放射線も化学療法も不要なガン治療。遺伝子操作したサルモネラ菌を注入する免疫療法に光

放射線も化学療法も不要なガン治療。細菌を注入する免疫療法に光

新たな安全なガン治療になる?

ガン細胞の厄介なところは、人体にとって有害な存在であると免疫系が判定できず、攻撃して除去しようとの働きをしない場合が多いことにあります。でも、このガン細胞の特徴を根底から変化させ、身体に備わる免疫系をガン治療へ最大限に役立てるための新発見が、このほど米学術誌のScience Translational Medicineで発表されましたよ。

韓国の全南大学校(Chonnam National University)の生物学者のJoon Haeng Rhee氏およびJung-Joon Min氏は、遺伝子操作したサルモネラ菌を、結腸ガンを患うマウスへ注入。すると、突如として、周囲の免疫系が悪性腫瘍を目がける攻撃を開始し、その結果、ガンの治癒や進行抑止が認められたと明らかにされていますね!

約6割の実験体において、腫瘍完全に消えてなくなったことを確認した。残りの2割のマウスでも、腫瘍のサイズが縮小し、そのため(ガンが原因で)死亡にいたることはなかった。

同研究を進めた両氏は、このように報告しています。遺伝子操作されたサルモネラ菌を、腫瘍に目がけて各種の治療薬を届ける目的で注入することは、これまでにも実施されてきたそうです。

image: Chonnam National University

今回の研究では、タンパク質の「FlaB」を細菌内に格納。海洋微生物の「Vibrio vulnificus」の水中移動に不可欠なFlaBですが、人体には異物でしかないため、これが腫瘍の内部に到達すると、マクロファージ激しい排除攻撃を開始。自然な免疫系の働きを利用して、腫瘍を除くことが可能になるという仕組みのようですよ〜。

今回の実験にあたり、ほかの治療薬や化学療法を使用することは一切なかった。

両氏は、このように語って、身体へのダメージが少ない新たなガン治療法確立への期待を表明しています。FlaBを含む改変サルモネラ菌は、マウスの体内へ注入後、ガン細胞にのみ到達し、そのほかの細胞には、まったく影響をおよぼさなかったことも明らかにされていますね。今回は結腸ガンへの治療効果が研究されましたけど、今後は、乳ガン、黒色腫、肺ガンなどへの治療の有効性を調べるほか、人体でも同様の働きが得られるかの調査を進め、新たなガン免疫療法に採用されることが目指されるんだとか。

古くは19世紀後半、外科医のWilliam B. Coley氏が、丹毒に感染した肉腫患者は、丹毒と闘う免疫系の影響で肉腫の腫瘍まで消失してしまうことに気づき、いわゆる「コーリーの毒」として研究がスタートした免疫療法。その後、放射線治療や化学療法の発展で、すっかり影を潜めてしまいましたけど、また脚光を浴びるようになってきたのかもしれません。安全かつ効果の高いガン治療法となるよう、さらなる研究が進むといいですよね。

image: NIH/flickr
source: Science Translational Medicine

George Dvorsky - Gizmodo US[原文

(湯木進悟)