今年の発見。2016年のサイエンス総まとめ

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2016年、サイエンスの事件総まとめ

いろいろあったけど、前に進んでる、多分。

2016年はいろいろとありえないことが起きた年でしたが、サイエンスの世界だけでも、歴史に残る出来事がいくつもありました。重力波の直接検知のような感動や、ジカ熱の大流行のような脅威、宇宙移住計画の可能性などなど、以下にまとめていきます。

重力波観測の衝撃

今年2月、LIGO(Laser Interferometer Gravitational Wave Observatory)が重力波の直接検出成功を発表しました。重力波の存在は、我々の世界のあり方の根本に関わるものであり、今まで多くの研究者がその検出に挑んではかなわずにいました。でもLIGOでは、2015年9月に重力波を初観測しただけではなく、同年12月には2度目の観測までしていたんです。

image: R. Hurt, Caltech / JPL

我々が存在し、生きているこの四次元の「時空」というコンセプトは、みんなだいたい直感的に把握しています。でも時空というのは完全に固定された箱ではなく、ブラックホールや中性子星やものすごく巨大なもの同士が衝突したときに発する、原子より小さい波で細かく揺れているんです。そんな時空の波が重力波で、それをLIGOは去年9月に「聞いて」いましたが、今年2月の発表まで、それが本当に重力波なのかどうか検証に検証が重ねられていました。2回の検出に成功したLIGOでは、今後さらなる検出を進めようとしています。宇宙の暗闇をのぞく新たな窓が、重力波という形でついに開かれたんです。

この発見は元はと言えば、アルベルト・アインシュタインの大きな功績のひとつでもあります。彼は1916年、一般相対性理論を構築する中で重力波の存在を考えだしていたんです。証明に100年かかることを考え出しちゃうアインシュタインと、100年かかって証明できるかどうかもわからないのに挑み続けた後世の研究者と、どっちがすごいのかわかりません!

プロキシマb、移住できそうな系外惑星

過去数年間で太陽系外惑星は数千個も見つかっていますが、そのうちいくつかは岩石でできた、地球と同じくらいの大きさの世界です。地球と似た環境の惑星は、いつか地球に住めなくなった場合の移住先候補ですが、系外惑星の中でもひときわ魅力的なのが、今年発見されたプロキシマbです。地球からの距離は、わずか4.2光年しかありません。

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赤色矮星プロキシマ・ケンタウリを周回するプロキシマbのイメージ image: ESO/M. Kornmesser

プロキシマbはヨーロッパ南天天文台が発見した岩石の星で、プロキシマ・ケンタウリから750万kmの距離を公転しています。750万kmというのは、水星と太陽の距離の10分の1ほど、つまり主星からものすごく近いんですが、プロキシマ・ケンタウリは赤色矮星で温度が低いので、液体の海が形成されて生命が存在しうるハビタブルゾーンとしてはちょうどいい頃合いです。

ただプロキシマbはあくまで惑星ってことは暗いので、それ自体を直接観測されたわけじゃなく、ドップラー分光法という手法で間接的に観測されています。でも2018年以降打ち上げ予定のジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡なら、プロキシマbの大気も観測できるかもしれません。地球みたいに大気に覆われてるのか、そうじゃない地獄みたいな星なのか、わかるのが楽しみです!

ジカウイルスの勢い止まらず

1947年にウガンダで発見されたジカウイルスは2015年、ラテンアメリカ全域で蚊に媒介されて急速に広がりました。ジカウイルスは、大人の場合感染してもあまり症状が出ませんでしたが、同時期に小頭症の新生児が急増していました。その後急ピッチの研究によって、ジカウイルスと小頭症の関連性が見えてきたんです。

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image: Song Pin/Shutterstock

今年1月、小頭症の新生児を出産した女性ふたりの胎盤でジカウイルスが見つかったと報告されました。その後さらに、生まれてすぐに亡くなった新生児の脳からもジカウイルスが見つかりました。3月に発表されたペトリ皿上の実験では、ジカウイルスが脳の発達に必要な細胞を直接攻撃していて、そのため脳の成長が阻まれていることが示唆されました。4月には米国疾病予防管理センターが、ジカが小頭症をはじめさまざまな深刻な脳障害の原因となっていることを認めました

このような大量感染は恐ろしいことですが、だからこそ研究が進んだ側面もあると思われます。11月には世界保健機構(WHO)がジカウイルスによる緊急事態を解除しましたが、これによってジカウイルスを理解しようとする流れが止まらないことを祈ります。

