太陽嵐による損失は1日5兆円近くなるという研究。だって停電の経済への影響考えたら…

太陽嵐による損失は1日5兆円近くなるという研究。だって停電の経済への影響考えたら… 1

電力もお金も吹き飛びます。

少し前に太陽嵐が地球にニアミスしていたって話題になりましたが、これ直撃してなくて本当に良かったです。というのは新たな研究で、太陽嵐の被害を経済活動全体で見ると、1日あたり数百億ドル(数兆円)にのぼるっていう推定が出されたんです。そしてこの損失の半分以上は、太陽嵐の直接的被害を受けた地域以外で発生するみたいなんです。

太陽嵐とは、太陽で大きなフレアが発生したとき、X線や荷電粒子、磁化プラズマなどを含む太陽風が激しく噴出する現象です。またそれに伴うコロナ質量放出(CME)には、電力網を破壊する力があります。電気に依存した我々の文明はかつてなくこの嵐の影響を受けやすくなっていて、直撃されればモバイル端末から衛星まで、一斉にダウンする可能性があるんです。

太陽嵐はときどき発生しているんですが、それは特定の方向に向けて起こるので、地球に大きな被害が及ぶことはそんなにしょっちゅうではありませんでした。よく知られている大規模な太陽嵐は1859年の「キャリントン・イベント」で、そのときは電報用の電線が焼かれ、広範囲で通信がダウンし、さらにはメキシコやキューバでもオーロラが観測される異常事態となりました。また1989年には磁気嵐でカナダの電力会社イドロ・ケベックの電力グリッドが機能停止し、9時間にわたる停電が発生しました。

ただ、これからCMEが原因で停電が起きた場合にどれくらい深刻な被害が出るか、専門家の見方は分かれています。停電期間は数時間、せいぜい数日で終わると言う人もいれば、変圧システムの交換が必要だから数週間、場合によっては数カ月かかると見る人たちもいます。

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太陽の活動が地球上の磁気に大きく影響します。(Image: NASA)

そこでケンブリッジ大学リスク研究センターのEdward J. Oughtonさんらは、太陽嵐で発生する1日あたりの経済的損失を推定しようと試み、その結果をSpace Weatherに発表しました。この研究が他の研究と違うのは、電力網などのインフラに対する直接的な被害だけでなく、さまざまな経済活動への影響も太陽嵐の結果として捉えたことです。この研究では、電力網への被害が米国各地で起きた場合の影響をシミュレーションしています。

「我々は、宇宙天気がさまざまな経済分野での米国内の生産活動に与えうる影響がいかに大きいかを検討することが重要だと考えました。それは製造業、政府、金融、そしてサプライチェーンのつながりによって他国に発生する経済的損失の可能性までを含んでいます」Oughtonさんはプレスリリースの中で書いています。「太陽嵐に対して脆弱な電気インフラの不確実性を考慮すると、これら直接・間接のコストについて、透明性の高い研究が今までなかったことが驚きです」とも。

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停電範囲のパターン(左)と、それに対応する被害者数(中央)、GDPの損失(右)(Image: AGU)

研究チームは、宇宙天気によって起こる停電の範囲を上記の4パターン検討しました。もし「S1」のように米国北部だけが停電する場合でも、それは米国の人口の8%に相当し、米国内での経済的損失は1日あたり62億ドル(約7000億円)、さらに国際的サプライチェーンへの影響で10億ドル(約1100億円)かかります。

さらに「S3」は米国の人口23%に影響し、国内の損失は1日あたり165億ドル(約1兆9000億円)、国外では22億ドル(約2500億円)の損失です。一番大きな被害となるのは人口の44%に影響する「S4」で、1日あたりの国内の損失が377億ドル(約4兆3000億円)、国外は48億ドル(約5400億円)となります。合計すれば1日5兆円近くなり、20日ちょっとで100兆円超える計算です。

この研究の大きな成果は、停電の直接的なコストは、損失全体の一部に過ぎないと示したことです。「この研究では、嵐の影響を受けた地域における損失は、平均して経済的損失全体の49%だけでした。39%は停電ゾーン外の米国内で間接的にかかったコストです」とプレスリリースにあります。そして残る12%は、米国外でのコストとなります。つまり51%が、停電の起きていない地域における損失なんです。

停電が長引けば、影響を大きく受けるのはまず製造業、次に政府、金融、保険、不動産と続きます(太陽嵐の被害は保険でカバーされるんでしょうか?)。国別では中国が一番影響を受け、次にカナダ、メキシコとなります。

ただこの分析は、あくまで米国だけで大規模停電が起きた場合を想定しています。論文にはこうあります。

現実に我々は複数日、複数地域での大きな宇宙天気イベントに見舞われる可能性がある。よってこの脅威に関連する世界的なコストの可能性を理解するには、ヨーロッパや東アジアを含む複数の停電地域を想定した経済的影響評価の必要がある

次に大きな太陽嵐が地球を襲うのはいつか、世界のどの地域が影響を受けるかはわかりません。キャリントン・イベント並みの太陽嵐が今後10年で起こる可能性は12%と推定され、今すぐにも起こりそう!というわけではありませんが、備えあれば憂いなしです。非常用電池や懐中電灯、非常食を常備しておいたり、家族との連絡方法を決めておいたりするのは、太陽嵐対策としても大事なことなんですね。

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top image: NASA
source: Space Weather, American Geophysical Union

George Dvorsky - Gizmodo US[原文
(福田ミホ)