「こだわりから脱却することで進化する」チップチューンアーティストのTORIENAにインタビュー

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「こだわりから脱却することで進化する」チップチューンアーティストのTORIENAにインタビュー 1

メディアジーンが運営するクラウドファンディングサイト「machi-ya」で掲載中のフィットネスバイク「Me-mover」は、移動の自転車がわりに使うだけで運動になる、フィットネスの新しい形を提案する乗り物です。

Me-moverの特徴のひとつは、そのレトロ感のある形。そして、先日Me-moverを試乗したTORIENAさんの音楽もまた、その8bitゲームサウンドから感じられるレトロ感が魅力のひとつです。

そこで今回は、2月に初のワンマンライブを成功させたTORIENAさんに、これまでの5年間の音楽活動についてインタビューして参りました。TORIENAさんの作品へのこだわりやチップチューンの魅力にせまっています。

また、プロジェクト終了間近のMe-moverの乗り心地などについても語っていただきました。

作曲へのこだわりと『FAKEBIT』の意味

「こだわりから脱却することで進化する」チップチューンアーティストのTORIENAにインタビュー 2

── 主にゲームボーイで楽曲を制作されているとのことですが、採用した当初からこの手法での制作はスムーズだったのでしょうか?

TORIENA:チップチューンをやるまでの音楽経験は、吹奏楽をちょっとやったり、ベースがちょっと弾けたりするくらいでした。DTMとかもちょっとやってたんですけど、ゲームボーイで音楽を作るのが私には合ってたんですよね。手馴染みが良くて、良いツールに出会えたから、それをきっかけにどんどん広げられたと思います。

当たり前のことですが、最初は難しくて全然できませんでした。それに音作りはあまり得意ではないので、今も大変です。あまり耳が良い方ではないと思うので、音のバランスとかも難しいですし、ミックスとかも時間がかかります。少しずつ変えて書き出して「あー、ちょっと違う」といった感じで1回1回やるので。逆に、メロディとか展開とかを組むのは好きだから、そこは早いです。

── 制作の上で大切にしていることはなんでしょうか?

TORIENA:1stアルバムから3rdアルバムは全曲インストなんですが、それでも自分の中では物語があります。

作品には、制作意図というかテーマ性がないと作品とは言えないと考えていますし、アルバムのタイトルは要するに作品名だと思うので、ちゃんと作品にする場合は全体的なテーマ性とかも考えるようにしています。とりあえず曲が集まったらアルバムにするというのではないので、作ったけどアルバムの中には入れない曲も多いです。

あと、頭から最後まで順序よく聴けるように気を使っています。私自身は、アルバム全体のテーマや雰囲気をアートワークから想像する事が多いです。なので、なんとなくの雰囲気で曲を組んで聴きながら、どんな感じのジャケットだったらふさわしいかな?と描いてみたりとかします。逆にアートワークを先に作ってから、曲を作ることもありますね。

── 『FAKEBIT』(2015年)でDTM、歌モノにも挑戦されましたが、ご自身にとって大きな転機になったのでしょうか?

TORIENA:私は楽曲を作るのももちろんですが、パッケージングして初めて意味があると思っています。『FAKEBIT』をリリースしたことは自分の中ではとても大きな転機でしたし、「音楽をやりたい」というのが形になった作品です。 それまではずっとチップチューンをやりたいということにこだわっていたんですが、 音楽をやりたいなと思って。

ゲームボーイやファミコンとかの中に入っている、内蔵チップ音源で出る音を使って作曲することを誇りに思う気持ちから、チップチューンという言葉が生まれ、チップチューンというジャンルが生まれました。まだまだ日本では知られていないかと思うんですけど、やっている人にしかわからないような心構えとかルールみたいなのが存在しているんです。実機以外から出しているピコピコした音を「チップチューンです!」とは主張しにくい、みたいなこともあったりします。

実機至上主義みたいな思想を持つ人もいて、私も最初はそうだったんですね。 やっぱりチップチューンにハマっていたから、実機以外で作ったピコピコとした音に対して「わかってないなぁ」と思っていたこともあります。でも、そういう考えから脱却したというか、理解しつつやらないといけないなと思うようになりました。目的と手段を逆にしているというか、手段として利用していかないといけないものなのになと思ったんです。

実機ではないパソコンで鳴らしたチップチューンの音って、海外だと「fake bit」と揶揄されていて、実機じゃないチップチューンを煙たく思う人たちと、逆にfake bitであえて作って、「実機主義とか堅苦しい」みたいにバトルしている人たちがけっこういました。そんなことを言ってる暇があるんだったら曲を作ったほうがいいと思ったんです。

