血友病がCRISPRを使った遺伝子治療で治った。まずはマウス実験で成果

血友病がCRISPRを使った遺伝子治療で治った。まずはマウス実験で成果 1

いつか人間も、注射1本で完治できるかも。

血友病は血が固まりにくくなる病気で、原因は遺伝子の異常にあります。完治する方法は現在なく、血友病患者の人は継続的に血液製剤を注射する必要があるため、大きな負担になっています。

でも最近、遺伝子のねらった部分を効率良く編集できる技術「CRISPR/Cas9」が開発され、血友病治療にも使われようとしています。ペンシルバニア大学の研究チームは米国血液学会年次会議で、CRISPRを使って血友病の原因となる遺伝子異常を修正する方法を発表しました。

血友病には大きくわけてAとBのふたつのタイプがありますが、今回実験の対象となったのは「血液凝固第IX因子」が正常に働いていない「血友病B」です。論文の第一著者Lili Wang博士を中心とする研究チームは、血友病Bにかかったマウスの血液凝固第IX因子を規定する遺伝子の異常をCRISPRで編集しました。

「私たちは基本的に、マウスを完治させました」とWang氏はプレスリリースで語っています。「このような遺伝子治療によって、人間でも1回注射すれば永久に治すことが可能になると期待しています」とも。

彼らはまず、血液凝固第IX因子をコードする遺伝子が無効化されたマウスを作りだしました。そして血液凝固第IX因子が生産される肝臓に対しDNAを切断するCas9を挿入、次に人間の血液凝固第IX因子を作る遺伝子配列を挿入しました。

これによってWang氏らは、マウスの体において血液凝固第IX因子を発現させることに成功しました。つまり、いったん遺伝子操作で血友病になったマウスが、遺伝子治療によって自力で血を固めることができるようになったんです。

さらに、挿入する遺伝子の量を増やしながら同じ処置を繰り返していくと、血液凝固第IX因子の活動は4カ月以上にわたって安定し、通常レベルを保つことができました。また、この治療の8週間後、実験対象マウスのうち一部のマウスの肝臓を部分的に切除したところ、通常なら死亡してしまうはずが、その後も生き続けることができたそうです。

この手法は血友病Bのほとんどのケースで使えるとされていて、さらにその効果は従来の治療よりはるかに長続きし、数年間から長ければ一生効果が続くと考えられています。日本では男性の1万人に0.8〜1人が血友病患者であると考えられており、そのうち血友病Bであることがわかっている患者数は約1000人ほどです。

「これはつまり、生体内のゲノム編集で病気が治せるということを示しているのです」とWang氏は米Gizmodoに対し語っています。

とはいえこの研究はまだ始まったばかりで、これからより大きな哺乳類を使った検証、さらには人間に対する臨床実験も必要です。対人間のCRISPRを使った血友病治療が実現するまでには、まだ長い道のりがありそうです。

それでも、今完治しない病気が遺伝子治療で治せるようになるのは人類にとって巨大な進歩です。人間に対するCRISPRの利用はすでに米国で承認されていて、難しい病気が遺伝子治療で治る時代は、一歩一歩近づいています。

もっと読む:
遺伝子編集ツール「CRISPR」人間への使用、承認される
モンサントが遺伝子改変技術「CRISPR/Cas9」使用権ゲット
今すぐ死にたくなる絶望的な未来予想図10選

image by Syda Productions / Shutterstock.com
source: Penn Medicine

Kristen V. Brown - Gizmodo US[原文
(福田ミホ)