触れただけで神経を破壊…金正男氏を殺害したとされる毒「VXガス」はどれだけ強烈なのか

金正男氏を殺害したとされるVXガスは、どれほど強烈な毒物なのか

北朝鮮金正男(キム・ジョンナム)氏が殺害された事件。Washington Postはこの事件で使われたのは、猛毒のVXガスだったと報じています。

VXガス、またの名を「O-エチル-S-(2-ジイソプロピルアミノエチル)メチルホスホノチオラート」とは、猛毒の神経剤であり、「ガス」と付いていますが、通常は無色透明の液体です。その作用は激烈で、皮膚に触れただけで神経が破壊され、容易に人を死に至らしめます。食べ物や水の中に毒物として混入することもでき、スプレーで噴霧することも可能。CNNは、金正男氏はこの強烈なVXガスを顔に塗布されたと伝えています。

VXガスが生まれたのは1952年。初めは昆虫駆除が目的で生成されました。しかし時は冷戦真っ只中。人さえも簡単に殺せてしまうその強烈さに目をつけたソ連(当時)などは、VRガス、VEガスといったVXガスに似た神経剤の研究を進め、それらは「Vシリーズ」とも呼ばれています。

実際に、1980年代に勃発したイラン・イラク戦争でイラクが利用したり、日本でも1994年にオウム真理教が開発、使用したとして世間に衝撃を与えました。

人間の体は、細胞と神経の交信を促すアセチルコリンと呼ばれる神経伝達物質を生み出しています。このアセチルコリンは多すぎても体によくなく、アセチルコリンエステラーゼと呼ばれる酵素で分解されています。VXガスには、このアセチルコリンエステラーゼの活動を停止させる作用があるため、体内にアセチルコリンが充満して中毒死してしまうのです。VXガスに接触すると、わずか数分で呼吸、および神経系の活動が停止するといわれます。

1972年、国連はこれら化学兵器を大量殺戮兵器に分類し、1997年の化学兵器禁止条約において、一切の開発・保有が禁止されています。

今回の事件によって気になるのは、はたしてVXガスは今でも作られているのか、という点でしょう。前出のCNNの記事によると、2009年に国際危機グループ(ICG)によって提出された報告書には、北朝鮮には数千種類の化学兵器が存在すると明記されており、そもそも同国は化学兵器禁止条約に署名していません

大方の予想では、今回の事件の首謀者は、朝鮮労働党委員長である金正恩(キム・ジョンウン)氏ではないかとされていますが、当の北朝鮮はそれを一切否定しています。

VXガスは非常に致死性の高い毒物ですが、アメリカ医師会が発行するジャーナルであるThe Journal of the American Medical Association(JAMA)の2004年の報告によると、VXガスの被害に遭いながら生存した人は、数カ月に渡って、頭痛、記憶障害、およびPTSDなどに苦しめられたとのことです。

VXガスの解毒には、アセチルコリンの効果を消し去るための解毒剤であるアトロピン硫酸塩をただちに、かつ正常な呼吸が再開されるまで投与する必要があります。その後、抗けいれん薬であるベンゾジアゼピンで発作を止め、塩化プラリドキシムでアセチルコリンエステラーゼの活動を正常化し、再びアセチルコリンを分解できるようにしなくてはなりません。

とにかく、今回使われたVXガスは、とんでもなく恐ろしいシロモノだってことです…。

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source: Washington Post, CNN, UNITED NATIONS, Organisation for the Prohibition of Chemical Weapons, JAMA, Council on Foreign Relations
参考: Wikipedia

Ryan F. Mandelbaum - Gizmodo US[原文
(渡邊徹則)