そういう経緯があって、わざと『FAKEBIT』 というタイトルを自分の作品につけました。「fake bit」を鳴らすことで、こだわりに縛られずにどんどん新しいことをやってくぞ!と、自らを戒める気持ちも含めてリリースしました。

歌モノにしたことも、もちろん大きな覚悟がいりました。もともとテクノとかが好きで、歌のない音楽の方がなじみがあったんです。歌詞がない分、楽曲が聴き手の気持ちにスライムみたいになじむイメージがあって、それが好きだったんです。でも、自分が発信する側になってからしばらくして、バンドやアイドルと対バンすることが増えて、歌モノも制作してみたいなと思うようになりました。

今までやってきた作曲・編曲に加えて、作詞も歌唱も、自分ひとりでなんでもできるということを証明したい気持ちで、歌モノを作りはじめたんです。実際に挑戦してみて、歌モノを作ることがこんなに難しくて大変なんだなと実感しました。でも、できないこととかかがあると習得したくなるので、手応えはすごく感じていましたし、うまく作れるようになりたいなって熱くなりましたね。

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ワンマンライブは「ひとつの区切り」

── 昨年から今年にかけて、ひとりでなんでもこなすスタイルから、誰かと世界観を作り上げていく方向へと変えたのかな?という印象を受けました。

TORIENA:けっこう動きました。変わることは怖かったんですけど、変化しないと進化できないということに気づいて覚悟を決めましたね。ゆっくりと時間をかけて覚悟を決めた年だったと思います。

もともとは趣味というか、プロになりたくて始めたわけではなくて、音楽が好きで、表現することが好きで、そういう場がほしいという思いで続けていました。そこから「エンターテインメントとしてちゃんと売るぞ!」という覚悟を決めて、大学卒業後に就職した仕事をすぐやめたんです。今まで自分のエゴだけで作ってきたんですけど、もっといろんな人に楽しんでほしいという気持ちがしっかり湧いてきたので、「ちゃんとパッケージングするぞ」という気持ちへ固めていったのが、去年の一年間でした。

── Yunomiさんとのコラボも話題になりました。

TORIENA: 修行みたいなことがしたかったんですね。歌うのはあまり得意じゃなかったし、今まであまり人と一緒にものを作ることをしてなかったので、Yunomiさんとコラボしました。

以前MVを作ってくださった、m7kenjiさん(ピクセルをベースに表現をするクリエイター)は、制作に対するマインドとかのベクトルが同じ方でした。同じ感覚で物作りができたので、そういう人と作りたいなとは思っていました。

今、音作りとかめちゃくちゃうまい人は多いですし、曲作りがきれいにまとまっている人もたくさんいますけど、「うまいな」という感想で止まっちゃうことも多いんです。それに対して、Yunomiさんは色が強いし、パッションの感じられる楽曲が多いと思っていて、興味がありました。作曲歴はYunomiさんの方が長かったので、一緒にやって勉強したいという気持ちもあったんです。それで「一緒にやりたいです」と連絡したら、けっこう前から私のことを知ってくれていたみたいで、コラボが実現しました。

── 初めてのワンマンライブは、これまでのライブとは何が違うと感じたでしょうか? ワンマンライブを終えて、気持ちの変化はありましたか?

TORIENA:イベントなどのライブは大きな会話だなと思います。オーディエンスがいて、こっちがプレイヤーで、だから校長先生の話みたいというか、顔を見れば、どういうのがほしいのかわかるんです。「ブチ上がりたいんだろうな、次の曲くらいで」とか、「ちょっと疲れたから休憩したいのかな」とか、そういうのが雰囲気でわかります。会話みたいなんですよね。だから、独りよがりにならないようにはしています。

ライブはプレイヤーだけでは成立しません。みんなが聴きたいものをなんとなくの雰囲気で察して選んで、客席が盛り上がってという作品だと思っているので、こうゆう曲順じゃないとダメだとかは、ブッキング系のライブやイベントのときはあまり考えてないですね。

でも、ワンマンの時は意識が変わりました。初めてセットリストを組んで、完全にそれに沿った流れでライブをしたんです。なるべくがっちり世界観などを固めました。90分のちゃんとしたコース料理みたいな感じです。最初から締めまでをちゃんと決めて、みんなで作りあげたのは初めてだったのですが、演劇に近いなって思いました。ひとつのショーを見ている感じというか、ワンマンライブは別物だなって思いましたし、ワンマンの時はセットリストを決めた方がいいなと感じました。

「こだわりから脱却することで進化する」チップチューンアーティストのTORIENAにインタビュー 4

終わったときはとにかく感慨深かったです。ライブを始めたころって、お客さんが20人もいなかったですからね。一区切りというか、ここからだなという気持ちになりましたし、5年間やってきましたけど、また新しいスタートラインだなと思いました。

