金星に重力波が作る弓状の模様、あかつきが発見

金星に重力波が作る弓状の模様、あかつきが発見

あ、あの「重力波」とは別ものみたいです。

Nature Geoscienceによると、JAXAの金星探査機・あかつきが、金星の上層大気に巨大な弓形の模様を発見しました。金星を覆う雲の上にはつねに秒速約100mの強風が吹いているのに、長さ約1万kmにわたるこの模様はほとんど動いていませんでした

JAXA宇宙科学研究所は、この現象は太陽系内で記録された中では最大の「重力波」によるものだと発表しました。あ、これ去年発見されて大騒ぎになった「重力波」とは違うもので、金星の重力波は「gravity wave」、去年見つかった重力波は「gravitational wave」です。ややこしいから「重力波A」とか使い分ければいいのにと思うんですけど、しょうがないですね。今回言われてる方の重力波は、液体や気体が、重力下で平衡状態に達しようとするときに起こるもので、地球では、これによって海の波ができたり、山の上に空気の流れができたりしています。

地球のお隣の星・金星には、不思議な大気現象がたくさんあります。上層大気には「スーパーローテーション」と呼ばれる秒速約100mの強風が吹き荒れていて、厚い酸化硫黄の雲が東に向かって流されています。金星の自転は1周するのに公転より時間がかかるほどゆっくりしているので、雲は自転よりはるかに速いスピードで飛ぶように動いていきます。

金星に重力波が作る弓状の模様、あかつきが発見 1

2015年12月8日から11日にかけて観測された弓状の模様
(Image: JAXA/Taguchi et. al., 2017)

2015年にあかつきが捉えた弓状の模様は今まで知られていなかった現象で、金星の謎をさらに深めました。立教大学の田口真氏率いる研究チームは、あかつきに搭載された中間赤外カメラと紫外イメージャの画像を分析した結果、この模様を発見したのです。

その弓状の模様は金星の地表から65kmほどの高度にありながら、異常に高温で明るく、見たこともないほど巨大でした。そして長さは約1万kmと、ほとんど金星の直径全体にわたるほどでした。さらに強風にもかかわらず動いていないという点でも異様でした。これまでも、金星ではもっと小規模な大気現象が捉えられてはいましたが、それらはスーパーローテーションより速い場合も遅い場合もありつつも、とにかく移動していました。

でも弓状の模様は数日で消えたので、つねにあるわけではありません。研究チームは今、それが再度現れることを待望しています。

弓状の模様を動画で捉えたもの。青と黄色の線は、夜と朝のタイミングを表す
(Image: JAXA/Taguchi et. al., 2017)

研究チームはコンピュータモデルでのシミュレーションの結果、この模様の原因は熱潮汐や機器のエラーではなく、重力波であると結論付けました。「我々の重力波伝播のシミュレーションでは、雲の上端の高度で、観測されたのと同じような温度分布のパターンが見られました」と田口氏は言っています。

金星上では以前にも小規模な重力波が観測されていて、その結果地表の山脈の存在がわかりました。今までは重力波は山脈で生まれ、振れ幅を大きくしながら上空に上がり、雲の上端のすぐ下で大気中の風を押し戻しながら消える…それが一般的な動きだと考えられていました。でも今回の観測結果からは、重力波がもっと大きな惑星全体の規模で動いて、数千kmにわたって雲の上にまで影響を与えうることがわかりました。

とはいえ田口氏らは、山脈で生まれた重力波が雲の上端まで広がることができたのは何らかの理由があると考えています。彼らの仮説は、金星の大気中の風には従来の推定よりも大きな空間的・時間的変化があり、それによって重力波が上層大気にまで伝わることができたのではないかというものです。

研究チームではこれから大気の中の変化を研究し、弓状の模様が現れるときと現れていないときを比較したいと考えています。「統計的研究のためには、より多くのデータを収集する必要があります」と田口氏は言っています。「現在進めているコンピュータ・シミュレーションは、観測結果に基づく仮説を検証するために重要となります」。

金星は地球のお隣とはいえ、我々が思っていた以上に複雑で、まだまだ知らないことがたくさんあるようです。

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top image: JAXA / Taguchi et. al., 2017
source: Nature Geoscience, JAXA, Wikipedia 1, 2, Gizmodo US
参考: JAXA

George Dvorsky - Gizmodo US[原文
(福田ミホ)