ったのか?」とか、「WikiLeaks:クリントンが2億ドルのモルジブの豪邸を購入」といった捏造記事を取り上げ、Facebookの平板化効果、つまりあらゆるコンテンツをだいたい同レベルに見せてしまうことについて書いています。

普通の人がFacebookで何らかの記事を見るとき、それがマケドニアのティーンエージャーが1週間前に作ったでっち上げサイトなのか、New York Timesなのかの見分けがつきません。ひいては事実とフィクションの見分けもつきにくくなっているんです。「これらの多くの記事は虚偽、または『パロディ』だった」とRead氏。「だがその外見やニュースフィードでの配置は、虚偽を伝えないことにコミットしているメディアと、まったく変わらなかったのだ。」

こうした批判を総合すると、Facebookがもし親トランプ/反ヒラリー的デマに対し強力な対策を打っていれば、ヒラリー大統領誕生の可能性が高まっていたのではないか、ということになります。

Facebookはこの選挙で同社の役割が批判されることを、予期していたはずです。今年3月には同社内のザッカーバーグCEOへのQ&Aで、こんな質問が候補になっていました。「2017年にトランプ大統領が誕生するのを防ぐために、Facebookにはどんな責任があるでしょうか?」そしてWall Street Journalによれば、今年10月、一部の従業員がトランプによる「イスラム教徒入国禁止」を呼びかけるFacebookのポストを削除しようと主張し、却下されています。社内では責任を十分自覚していた風なのに、デマの拡散防止策がないままだったのはどうしてでしょうか?

その理由のひとつはもちろん、デマかどうかをアルゴリズムで判断するのが難しいからです。言葉には多義性があるので、デマ記事を見つけるためには人手がたくさんかかります。それに、「虚偽」とか「ニセ」とかいう言葉が意味するものも、必ずしも一貫していないんです。

たとえばヒラリーが、国務長官時代に個人用メールサーバーを仕事で使っていたことが問題になりました。この件はNew York Timesがスクープし、事件の詳細なタイムラインヒラリーの時系列での反応をまとめていきました。でもVoxのエグゼクティブ・エディター、Matt Yglesias氏に言わせれば、「実際は、(中略)メールサーバースキャンダルは騒がれすぎであり、これまでもずっとそうだった」となります。

でも、ヒラリーが個人サーバーを使ったことが「騒がれすぎ」かどうかは、解釈の問題です。もし「ヒラリーが悪魔崇拝している」みたいな話なら、単なるでたらめというよりは悪意のあるデマだと判断できます。でもFacebookではもう、虚偽も事実も、悪意があるものもないものも、同じように見えてしまっていて、我々はそれを事実上受け入れてしまっています。そして不確実な情報を垂れ流しているのは必ずしもカネ目当てのでたらめなサイトだけではなく、ある程度大手のメディアだって同じことなんです。

たとえば2016年の選挙期間中、数々のプロのジャーナリストが「トランプは大統領にならない」と確信し、それを主張する記事を書いていました。ざっと挙げるだけでも、こんなにあります。

Slate:「ドナルド・トランプは大統領にならない」
Vice:「ドナルド・トランプが絶対に大統領にならない本当の理由」
The Washington Post:「ドナルド・トランプは(ほぼ確実に)絶対大統領には選ばれない。これがその理由だ」
Salon:「ドナルド・トランプは大統領にならない:歴史、調査データ、デモグラフィクスが示す、たったひとつの結果」
U.S. News & World Report:「ドナルド・トランプは絶対に大統領にならない」

…などなどなどです。メインストリームメディアにおけるこの論調は最後の最後まで続きましたが、それがまったく間違っていたわけです。でもこれらの記事がFacebookでシェアされていたときは、誰もそれをでたらめとか虚偽だとか、だから拡散されるべきじゃないとかは言いませんでした。「ドナルド・トランプは絶対に大統領にならない」的な記事の拡散が、今の危機につながるとは誰も思っていませんでした

でも考えてみれば、ヒラリー支持者を投票所に行かせないためには(つまりトランプを大統領にするには)、「ドナルド・トランプは絶対大統領にならない」と繰り返すことほど有効な方法はありません。だってヒラリー支持者が信頼できる情報源でそれを見ていたら、「わざわざ投票しなくてもいいや」と思っていたはずです。

ということは、有権者にももちろん責任があるんですが、Facebookだって無実というわけでもありません。でたらめ記事がニュースフィードでトレンディングしていたことが示すように、彼らの放置プレイのおかげで嘘が広がってしまったのは事実です。彼らは何百ものメディア企業を、Facebookに囲い込んでしまっています。

ちなみにUSA Todayが伝えているように、FacebookのザッカーバーグCEOは、同社役員であるピーター・ティールがドナルド・トランプの強力な支持者であること、彼に多額の献金をしたことを擁護しています。このことは会社としても公式に認めています。

こうした判断の根っこにあるのは、Facebookが自らをメディア企業と認めるのを拒否し続けていることです。でもその姿勢はもはや不適切です。Facebookがメディア企業でなくて何なのでしょうか? 彼らはユーザーがどんな記事を見るかを判断し、そのプラットフォームを使うサードパーティーのメディアに対し厳しいガイドラインを設定しているんです。

Facebookにおけるニセ情報の拡散は、政治システムに対する脅威となります。もしジャーナリストがFacebookにおける情報の正確さの基準を案ずるなら、まずFacebookが自社について語る記事を書くべきです。どんなウソもデタラメも、「Facebookはメディア企業ではない、だから責任もない」という彼らの思い込みに比べたら大した問題じゃないからです。

Facebookの欺瞞を暴くのは、ジャーナリストの仕事です。メディア業界がこれまで間違いやごまかしに満ちていたことから考えると、Facebookの実態をありのままに書くことだって難しいとは思います。でもそうすることで、有権者が本当に読みたいものが書けるようになるはずです。それはまた、有権者が心の奥底に抱いている希望や不安を真に描くことにもつながります。そうすればFacebookに頼らなくたって、多くの人に読んでもらえるのではないでしょうか。

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以上、Trotter氏でした。Facebookのデマ記事以外にもいろんなことがトランプ大統領につながっていたと思いますが、たしかにFacebookの影響力は絶大です。それに大統領選関係なく、ウソがウソとわからないまま伝わってしまって、訂正もされない現状はまずいですよね。それこそ、人工知能でどうにか自動判別できないものなんでしょうか?

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image by dennizn / Shutterstock.com
source: New York Times(1, 2, 3), Slate, Atlantic - Twitter, Deadspin, Nieman Lab, New York Magazine(1, 2), Buzzfeed, Vox, USA Today, Fortune

J.K. Trotter - Gizmodo US[原文
(福田ミホ)