実写映画版『攻殻機動隊』のホワイトウォッシング問題を強烈に具体化した動画

実写映画版『攻殻機動隊』のホワイトウォッシング問題を強烈に具体化した動画 1

白人のヒロインばかりが活躍するコミックの世界。そんな中で草薙素子が表紙に描かれた『攻殻機動隊』のコミックに目を留めたアジア系の女の子。自らの人種を代表とする草薙素子をヒロインとして育った彼女が映画『ゴースト・イン・ザ・シェル』のポスターに目を留める…。

動画はChewy Mayより。

ホワイトウォッシング」とは、本来ならば白人ではないキャラクターを白人が演じること。白人が顔を黒く塗って黒人を演じる「ブラックフェイス」や、同様にメイクアップなどして黄色人種を演じる「イエローフェイス」(例えば映画『ティファニーで朝食を』で日系のユニオシ役をミッキー・ルーニーが演じた)など、エンターテイメントの世界では長きに渡り有色人種が出演する機会が、その役を白人が演じることにより奪われてきたという背景があります。また、それによって人種の代表となる者が居なくなる、ということも問題の一つです。

そんな中、最近では映画『ゴースト・イン・ザ・シェル』で原作の『攻殻機動隊』シリーズに登場する草薙素子に相当する役をスカーレット・ヨハンソンが演じること役名が「Mira」となったこと、『ドクター・ストレンジ』ではアジア人男性としてコミックで描かれたエンシェント・ワンをティルダ・スウィントンが演じたことでもこの「ホワイトウォッシング」が問題となっているのです。またアメリカのモデル、カーリー・クロスがVOGUE Americaの「多様性」をテーマにした号で、日本で和服を着て撮影した写真が大きく取り上げられていたことで、これは「イエローフェイス/ホワイトウォッシングだ」、「多様性をテーマにするならアジア系のモデルを使うべきだ」と批判されていたのも記憶に新しいです。

「オーバーリアクティングだ」、「ただの映画じゃないか」などの反論も聞かれますが「映画は現実ではない、それでも現実の人々に影響を与える」と語るのは動画を制作したChewy MayさんとJes Tomさん。io9のインタビューで、Mayさんは「人々はホワイトウォッシング問題が大人になった我々に影響を与えるということに気づいていない、それに私達の内なる童心は、自分たちが代表されることを求めている」と語っています。動画作成に至ったのは「私はなぜ人々が怒っているのか、何故これが私たちに大きな影響を与えるのか、そのことを人の顔とストーリーをつけて伝えたかった」ためとMayさん。この映像作品にはMayさんとTomさん自身の成長期の経験のみならず、彼らの友達やコミュニティーの経験がインスピレーションとなったとも語っています。

今回の動画はアジア系のホワイトウォッシングに注目したものとなっていますが、ホワイトウォッシングはアジア系にかぎらずさまざまな人種の問題です。また、動画中で大人となった主人公を演じたTomさんはノン・バイナリー・トランス(男性・女性といった性の概念に当てはまらず=ノン・バイナリー、なおかつ持って生まれた性とは異なる性である)です。

『ゴースト・イン・ザ・シェル』で「少佐」を演じるスカーレット・ヨハンソンは、ホワイトウォッシングとの批判に対して女性が主役であるというフェミニズム性をアピールしていますが、これに対しても反論が出ています。Tomさんはこう語ります。

ただフェミニズムの名のもとに、強かったりパワフルだったりする白人女性が全ての女性の地位を向上させる、だなんて期待できない。

フェミニズムは人種の問題でもあるし、性的指向の問題でもあり、性のアイデンティティの問題でもある。それは問題を消してるだけだし、話のニュアンスを消してもいる。

他の人種、他の性的アイデンティティを持つ人々の代わりに、すでに女性の地位として立場が良い状況にあるストレートの白人の女性がフェミニズムを主導していても意味がなく、さまざまな人々が代表されてこそ、意味があるわけです。

人種豊かな主人公たちが活躍する映画やコミック(例えばイスラム教徒の女性がヒーローになったMs.マーベルなど)が出だしたのもまだまだ最近のこと、今後もっとさまざま

な背景を持つ人々が代表されるようになるにはもう少し時間がかかるかもしれません。しかし、動画最後の「映画は現実ではない、それでも現実の人々に影響を与える」の言葉通り、映画を鑑賞する受け手としての我々の目もこの点に注目し、時に批判、時に賛称していくことで、映画もまた変わっていくはず。誰もが代表される時代が来ることを望みましょう。

少佐の新しい名前が発覚? 実写映画版『攻殻機動隊』特別映像

image: io9 via YouTube
source: io9, YouTube

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