人間に遺伝子編集技術CRISPRが使われる

遺伝子編集をより確実に、効率良くできるようにしたツールCRISPRは、中国の研究チームが人間の治療にそれを使ったことで大きな一歩を踏み出しました。

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image: Perception7/Shutterstock

CRISPR実験を受けることになった患者は、進行性の肺がんを患っていました。研究チームは患者の血液から免疫細胞を除去し、がんの拡散に使われうる遺伝子をCRISPRで「ノックアウト」し、代わりに遺伝子編集した細胞を患者に注入しました。編集された細胞ががんを打ち負かすことが期待されましたが、この実験の結果はまだ完全に公開されていません。

でも今回の実験の結果がどうあれ、CRISPRを人間に対して使ったということは、「病気の治療をパーソナライズする」という新たな時代の第一歩になりえます。

ただし環境的には、いろいろな不確実性があります。CRISPRはまだ新しい技術で、特許バトルの最中でもあります。でも確かなことがあるとすれば、それは、人間の遺伝子コードを書き換えることがもはやSFじゃなくなったということでしょう。

第9惑星存在の証拠

もう10年以上、天文学者たちは太陽系のはずれで9番目の惑星を探索し続けています。今年カリフォルニア工科大学の Konstantin Batygin氏とMike Brown氏は、第9惑星が実在するという有力な証拠を発表しました。海王星より大きく氷より冷たい第9惑星は強い楕円の軌道を持ち、太陽から地球の100〜1,000倍の距離を回っているようです。

少なくとも、この謎の天体の重力に影響されているらしいカイパーベルト天体のいくつかの軌道に基づくと、そのように推定されるみたいです。

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第9惑星のイメージ image: Caltech/R. Hurt(IPAC)

もちろん第9惑星の存在を確認するには、別の天体の動きから推測するんじゃなく、直接観測できるほうがいいんです。でも空を見上げて第9惑星を確認できるかというと、あまりに太陽から遠く、光も熱も弱すぎるので難しいです。それでもBrown氏らは協力して第9惑星を観測しようとしていて、数年内には確認できると楽観しています

二酸化炭素を岩に閉じ込める

二酸化炭素排出が止まらず、気候変動がいろいろな形で表れている昨今、空気から二酸化炭素を取り分ける手法の研究が進んでいます。このコンセプトは「二酸化炭素隔離貯留」(CCS, carbon capture and storage)とよばれ、前から検討はされていましたが、今年新たな展開がありました。サウサンプトン大学の研究チームが大気中の二酸化炭素を水に溶かし、それをアイスランドの地下水に閉じ込めたんです。2年も経つと二酸化炭素は玄武岩と反応し、固体化していました。その状態からは数百年から1,000年も保たれるといいます。

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二酸化炭素が閉じ込められた岩 image: Annette K. Mortensen / University of Southampton

これで「不都合な真実」をひっくり返せるかと思いきや、この手法にはまだ限界があります。この手法は場所に依存するもので、アイスランドの地下と同じような地質的・地球化学的条件でないと同じようにうまくはいかないんです。また実験レベルから、我々が毎年排出する何十億トンという炭素を少しでも減らせる程度にスケールアップするのも大変なチャレンジです。なのでさしあたりはまだ、地中に保存された炭素はなるべく地中のままにしておくほうが賢明みたいです。

地球最長寿の脊椎動物

不老不死へのヒントをもたらすのは、シリコンバレーの研究者じゃなく、グリーンランド周辺のサメかもしれません。Scienceに掲載された論文によれば、そのサメは最長400年も生きられるんです。北大西洋に生息するニシオンデンザメのメス28頭の目を放射性炭素年代測定したところ、彼女らは今まで知られている中で地球上最長寿の脊椎動物で、一番長生きしている固体は272歳から512歳のどこからしいです。

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最高400歳にもなるとされたニシオンデンザメ image: Julius Nielsen

ではニシオンデンザメが若さを保つ秘訣は何なのでしょうか? 考えられるのは、彼らの代謝機能が極端に低く、成長や生殖機能の成熟が非常にゆっくりであるということです。つまり残念ながら、ものすごい低温環境にいることが長寿の理由のようです。北極海の底で何年か過ごしたい人なら、いつまでも若々しくいられるかもしれませんよ。

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top image: The SXS (Simulating eXtreme Spacetimes) Project
参考: ドップラー分光法, STAT, Science

Maddie Stone - Gizmodo US[原文
(福田ミホ)

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