あとは、改めて自分のファンがたくさん来てくれたのを目の当たりにして、「私にはこの人たちがいるんだ」という自覚が持てました。今まではエゴで、自分がやりたいからやるみたいなことが多かったんです。そういう気持ちもすごく大事だと思ってはいるんですけど、その気持ちは持ちつつも、TORIENAは私だけのものではないんだから責任を持とうとも感じました。

もともとそういう責任感はあるにはあったんですけど、大きくなった気がします。自分のためだけのものではなく誰かの生活の一部になっているなら、なるべく輝いていたいなと思います。

自分の精神状態じゃないですけど、考え方とかもこの5年間でインディーズでできることをひとまわりした感じがするんですよね。いろいろ考えまくって、悩みまくって、すごくもがいていたんですけど、ちゃんと泳げるようになってきた気がします。5年って、時間がかかったなぁとも思いますけど、ちゃんと泳げるくらいになってきた今が、ワンマンライブをするベストなタイミングだったと思いました。だからこそ、ひとつの区切りという気持ちです。

TORIENAという総合芸術を残していきたい。

── 今後の構想など、具体的に思い描いていることはあるのでしょうか?

TORIENA: やり始めた時は考えてなかったんですけど、最近は「TORIENA」っていう総合芸術にしたいなって考えています。ひとつのことをキレイにやって、それ以外を他の人に任せていいというわけではなくて、なるべく自分がちゃんとディレクションしたいというか、プロデュースしていきたいという気持ちが強いです。そのときできる完成系というか、限界ギリギリまで頑張ったものをなるべく残していきたいと思っています。

TORIENAという活動が終わった時に、ファンの方とか私以外の人が、TORIENAのアルバムとか、作ってきたものとか、インタビューとかをつまんで拾いあげていった時に、最後の作品まで見て「これがTORIENAだったんだな」みたいに思ってもらえるような。それまでは全然完成していないので、今も未完成で途中だと思っていますけど、今出せる限界値をたたき出して、ものとして残していこうとしています。

具体的なことは まだあんまり言えないんですけど、ざっくり言うと、もっとマスに向けて発信していこうかなと。もともとは独りよがりからはじまったんですけど、続けていくうちにみんなで楽しみたい気持ちが芽生えてきて、その気持ちがもう少しで開花すると思いますし、ひとりだとできないことがこれからどんどんできるんじゃないかなって期待しています。今までよりもっとエンターテインメント性を高くしていくつもりです。

だから今がチャンスだと思います。今から見ていたら、TORIENAを語れるようになるんじゃないですかね。

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ワンマンライブ後、どのような活動を展開していくのかが気になるTORIENAさんですが、普段は制作などで自宅にこもっていることが多いといことで、先日フィットネスバイク「Me-over」に試乗してもらいました。彼女はもともと運動が好きではないそうですが……

「こだわりから脱却することで進化する」チップチューンアーティストのTORIENAにインタビュー 5

── Me-moverを体験してみていかがでしたか?

TORIENA: 最近になって、ちょっと運動しないとまずいかなって思っていたんですね。そういうタイミングだったので、いい機会でした。今回乗ってみて、そこまでしんどくないし、運動らしい運動という感じでもなかったので、気軽に体を動かせるなと思いました。

コツを掴むまではふらつきますし、大きいのでちょっと車通りとかが気になるところはあります。1時間くらい乗りましたけど、結構暑くなりました。若干、筋肉が痛いというか。

── Me-moverをどんなシーンで使ってみたいでしょうか?

TORIENA: キャンプ場とか広い場所で遊ぶのがいちばん合っている気がします。楽しそうですよね。川沿いとかも、サイクリング感があっていいんじゃないかなと思いました。都会で使うとなると人通りとか車が多い場所では気を使わないとって感じましたけど、そうでなければ気軽ですよね。近所のコンビニとかへ行くときとかに良さそうかなと思います。

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TORIENAさんにもお試しいただいたMe-moverは執筆時現在、目標の525%を超える支援が集まっています。プロジェクト終了は本日3月24日(金)20時。残りわずかです!

定価から20%引きの19万8000円で支援できる最後のチャンスです!

Me-moverの詳細、支援については以下のリンクをご参照ください。

>>「Me-mover」プロジェクトページ

photo: geneTV, machi-ya
source: machi-ya, TORIENAオフィシャルサイト, Bandcamp, Soundcloud 1, 2, YouTube1, 2, Yunomiオフィシャルサイト, m7kenjiオフィシャルサイト

(撮影: geneTV, 取材・執筆: machi-ya)

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