ソイレントの製品で具合が悪くなるのは何故なのか? 現在まで判明していること

ソイレントの製品で具合が悪くなるのは何故なのか? 現在まで判明していること

完全な解決は難しそう…

10月27日、栄養食スタートアップのソイレントは、多数のユーザーが体調を崩したという報告を受けてパウダー式の「Soylent 1.6」の販売を停止しました。ソイレント社はこの2週間前に、最新製品の「Food Bar」を食べたことで吐き気、嘔吐、下痢などの症状と共に、中には緊急救命室に行った人まで出たことが明らかになって販売を停止したばかりでした。

ソイレント社は10月27日の夕方にブログを更新し、Food Barの調査中「Powder 1.6を飲んだ方のうち少数(全体の0.1%以下)がバーを食べた人と同じ胃腸関係の症状を訴えていたことが判明した」と発表しました。具体的にどの原料が問題を起こしていたのかは明言しませんでしたが、バーとパウダー1.6のみに使われている原料は限られているため、原因となりうる原料を絞り込んだそうです。

原因となった材料は果たしてなんなのか

オープンソース」であるというのがソイレントのマーケティング戦略なので(一応テック企業ですからね)、1.51.6の原料は全てウェブサイトで確認できます。同社によれば1.5では似たような苦情は無かったとのことなので、1.6で変更された、あるいは追加された何かが原因であるという可能性が高くなりました。

しかし1.5と1.6の違いは非常に大きく、ウェブで公開された情報だけでの特定は不可能です。とはいえ、最も大きな違いはが果たす役目です。ソイレント社の設立当初から、創立者のRob Rhinehart氏は栄養源としての効率が非常に良い藻を使ってソイレントを作ろうとしていました。2014年、彼はThe New Yorkerに対し究極のゴールは「ソイレントを作り出す『スーパーオーガニズム』をデザインすることです。一日中ソイレントを生み出し続ける藻の品種ができれば、工場は必要ありませんからね」と発言しました。

追加で使用された藻類粉が原因か?

1.5からと1.6への変更点を見ると、ソイレント社が藻の使用に関してかなり大きく進歩していることが伺えます。1.5はほんの2.2グラム藻類DHAパウダーが使われているだけで、原料の大部分はマルトデキストリンで粉末化された高オレイン酸ひまわり油とカノーラ油でした。しかし1.6では176グラムの藻類パウダーとカノーラ油パウダーが使われています。

しかし、パウダーの原料の違いだけでは、バーを食べて具合が悪くなることの説明ができません。パウダーはオープンソースですが、バーはよりミステリアスです。ウェブサイトに成分表はあり、藻類粉は五番目の原料としてリストに入っています。

米Gizmodoでは、Redditのソイレント掲示板やソイレント社自身のフォーラムにて、バーを食べて激しく体調を崩したという報告が多数あったために最初の記事を発表しました。当初は「大豆やスクラロースにアレルギーや不耐性をもっている一部の人」からの苦情にすぎないとしていたソイレント社ですが、その後も止まない苦情に「細心の注意を払うため、予防手段として」バーの販売を中止し、返金を受け付け始めました。

特定のロットの製造管理に問題が?

アレルギー反応や原料同士の相性の他にも、ソイレントパウダーやバーのように徹底した加工が必要な食品は、製造過程で汚染が起きる危険がつきものです。食品科学者であり、生物システム工学の博士号をもつEric Newguard氏は、Raw All Natural Pet Foodのオペレーションアナリストでもあります。彼は米Gizmodoに対し、「製品が接触(運搬や加工)する度、細菌汚染が起こる危険性があります」と説明しました。パウダーがどこで製造されているのかはハッキリしませんが、バーに関してはオレゴン州マクミンビルのBetty Lou'sで製造されているので、汚染がそこで発生したのかもしれません。以前Gizmodoでは、食べて体調を崩したバーは賞味期限がどれも2017年7月14日で、前後の識別番号が共通していると報じました。

BuzzFeedは、Betty Lou'sが衛生管理査察を2014年以降受けていないと報じましたが、オレゴン州農林課はGizmodoに対し、Betty Lou'sが今年の始めに査察を受けたと認めました。匿名の情報提供者からGizmodoに送られてきたメールはBetty Lou'sがカスタマーやクライアントに宛てて送ったもので、「体調不良の原因は当工場ではない」とし、現場監査では100パーセントのコンプライアンスを記録し、その結果は11月8日に公開されると明言しました。しかしBetty Lou'sは、過去数週間に関して米Gizmodoの再三のコメント要求に返答していません。

そもそも代替食にはならない

また、ソイレント社は自社の製品を3食の替わりとなるミール・リプレイスメントとしてマーケティングしていますが、政府はこれらをダイエットサプリメントと分類しているので、食品とは規制のされ方が異なります。FDA(アメリカ食品医薬品局)のウェブサイトによれば、彼らは「ダイエットサプリメントの安全性や効果を販売前に調査する権限が無い」と明記しています。ソイレント社は問題を調査中で、判明した事実をFDAと共有するとしており、米GizmodoではFDAに対し、ソイレントによる体調不良を調査しているのかどうかを問い合わせている最中です。

ソイレント社が2013年に最初のパウダーを発売して以降、代替食であるという主張は常に議論の的でした。また、健康被害の原因であると追求されるのもこれが初めてではありません。ソイレントの登場で食べ物を全て捨て去ることが出来る、というアグレッシブなキャンペーンによる初期の成功にも関わらず、専門家はまだ納得していません。栄養と食事のアカデミーのスポークスパーソンであるJoy Dubost氏は、2013年にTimesに対しソイレント社の自社製品に関する主張の多くは「科学的根拠がない」と断じました。

「(Rhinehart氏の)製品の成分では栄養として不十分です。勝手な決めつけが多く、特定の人口はおろか個人ですら生かし続けることはできないでしょう」と発言しました。

全体的な品質管理のずさんさも

MotherboardのBrian Merchantが2013年に工場を見学した際(それ以降生産地は移転しましたが)、工場内にはネズミが複数見受けられ、いくつかのパケットにはカビが生えていることも発見しました。Redditのユーザー達が少し探しただけでも、何十人もの人があらゆるソイレント製品にカビを発見しました。中でも特に多かった2.0は、未だにソイレント社が販売し続けている製品です。

理想だけでは完全栄養食品は作れない

今までの一連の出来事から見えてくるのは、Rheinhart氏とソイレント社の食品に対する見識の甘さのように見えます。Dubost氏の言う「決めつけ」とは、世界中の人類にとって、必要な栄養素が誰でも同じであるという決めつけです。地域によって、あるいは人によって必要な栄養素やバランスは違います。ソイレントと同様に食事の代わりとなるパウダーは貧困地域の為に既に複数開発されており、それらは地域の人のニーズを調べ、物によっては10年以上の歳月をかけて開発されています。そういった食や栄養に対する知識や見識を持たず、己の価値観と、シリコンバレー特有の先走った理想のみで作られたからこそ、こういった事態を引き起こしてしまうのかもしれません。

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image: Sam Woolley
source: soylent, Reddit, THE NEW YORKER, BuzzFeed, FDA, Times, Motherboard

Eve Peyser - Gizmodo US[原文
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