『スター・ウォーズ』はいつの時代のどの作品も政治的?

『スター・ウォーズ』はいつの時代のどの作品も政治的? 1

言われてみれば……。

12月16日(金)に公開されるスターウォーズのスピンオフ映画『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』。本作のギャレス・エドワーズ監督へのインタビューや、一足先に本作を鑑賞したギズ編集部によるレビューを見ると、作品へのこだわりや完成度に期待が膨らみます。

そんな中、米Gizmodo io9のKatharine Trendacosta氏が『スター・ウォーズ』シリーズを通して、そして最新作『ローグ・ワン』にも見られる政治性について語っています。

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『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』のワールド・プレミアで、DisneyのCEO、ボブ・アイガーは「今作はどんな点においても政治的な映画ではありません。この映画に政治的な声明は全く含まれていないのです」と語りました。でもそんな訳ないでしょう。『スター・ウォーズ』は常に本質的に政治的だったし、今でもそうなんです。

どの『スター・ウォーズ』映画を見ても、このフランチャイズは何が善で何が悪かをはっきりと定めるほのめかし(何気ないものからあからさまなものまで)に満ちています。帝国は『スター・ウォーズ』の中では悪、それは明確です。失敗を犯した部下を殺すことも、惑星まるごと破壊する宇宙ステーションを建造することもいとわない独裁者が支配している全体主義国家 vs 銀河に正義を取り戻そうと奮闘する反乱組織の人々、という設定はすでに政治的主張です。『ローグ・ワン』が本当は帝国を倒すための反乱軍による死にものぐるいの作戦を描いたもの「ではない」のであれば違うでしょうが、そうでなければ政治的主張は少なからず含まれます。

銀河帝国は最初に登場した時点からすでにファシズムの代役であることは明らかでした。「ストームトルーパー」という名称も、第一次世界大戦時のドイツ軍で、そして当初は国家社会主義ドイツ労働者党(ナチス党)の準軍事組織であり、ナチス・ドイツでも再度登場することになる兵士たち「Sturmabteilung」(Storm Detachment, 突撃隊)から取られています。

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コスチュームデザイナーのジョン・モロは、帝国軍のユニフォームに関するジョージ・ルーカスによる指示は、まさにそれを伝えるためのものであったと語っています。「まず最初に、彼は帝国の人々が効率的で、全体主義で、ファシストに見えるようにしたかった。そして反乱軍たち、良い者たちは、西側の、もしくは米海兵隊みたいなものに」とモロはルーカスによる指示について語っています。「彼は、"この仕事はとても変わったものだよ、なぜなら誰にもコスチュームに気づいてほしくないんだ。馴染みあるように見えないといけないけど、同時にそうあってはいけないんだ"と言っていた」と。

昔の拡張世界小説(レジェンズ)では、ライターたちが映画の中に描かれたあからさまな類似点を取り上げて、それを帝国のイデオロギーを拡張するのに使用しました。それらの小説の中で描かれている帝国は、人間以外の種族を迫害し、奴隷化し、人間以下の存在だと宣言していました。また、かなりミソジニー(女性嫌悪、女性蔑視)の要素もありました。もうそれらは正史の一部ではありませんが、それらのアイデアは少なくとも当時のLucasfilmが認めたものであり、それ以上に論理的に映画で描かれた帝国の延長線上にあったのです。

ルーカスは常に皇帝を政治悪だと思い描いていました。1981年、ルーカスはパルパティーン皇帝のことを「政治家だった。彼の名前はリチャード・ニクソン()さ。彼は議会を転覆させて乗っ取り、帝国の人になったとても悪いやつだ。でも彼はとてもいい奴のふりをしている」と言っています。2005年にプリークエル三部作(エピソード1~3)について話したときにも、ルーカスはニクソンになぞらえ、「ベトナム戦争は本当にあった。あれはニクソンが2期目に出馬しようとしていた時期だった。それで僕は歴史の中で民主主義国がどうやって独裁国家になるのかなと考えたんだ。民主主義は転覆させられるんじゃなくて、手放されるものなんだ」と話しています。

