テクノロジーがアナログを取り戻す。2016年に発売された注目楽器を振り返る 1

今年も色んな音ありけり。

テクノロジーが進歩すれば、医療、ゲーム、スポーツ、アイドル、あらゆるものが前進します。もちろん音楽とて例外ではなく、今年も多くのメーカーからユニークな楽器たちが発売され、そのサウンドや体験にテクノロジーの恩恵を強く感じた次第です。

というわけで、2016年に発売された楽器のなかで特に印象に残ったものなどを振り返ってみるとしましょう。やはり今年もキーワードとなるのはアナログかなと思いますが、果たして。

YAMAHA MONTAGE

とか言っていきなりデジタルシンセ奴〜。MOTIFの後継となるMONTAGEは、ヤマハがおくるワークステーションのフラッグシップモデル。DX7を代表とするFM音源とAWM2(PCM)音源を突き詰めた、まさに史上最強の名に相応しいシンセです。

機能的にも素晴らしいモノがいーっぱいあるんですが、その開発の背景には「DAWでなんでもできる時代にハードウェアシンセの利点とは何か?」に向き合った結果生まれた、ツマミやスライダーの魅力、音の変化なるものがあります。価格もフラッグシップ級ですが、今年を代表するデジタルシンセとして間違いないかと。

Minimoog Model D

今年のアナログシンセ代表はコレでしょう。Moog社の伝説的シンセサイザーMinimoog Model Dの復刻版です。当初はMoogfestの会場限定販売でしたが現在は受注生産を受け付けています。Moogサイト内にて国内ディーラーの検索が可能です。

2015年にはアナログシンセの名機であるProphetおよびOberheimの新作が登場しましたし、昨今のビンテージシンセの活躍には何か時代の潮流めいたものを感じざるを得ません。デジタライズが進めばどこかでそれをゼロサムにするためのアナログ隆盛が起きる、そんな風に世界はできていると言われても納得できる。できるのだ。

VP-03

TR-09、TB-03とともに登場したRoland Boutiqueシリーズ第2弾。1980年のボコーダーシンセVP-330をエミュレートしており、この小さな筐体にグースネック・マイクをブッ挿せるのが何よりのロマンです。入力した声をシーケンスできるのもナウい機能。

Boutiqueシリーズは揃えたくなる、コレクション欲求が高いというのが良いですね。もちろんサウンドや操作性にも手抜かりはないんですが、それと同じくらい筐体のデザインにもこだわっています。音源としてだけでなく所有としての意味も見出せるのは、なんとも趣味的です。

volca kick

初めて名前を見たときはいやいやさすがに嘘じゃんと思ったけどマジだった、そんな衝撃的volcaシリーズの低域担当。MS-20のフィルター発振を利用しており、設計的にもサウンド的にもかなり傾いた一機だと思います。

キックと名がついてますが音程を調整してやればベースラインやシーケンサーのようにもなり、他のvoclaシリーズにはないグルーヴィーなフレーズメイクが可能。もちろんキック専用機としてみれば一般的なリズムマシンでは調整がむずかしいところまで追いつめることもできるので、そういう意味でも非常にニッチなマシンです。

Softube Modular

スウェーデンのメーカーSoftubeが開発した、モジュラー・シンセサイザー・ソフトウェア音源。本物のユーロラックモジュールをモデリングしており、DoepferやIntellijel Designsといった有名モジュールブランドのサウンドが忠実に再現されています。

そして、実機のモジュールとも連携できるというこの点が、他モジュラーシンセエミュレートソフトと一線を画すところ。Modular自体の価格も9,900円と、実機モジュールとは比べ物にならないほどリーズナブルなので、モジュラー沼への第一歩、もとい取っ掛かりとして非常に良いのではないでしょうか。

bitRanger

あらゆるものがポータブル化されゆく昨今、ひとつわかったことがあります。スピーカー内蔵は正義、と。モジュラーシンセのようにパッチングもできて、なおかつスピーカーと電池内蔵でどこでも音が鳴らせるbitRangerは、すごく現代的でシンセ・アラモードな逸品ではないかと思うのです。

ピっと付けてすぐ鳴らせるという即時性は、ハードウェア楽器に求める要素の一つ。volcaシリーズなんてまさしくそこですし、かといってエディット性を犠牲にしては意味がありません。ディープなことをライトにしたい。そのような欲求に、わりと応えてくれるマシンではないかなと。なんなら同期させてエフェクト通せばバリバリかと!


…以上、2016年に登場したフェイバリットな楽器を取り上げてみました。ビンテージマシンの復刻などは、そもそも当時の部品が無かったりするため100%の物理的再現が不可能なことも珍しくありません。そこをフォローし、より良いかたちにできるようになったのは、やはりテクノロジーがあったから。アナログ回帰の流れはテクノロジーがあるからこそだともいえるし、テクノロジーがある到達点まできたからこそ回帰が可能になったともいえます。

かようなアナログ回帰が2017年に入ってもっと加速するかもしれないし(Polysix復刻こないかな)、一方でVR内ミュージックスタジオのような新サウンド体験がもっと盛り上がるかもしれない。間をとって、体験はアナログでサウンドは未来的、またはその逆みたいなハイブリッドもくるかもしれない。

来年はどのような楽器が登場するのか、期待に胸と財布が膨らみますが、来年1月19日からは世界最大規模の楽器ショーNAMM2017がはじまります。年間予算案を立てるのはそれからと参りましょう。

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source: ヤマハ株式会社, Moog Music Inc, Roland, KORG, Softube, Bastl instruments, YouTube 1, 2, 3, 4, 5, 6

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