IoTシューズ「Orphe」を見て小室哲哉さんが語った、欲しくなるテクノロジーの"広げ方"【TK Future Lab】

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ウェアラブルデバイス」と言われて何を思い浮かべますか? 大抵はヘッドセットやウォッチ、アクティビティトラッカーだったりしませんか。日本人の開発者たちが今年正式発表したウェアラブルは、そんな認識に一石を投じるものでした。

それはフットウェア。モーションセンサーとコントロール可能なLEDを内蔵したスマートフットウェア「Orphe」です。”光るデジタルスニーカー”と言えるこの靴は、ソール部分に搭載した約100個のフルカラーLEDと、足の動きを感知する9軸センサー、Bluetoothモジュールが埋め込まれ、iOSやAndroidアプリでダンスやパフォーマンスを創作できる、これはまさにクリエイティブ向けのウェアラブルと言えそうです。

こちらはOrpheのムービー。

数あるウェアラブルの中でも、特にOrpheは「靴とテクノロジー」に特化して靴の在り方そものもを見直そうという大きな狙いがあるそうです。日本国内での利用はもちろん海外でも利用できるよう、SDKを無償で公開中。開発者がスマホアプリと連携してさまざまなパターンや組み合わせでクリエイターの表現の幅を広げることを目指しているスマートフットウェアで、すでに国内では金沢21世紀美術館での特別インスタレーションや、ファッションブランドmastermind JAPANやNONA9ONとのコラボレーションモデルの開発などアートやファッション文脈でも取り上げられています。

今回、ギズモード・ジャパン編集部ではこの「Orphe」を音楽家とつなぎ合わせてみました。ギズモード・ジャパンと音楽雑誌「ローリングストーン日本版」による共同企画として始まった、日本を代表する音楽プロデューサーの小室哲哉さんと先進テクノロジーの最前線を探る連載シリーズ【TK Future Lab】。その第二弾として、「Orphe」を小室さんがハンズオン

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エンターテインメント色の強いこのIoTスニーカーに対して、どんなアイデアや考えが出てくるのでしょうか?

世の中に広がるほうが大事

金沢21世紀美術館 no new folk studio "Orphe" Teaser from no new folk studio on Vimeo.

「第一印象はいかがですか?」との質問にはいきなり「エンターテインメントだけじゃないかも」と俯瞰的な話でOrpheの可能性について語ります。

「エンターテインメントだけじゃなく、ガイダンスや体調管理の領域でも可能性はありそうですね。例えば、F1レーサーのシューズとして、モーションセンサーで車内の様子や、どのくらい熱を持っているかが分かったりするとか。もしくは、登山家やバックパッカーに履かせて、登山やウォーキング動きをGoogleのストリートビューみたいに記録してデータをマッピングして地図を作ったりアートにしたり」(小室哲哉(以下TK))

利用シーンを広く提案していくことは、ウェアラブルが専門化しすぎずより多くの人が楽しんだり問題解決の道が開けそうです。

「百人が見たほうが、百通りの使い方が生まれるかもしれないと思います。プロダクトのプレゼンテーションが行き過ぎてしまうと、型に嵌って狭くなってしまう気がします。僕ならアディダスとかナイキとか大手ブランドと組みたいですね。世に広がってくれるほうが大事ですね。全世界の話題になれたら大きいと思います。『これができる』を広く伝えてあげることからスタンダードになっていって、世の中の期待と共にバージョンが上がっていくのがいいんじゃないでしょうか?」(TK)

「大手メーカーはあらゆる用途を知っていると思うんですよ」と語る小室さん。実用的な用途と、クリエイティブな世界での利用の二軸から、リアルの世界でどう一般化させていくという視点は、ウェアラブルの新しい可能性かもしれませんね。

イケてることと、広がることは違う

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Orpheを初めて見て即興的にウェアラブルの可能性を感じた小室さんは、どう社会に対して「広がり」の波を作れるかに対する問いかけがヒントになると言います。

「すごく広がるものって『汎用性』や『多様性』がありいろいろな領域で使えると思って、それは音楽も一緒なんです。どんなセットやシチュエーションでもハマる曲というのがあって、それってパーソナルリーチが可能な作品だったりするんです」(TK)

話はApple WatchのTVCMの話に広がり、表現内容の多面性に触れます。

「当たり前なんですけど、イケてることと、広がることって違うんですよ。『Apple Watch』のCMの作り方を見れば、全ていつも多面性や多様性がありますよね。マーケットのゾーンを広く考えて、広がり方のサンプルを見せてくれるじゃないですか。たった15秒の中で。このOrpheでもし15秒のCMを作るなら、アスリートやバックパッカーを見せてもよくて、その中にダンサーもいて。あとは、人の体調を見えるようにしてあげるとか。何も喋らない人でも周りに体調を知らせたりすることが出来たりするといいですね。音が無くても光で伝えてあげられたりするほうが良い時があるかもしれないですよね」(TK)

よりパーソナルなウェアラブルが現れると、人間の未来の世界はどうなってしまうだろうか。小室さんはどう考えているのでしょうか?

