男女平等の国フィンランドでの『ローグ・ワン』の感想は?

男女平等の国フィンランドでの『ローグ・ワン』の感想は? 1

教育、福祉、男女平等で知られるフィンランドでは『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』はどのように見られているのでしょうか? 周りのフィンランド人たちに聞いてみました。

クリスマスシーズン真っ盛りで街中には綺羅びやかな電飾…今年も日本より一足お先、12月14日より一般上映された『ローグ・ワン』を見てきました。でも今年の公開初日は、昨年の『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』のときの盛り上がりの無さに輪をかけたような盛り上がりの無さ。まちなかのポスターに至っては上映数日前にようやく張り出される状況。流石にクリスマスに向けておもちゃなら沢山あるだろうと、昨年『フォースの覚醒』の関連トイが充実していた電気屋さんに向かってみるも、昨年からの売れ残りの『フォースの覚醒』トイの他には『ローグ・ワン』のベーシック・シリーズとレゴしか置いてありませんでした。

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公開初日の水曜日。昨年と同じく複数スクリーンのある映画館では上映間隔10分おきのヘビーローテーションをしていましたが、昼間の上映でも席は結構埋まっていたよう。しかし昨年のようにコスプレをしている人たちは私が行ったときには全く見受けられず、唯一目にしたのはこちらの反乱軍のパイロット。

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公開前日にはフィンランドの映画館Finnkinoがこんなツイートをしていただけにがっくり。

明日のプレミア上映ではジェダイやウーキーのコスプレしてもいいけど顔は隠さないで。

しかし、昨年もそうだったように、フィンランドでは公開されてから盛り上がってくるのかもしれません。今のところ私の周りのフィンランド人達からも「とても良かった」、「素晴らしい映画」、「『フォースの覚醒』よりもイイ」などの声が聞かれますし、フィンランド最大の新聞社Helsingin Sanomat/Nyt.fiも4/5星レビューを出しています。その一方で「『ローグ・ワン』なんて興味ないね」なんてネガティブな発言をしている人たちはといえば、実際にまだ見ていない人たちが多いよう。そして「『ローグ・ワン』に興味はなかったけど、見た人からの評判がいいから見に行こうと思う」などの声も。前盛り上がりに欠けるのは、やっぱり「悲観主義者は失望しない」「期待しなければがっかりしない」なフィンランドのネガティブさが根底にあるように感じました。

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そんなフィンランドの『ローグ・ワン』鑑賞者から感想を聞いてみました。一緒に映画を見に行ったフィンランドの言語学者からはこんな声が。

エンターテイメントフランチャイズである『スター・ウォーズ』の世界で、戦争の複雑さや悲しさを表現したことは、偉大である。これまでの『スター・ウォーズ』作品と違い、あからさまなセリフの代わりに「沈黙のコミュニケーション」が多く見られ、人間がよりリアルに描かれていた。アメリカ文化的な言葉に縛られたコミュニケーションではない、沈黙がモノを言う作品だった。

コミュニケーションの1つの形でしかない「言葉」。実のない、ただのおしゃべりのためのおしゃべり、いわゆる「スモールトーク」すらあまり好まれていないフィンランドでは、特にアメリカ映画などは言葉による説明が多すぎると感じられているよう。「言葉」以上に表情、行動、沈黙がものを言うフィンランドならではの目のつけどころでした。

世界経済フォーラムの「世界男女格レポート」で今年も男女格差が世界で2番目位に小さいとされるフィンランド。それだけに他の文化で描かれる女性像に対して厳しい意見も聞かれますが、『ローグ・ワン』を見に行ったフィンランドの女性はこんな感想を話してくれました。

これは『フォースの覚醒』と同じく強い女性が主人公の映画。『フォースの覚醒』では、今までのハリウッド映画やこれまでの『スター・ウォーズ』に対してわざと性的役割逆転を強調して皮肉ったシーンが多かった。それが悪いわけではないけれども、映画の主人公が女性であることそのものは本来は目立つべきではない。『ローグ・ワン』では『フォースの覚醒』のように「あなたは女性だから助けよう」というシーンがなく、より自然でよかった。

それと、『フォースの覚醒』ではフィンはレイから性的ではないにせよ好意を抱かれているのが見て取れ、唇にではないもののキスシーンも存在する()。『ローグ・ワン』でのジンはそういった見方はされていないし、画面上ではロマンスは存在していない。映画でよく描かれる「男と女がいたら恋愛関係になる」という安直さはなく、父と娘という関係を除けば、ジンの役自体が男女性別を問わない。これは進歩だ。

