データの進化、詰みました。1グラムのDNAに215ペタバイトが保存できるんだって

データの進化、詰みました。1グラムのDNAに215ペタバイトが保存できるんだって

215ペタバイト=約21万5000テラバイト。

10年前であれば古い写真を保存するのに大きな外付けハードドライブを使っていたかもしれません。では今から10年後…はもしかしたら、たった数グラムのDNAに人生を通して発生したデータすべてを保存できるようになっているかもしれません。

つい最近、科学誌Scienceに発表された研究では、DNAの中に1985年のフランス映画、コンピューターウイルス、そして50ドルのアマゾンギフトカードを保存することに成功しました。今回の手法を使うと1gのDNAの中に215ペタバイトのデータを入れることが可能だそうです。

データ保存メディアとしてのDNA研究

DNAにデータ保存…新しい!と言いたくなりますが、そもそもDNAはその生物に関する膨大なデータを持っているわけで。そう考えると実に自然な発想なのかもしれません。

実はこういった試みはこの数年間で盛んになってきているようです。2011年にはハーバード大学の遺伝学者ジョージ・チャーチ氏が電子データの保存メディアとしてDNAを使い、彼の著書、いくつかの画像、そしてJavascriptのプログラムを一つ保存して話題になりました。

それから数年が経って、欧州バイオインフォマティクス研究所の研究員たちがその手法を改善し発表しました。シェイクスピアのソネットすべて、マーティン・ルーサー・キングの「I Have A Dream(私には夢がある)」演説の映像、科学者のジェームズ・ワトソンとフランシス・クリックによるDNA構造を詳細に論じた論文のPDF、そして彼らの研究所の写真を、DNAの小片にアップロードしてしまったんです。

また去年7月には、Microsoft(マイクロソフト)とワシントン大学も200メガバイトのデータをDNAに保存することに成功しています。と数字だけ読むと「もうメディアがいらなくなるじゃん」と思ってしまいそうになりますが、実際は操作が極めて難しいようです。ちょっとした違いで解読不可能ながらくたデータになってしまうとのこと。そりゃそうですよね。

新手法「DNAの噴水」

しかしそんな困難にも負けず、冒頭で紹介した先日Scienceで発表された論文は、また新たな記録を達成したとのこと。ヤニフ・エルリッヒ氏(ニューヨーク・ゲノム・センター)とディナ・ジーリンスキ氏(コロンビア大学)の2人は「DNAの噴水」という新しい手法でデータを細かい塊に切り分けて、また組み合わせるということに成功。それによって長編映画といった大きなファイルも問題なくつなぎ合わせることができるようになったとのこと。この手法を使うと1gのDNAの中に215ペタバイトのデータを入れることが可能だそうです。さ、噛み締めましょう。

1gのDNAの中に215ペタバイトのデータを入れることが可能

これは数年前にチャーチが発表した性能の100倍にもなるんです。それで映画、コンピューターウイルス、そして50ドルのアマゾンギフトカードが1gのDNAに保存できたと。

「DNAの噴水(ファウンテン)」という名前は、今回の研究で使われた「ファウンテン・コード」という既存の技術から来ているそうです。このファウンテン・コードとは、モバイルTVといった、データのドロップアウト(欠損)が起きる可能性があるチャンネルの情報の送信に使われています。これを応用し、1と0の数字を「A、G、C、T」の4種のヌクレオチド塩基にマップし、それを特殊なソフトウェアを使ってまたバイナリコードへと変換するということのようです。

極小、劣化なし、複製完璧、まさに永久保存

DNAは小さく、データの経年劣化もありません。ここまで記録密度の高いデータ記憶装置はこれまでなかったのではないでしょうか。しかも「ポリメラーゼ連鎖反応」を使ってサンプルを増やすだけでデータのコピーもできるそうです。コピーをして同じデータをエラーなく取り出すという作業を10回行なって10回とも完璧に成功したそうです。

今回の研究をそのまま使えば、全世界のデータをDNAに入れても、クローゼット1つくらいのサイズに収まるんだそう。しかも何千年も何万年もデータが保管され、コピーされても劣化せず...もう何なんでしょうかこの世界。映画『マトリックス』でも見て落ち着かないとやってられません。

もちろんすぐにDNA式のフラッシュドライブが普及するわけではありません。DNAのデータ解析は時間がかかる上にお金もかかります。ですが、それもこの数年で指数関数的に効率的になりつつあるのです。

しかしデータが無限に、永久に保存できるようになったら私達は何をするのでしょうね...そういえばイーロン・マスクも「私達はすでにシミュレーション世界の中で生きている」なんて言ってたなぁ。

抗生物質が効かない細菌退治に。DNAをズタズタに噛み砕き殺す「CRISPR-Cas3」
タバコを50本吸うごとに肺では1つのDNA変異が起きている

image: enzozo / Shutterstock.com
source: Science, Phenomena
reference: ポリメラーゼ連鎖反応 - Wikipedia, Vox - YouTube

Kristen V. Brown - Gizmodo US[原文
(塚本 紺)

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