「AI連携を持ってるスニーカーとか面白いじゃないですか。いろいろ可能性はあると思いますけれど」(TK)

ビョークのVRは「どこに連れて行かれるの?」な感じ

テクノロジーがアートやエンターテインメントの世界に急接近している現代。その中で、人とテクノロジーを結びつける意味合いも強く鳴っているのが、ウェアラブルだとしたら、今求められる人が身に付けるテクノロジーの在り方とはどんなものなのだろうか?

「スマホしかりだけど、人って楽な方に行くので、例えばVRのヘッドマウントディスプレイを被るという行為は、どうにかならないかなと少し思います。まずはワイヤレスになってほしいです。次にもっと軽量になっていけばもっと洗練されてくると思います。それからオシャレに見えるかどうか。例えばBeatsのプロダクトみたいに。格好いいかもしれないけれど、それは一部の人だけかもしれないし、今はオシャレと思う人は少ないですよね。だったらBeatsと何が違うの?ということを誰かが考えなければいけないんだよね。装着するという時においては」(TK)

VRの視点では小室さんはビョークのVRの例を出して、VRの広がりの可能性について語っています。

「ビョークのVRも見ましたよ。プロモーションがどうなのかは別ですけれど、ビョークの考えていることに入っちゃったなという錯覚には一瞬なりましたね。完全にビョークの脳内を見てるみたいな感覚で、アーティストの表現という意味での広がりにはなっているかもしれませんね。彼女の音楽や歌詞とはまた違って、『どこに連れて行かれるの?』みたいに果てしなさを感じさせられました」(TK)

一方で、テクノロジーから社会への「広がり」を作ることについて、リアルの人との対話が視点を拡げてくれると小室さんはご自身の話を例にこう語ります。

「今時の子達の話を聴くと面白いね。『イヤホンうざい』とか『まず使わない』とか(笑)。じゃあ電車の中で音楽はどうしてるのか?というと『別のコトしてる』と言うんです(笑)。ヘッドフォンだったらもっとありえないはず。『どうしてそんな高いの買うんですか?』みたいな話になる。それも一つの意見だけど、面白いですよね」(TK)

最後に小室さんに、今後さらにテクノロジーの進化は人間にどんな影響を与えると思いますか?と聞いてみたところ、こんな答えが返ってきました。

「システムやテクノロジーは凄く進化したものを使っていても、見る人はそこまでモーションセンサーや制御機能があることにあまり関心を持たないと思うんです。プロダクトの現象だけで、人を驚かせたり、違う現実だったり、バーチャル体験まで行かせるのって、製品がある程度完成されていると、驚きの要素が減って、人はあんまり深く考えなくなりますよね。集結しちゃうというか、思考停止というか。概念の範疇で止まる気がするんですよ。そこから突き破って考えてみるってことが大切だと思います」(TK)

* * *

小室哲哉 (TETSUYA KOMURO)

1958年、東京都生まれ。音楽プロデューサー、作詞家、作曲家、編曲家。キーボーディスト、シンセサイザープログラマー、ミキシングエンジニア、DJ。83年にTM NETWORKを結成以降、自身の活動と平行して数々のアーティストをプロデュースし、多くのミリオンセラーを世に送り出してきた。2014年には、30周年を迎えたTM NETWORKのライヴツアーを決行。翌2015年にはglobeデビュー20周年として、セルフリプロダクトアルバム『Remode 1』をリリース。2016年8月に続編『Remode 2』と9月にはライヴブルーレイ BOXを発売

小室哲哉PIANO BIOGRAPHY feat.坂本美雨 2016
12月19日 青森 ホテル青森
12月21日 長野 THE SAIHOKUKAN HOTEL
12月24日 名古屋 キャッスルプラザ
12月25日 大阪 太閤園


スマート・フットウェア オルフェ(Smart Footwear Orphe)

株式会社no new folk studioによるプロダクト。約100個のフルカラーLEDがソールに内蔵され、iOS/Android対応のアプリケーションでSCENE[光と音のデザイン]を自由にカスタマイズ。足の動きに応じた光や音の変化を楽しめる。さらに9軸のモーションセンサーで動きのデータをリアルタイムに取得し、音楽制作ソフトや他のアプリケーションと連携して新たなパフォーマンスを制作することが可能。SDK[ソフトウェア開発キット]※公開準備中 を使って誰でもオリジナルのアプリケーションを開発し、新たな使用方法を創造することもできる。現在は主要オンライン通販サイトほか実店舗数店にて販売、取扱店舗は順次拡大中。

進化するエンターテインメントとテクノロジーの世界:
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Collaboration: ローリングストーン日本版
source: 小室哲哉 公式サイトTwitterFacebook)、Orphe

(Yohei Kogami)