(*)訳注:リチャード・ニクソン、第37代アメリカ大統領。1969年より大統領となったが、ウォーターゲート事件により1974年に辞任。

プリークエルを作るにあたり数ある問いの中でルーカスの考えていたもののひとつは、「どうしたら拍手喝采の中で民主主義が絶対君主制へと転覆するのか? クーデターとともにではなく、拍手喝采の中で。シーザーも、ナポレオンも、ヒトラーもそうだった」と話していました。これがパドメ・アミダラの悪名高き「こうして自由が死ぬのね、拍手喝采に包まれて」というセリフのもととなっているのです。

ここまで、『スター・ウォーズ』の歴史を少しかじった程度ですが、常に政治的であったことは明らかです。『スター・ウォーズ』の世界を舞台に、政治的ではない映画を作ることも可能かもしれません。でも『ローグ・ワン』は違います。

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『ローグ・ワン』の話は、ジェノサイド()への恐怖により人々を支配することだけが目的の宇宙ステーション、デス・スターの計画書を反乱組織の寄せ集め者たちによる部隊が盗むというもの。『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』の前日譚となる作品です。『新たなる希望』のオープニングクロールでは「内乱の時代」、「悪の銀河帝国」、「帝国の邪悪な手先たち」、「盗まれた設計図があれば、仲間を救い、銀河に平和をもたらすことができる」と始まります。巨悪が行なわれているのを目の当たりにし、自分を犠牲にして、厳密に言えば合法な権力に歯向かう決断をした人々が主人公です。

(*)訳注:人種、民族などの集団を虐殺する行為。ナチス・ドイツのユダヤ人虐殺などがこれにあたる。

「(『ローグ・ワン』は)我々がこれまでに作ったどの映画よりも最高級かつ多様性に満ちたキャストで、とても誇りに感じています。そしてこれは政治的な声明ではありませんよ、全くもって」とアイガーはThe Hollywood Reporter矛盾したことを語っています。様々な人種からなるキャストが出ていると言うだけで政治的な声明だとされるべきではありませんが、我々が住んでいるのはそんな世界じゃありません。これは映画製作者たちの意図的な決断によるものです。なぜなら未だにいつもハリウッド映画は白人がほとんどだからです。ヒーローたちを多様性のあるキャストにしたのは政治的な声明であり、これまで常に『スター・ウォーズ』の一部であった政治に完全に沿ったものです。

『ローグ・ワン』には政治的な声明が無いというアイガーのコメントは、『ローグ・ワン』の脚本家クリス・ワイツと、以前の脚本家ゲイリー・ウィッタ()による2つの削除されたツイートに関連しています。アメリカ大統領選挙後の金曜日、ワイツは「帝国が白人主義者(人間)組織であることに留意あれ」とツイートし、ウィッタはそれに「対するは勇敢な女性が率いる多文化グループ」と加えています。この『スター・ウォーズ』に関する完全に客観的な事実は膨れ上がり、トランプ支持者による映画ボイコット、そして今では一般的となったハッシュタグ(#DumpStarWars / #スターウォーズを捨てろ)に繋がったのです。アイガーはこの論争の火消しをしたかったのでしょう。少なくとも彼がこれを「バカげている」と言ったことだけは正しかったです。

(*)訳注:元々『ローグ・ワン』の脚本はゲイリー・ウィッタが執筆していたが、後にクリス・ワイツに引き継がれた形となっている。

しかし政治的な声明が映画に無いからといってバカげているわけではありません。もし『スター・ウォーズ』が政治的なものだと今更気づいたあなたは注意を払っていなかっただけです。すべての『スター・ウォーズ』は悪の権力に対して反乱を起こすというアイデアに基づいたものですから。もちろん反ジェノサイド、反ファシスト、反ミソジニー、そして反人種差別であることは政治的な声明ではなく、当然であるべきです。でもそうでない限り『スター・ウォーズ』は政治的であり続けるでしょう。

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image by Disney/Lucasfilm
source: The Hollywood Reporter, STARWARS 1, 2, History

Katharine Trendacosta - Gizmodo io9[原文
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