JAXAの「こうのとり」スペースデブリ回収実験。残念ながら失敗に終わる

JAXAの「こうのとり」スペースデブリ回収実験。残念ながら失敗に終わる

JAXAにデブリ課ができる日も近い?

今、地球を周回しているスペースデブリ(宇宙ゴミ)はいくつあるかご存知ですか? 小さなものまで含めると、なんと2億個を超えています。これらは人工衛星や宇宙ステーションに衝突し、大きな被害をもたらす可能性があります。さらに映画『ゼロ・グラビティ』や漫画『プラネテス』で扱われたケスラーシンドロームという恐ろしいリスクも。デブリの衝突で新たなデブリが発生し、連鎖的に増殖していく現象です。放っておけばデブリは増え続ける一方。今後の宇宙開発のためにもスペースデブリ対策は必要不可欠なんです!

そんな宇宙の大問題を解決するべく、我らがJAXAは日夜研究を進めてくれています。そして今回、宇宙ステーション補給機「こうのとり6号機」を使ったスペースデブリ回収実験を行なった...のですが、残念ながら失敗に終わってしまいました

JAXAが実験したのは「導電性テザー」という装置を使ったデブリ除去システム。金属製のテザーと呼ばれるケーブルをスペースデブリに取り付けて移動速度を落とし、地球の大気圏内に突入させて燃やすという方法です。テザーはステンレスアルミニウムでできており、宇宙空間で伸びると地球磁場の影響を受けて電流が流れます。それにより進行方向とは逆方向にローレンツ力がテザーに発生します。そのためテザーが付いたデブリは徐々に減速していき、最終的に地球の大気圏に突入して燃え尽きてしまう、という仕組み。今回の実験では、こうのとり6号機からテザーを打ち出して、その有効性を確かめるというものでした。

ところが実証実験では、テザーを打ち出すシステムに不具合が生じ、何日もかけて復旧作業が行なわれましたが、結局中断することに。プロジェクトの責任者である井上浩一KITE推進チーム長は記者会見で、

「実験開始後にテザーを伸展させるためのエンドマスの放出を試みましたが、放出を認めることができませんでした。そのため当初の予定されていた実験期間を多少延長しまして、状況の確認ならびに復旧対策を実施してきましたが、最終的に放出には至りませんでした」

と語っています。現在はその原因究明に当たっているそうですが、エンドマスを固定していたボルトの1つが分離されなかった可能性が高いみたいです。ですが完全に失敗したわけではありません。デブリ除去システムの肝となる、地球磁場から電気を作り出し制御する実験はこうのとりの機体を利用して行なわれ、成功しています。デブリ回収システムの技術の有効性は無事実証されたみたいです。

こうのとり6号機の実験は、JAXAのスペースデブリ対策研究のひとつに過ぎません。JAXAは観測モデル化防御発生防止の4つの観点からスペースデブリの対策研究を行なってきています。まずはスペースデブリの「観測」。これまでスペースデブリの把握はアメリカが中心でしたが、現在はJAXAも光学望遠鏡を用いてデブリを観測しています。次に「モデル化」。デブリの分布がどのように変わってゆくのかを予測する「デブリ推移モデル」を開発し、今後のデブリ被害を予測しています。ただいくらデブリを把握したところでその衝突は避けられません。そのためデブリが衝突した際の「防御」対策もしています。地上で超高速衝突試験を実施し、軽量で柔軟な防御材を作っています。そしてこれ以上のデブリの「発生防止」のため、今回の実験のような「デブリ除去システム」を開発しており、2020年代には世界的な枠組みでのデブリ除去の実用化を目指しています。

『プラネテス』で描かれたスペースデブリの回収業。それを世界に先立って行なっているのはJAXAなのかもしれません。今後の実験の成功を期待しましょう。

もっと読む:工場もボールペンもゴミの山も。人類が地球上に残してきたもの全ての質量ってどのくらい?

image: JAXA
source: JAXA 1, 2, 3, AFP via The Guardian
参考: JAXA 1, 2, ESA

George Dvorsky - Gizmodo US[原文
(Shun)

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