「フィンランドでは親しい友達の額や頬にキスしたりはしない。するとしたら親が子に、もしくは恋愛関係上でのみ」だとのこと。

今でこそ「男女平等の国」と言われるフィンランドですが、昔からそうだったわけではなく、男女が共に女性の平等を勝ち取るために努力してきた結果得たもの。最近のハリウッド映画で女性の描かれ方が変わってきていること、女性のヒーローが増えてきていること(その衣装などには批判が出ますが)を評価している人も増えてきたようです。

The Mary SueのJessica Lachenal記者は、『フォースの覚醒』が公開されたときにアジア系の女性Xウィングパイロットを見て、「自分が代表されていると感じれるのはとてもいい気分」であったと述べていました。近年フィンランドでは様々な理由で移民してきた親を持つ2世、3世のフィンランド人も増えてきています。人種や背景文化の多様性が豊かになる中で、「フィンランド人」の概念が、従来の「フィンランド人=白人」という狭い枠から広がってきています。未だにハリウッド映画の世界ではジャンルによって「白人男性」が主要な役を占める中、『ローグ・ワン』の性別、人種、文化、そして言葉の訛りの多様なメインキャストたちは、誰しもが自分を代表するキャラクターが描かれているという点で評価する人も見られました。

『ローグ・ワン』は、初めてのジェダイが出てこない作品でもあります。その作中でのフォースの描かれ方にこんな注目をした方も居ました。

この作品ではこれまでと違い、フォースのより宗教的な面が描かれていた。他の『スター・ウォーズ』作品では、フォースが使える人がメインであったが、ジェダイなどではない主人公たちをメインに据えた本作では、フォース感受性のない人々にとってはこれはただの宗教のようなものであることが明らかになった。しばらく前に「田舎者のルークはカルト宗教家のオビ=ワンに勧誘されて変な宗教にのめり込み、テロリスト集団に参加した」というミームが流行ったけど、その見方があながち当てずっぽうではなく見えてくる(笑)。だけども一般の人にとってただの宗教でしかないフォースの側面を見せたこの作品により、他の作品に登場するジェダイたちの特別さが際立つことにもなっている。

つまり、一般の宗教と同じく、信じている人と信じていない人がおり、自分のミディ=クロリアン値が高いか、フォース使用者による「奇跡」を目の当たりにでもしない限り、非信者にとってフォースは馬鹿げた信仰にすぎないということがより明確になったということ。『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』でフォースを「胡散臭い宗教」とバカにしていたハンは、その冒険の中でフォースの力を目の当たりにしたこともあってか、後に『フォースの覚醒』では「フォース、ジェダイ、すべて本当さ」と言っています。『ローグ・ワン』の中ではベイズ・マルバスが同じような役回りでした。(特にこの件と直接の関係はありませんし、きちんと紹介するスペースも無いですが、宗教の面ではフィンランドの国教はルーテル教。しかしその信者の数は、様々な理由により年々減ってきています。)

作品としてはより人間ドラマが濃密になり、戦争映画としての側面が色濃くなった『ローグ・ワン』。『スター・ウォーズ』シリーズは常に政治的であるわけですが、これまでの善と悪が白黒はっきりしていた『スター・ウォーズ』シリーズとは違い、帝国の残酷さだけでなく、反乱軍や抵抗勢力の暗い面をも描いていることもあってか、中には「(自分は見たが)子どもたちには見せないかも」と言う人も見られました。

また、奇しくも『ローグ・ワン』公開直前には、内戦の続くシリアの都市アレッポで、アサド政権とロシア軍による攻撃を受けて「これが最後のメッセージになるかも」という内容を市民がツイートや動画で公開したものが、フィンランドのSNSでも多くシェアされていました。デス・スターによる容赦ない破壊が描かれた本作とアレッポの現状が重なったこともあり、鑑賞後に思い出し、なおさら重い気分になったと語ってくれた人も居ました。

以上、フィンランド人からの『ローグ・ワン』の感想をお伝えしました。『エピソード8』がくる来年はもっと盛り上がるといいなー。

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source: Finnkino, Helsingin Sanomat/Nyt.fi, Global Gender Gap Report 2016, The Mary Sue

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