「VR(バーチャル・リアリティ)」特集

「PlayStation VR」に加え、Oculusの「Rift」やHTCの「Vive」、Microsoftの「HoloLens」など、群雄割拠のていをなすVR(バーチャル・リアリティ)の世界へいざなうコンテンツを集めました。

WOW!が飛び出すソニー遊びの工場「THE WOW FACTORY」潜入レポート

テキサス州オースティンで開催中のテクノロジーと音楽、映画の祭典「SXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)」。大企業からスタートアップまでさまざまなバックグラウンドを持った人たちが、アイデアやインスピレーションを求めて集まります。

日本からもいくつかの企業やチームが参加していますが、ソニーもそのひとつ。2016年は「Future Lab Program」を出展し、最新のテクノロジーを使ったプロトタイプを披露しましたが、今年の「The WOW Factory」ではなんと、「古倉庫を改造している(しかも電気配線を引くところからやっている)」らしいのです。

気になっていたところにソニーよりご招待いただきまして、さっそく潜入してきました!

WOW!が飛び出すソニー遊びの工場「THE WOW FACTORY」潜入レポート2

2016年のホワイトな内装とは打って変わって、カラフルでポップなデザイン

新しいVRのかたち:音

※音量が大きいので注意してください

まず体験したのは「Music Visualizer & Cyber Gym」(ミュージックビジュアライザー&サイバージム)。半球ドーム型スクリーンの下に座ると、音楽に合わせて投影されるさまざまなパターンが流れていきます。回転椅子を動かすと映像が連動して動きます。ヘッドマウントディスプレイ(HMD)を使ったVRでの中で首を動かすような要領ですね。

背後から見ているといまいち感覚が想像できないのですが、座っている人の視点だとこうです。

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眼前に迫りくる無数の光線! 「音楽のどの要素を分析してビジュアルを生成しているのかはヒミツ」とのことでしたが、このときはEDMがかかっていました。

音楽のビジュアライゼーションと言っても、ミュージックビデオが楽曲の持つストーリーを拡張するとすれば、こちらはの持つ威力そのものをダイレクトに伝えます。視界を取り囲んで明滅するパターンに同期して、自分がより深く音の世界に入り込んでいくような、新しい音楽の体験でした。

VR=360°映像というイメージがよくありますが、重要なのは人が体験に没入できること。そういう意味で「ミュージックビジュアライザー&サイバージム」は、新しいVRへのアプローチかもしれません。FPSゲームの世界に入り込んで戦いまくるのも楽しいですが、現実でもぼーっとしがちな私には、何時間もぼーっと感じていられるVRっていうのもなかなか気持ちのいい「もうひとつの現実」だと思いましたよ。

なお、1秒もジッとしてられない!という忙しない現代人のため(かどうかはわかりませんが)、「サイバージム」バージョンでは、椅子の代わりにバイクが設置されます。

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新しいVRのかたち:触覚

また、ハプティクス(触覚)テクノロジーを使ってVRへの新しいアプローチを試していたのが、「“Road to Raccoon City” バイオハザード: ザ・ファイナル」。映画『バイオハザード: ザ・ファイナル』のショートゲーム体験です。

3Dグラスを掛けハプティクス用のベストを着て、ガンコントローラーを持ったらゲームスタート。スクリーンからこっちに飛び出してこようとするゾンビたちをどんどん撃っていきます。

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順調順調…と思っていたら、何回撃ってもぜんぜん死なない人がいるんですけど! こっち来る! ちょっと! あー!

鼻の先まで迫ってきたゾンビに身体を食べられてしまいました。人肉を噛み切る「ガプッ」という音が気持ち悪いうえに、映像に合わせてベストの前面が絶妙に振動し「ああ…いま内臓が食べられている…」となんとも不快な感覚に襲われます。初めて食べられましたが、本当にゾンビには食べられたくないなと思いました。最後にアリスが「あなたが感染するのを防げなくてごめんね」と謝ってくれて体験終了。世の中仕方ないこともあるよね。

映像は3Dグラスだったので、完全にHMDで視界を覆ってしまうのに比べると刺激は弱め。ただハプティクスの作り出す"現実感”は予想以上で、これにHMDの映像がついたら怖くて耐えられない人もいるんじゃないでしょうか…。

現実に染み出すデジタル「T」

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デスクの上に取り付けられたこちらのプロジェクター。Future Lab Programの「T」と呼ばれるシステムです。何ができるかというと…。

家の設計をしています、指ひとつで。

左側にある、L字の板の積み重ねが家です。1枚1枚がそれぞれの階を表していて、3枚積むと3階のフロア図が投影され、1枚取り除くとプロジェクターが認識して2階のフロア図に切り替わります。フロア図に指を置くと、右側の板にそこに立った視点の家の中が映ります。Googleストリートビューのような仕組みですね。

もうちょっとダイニング広くしたいな〜と思ったら指で壁を引っ張ることもできますし、手を宙にかざすことで日当たりをシミュレーションできます。また庭に木が欲しいなと思ったら、トランプの箱を置いて代用。

「T」プロジェクターはテーブルに置かれた物体の形や位置、高さ(プロジェクターからの距離)をセンシングすることで、指や物体の動きとインタラクションをとっています。

仕組みを明かされても、その滑らかなデモには感動してしまいます。何がすごいってこれ、タブレットなどのタッチディスプレイでやっていることじゃないんです。普通のテーブルの上で起こっているんです。

すべての平面を楽器にする「Xperia Touch」

また、インタラクションできるプロジェクターといえばCES2017で発表されたばかりの「Xperia Touch」。こちらも投影されたものを指で触れます。

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デモでは楽器を演奏。プロジェクターの前でテーブルに円を描くと、タップで音を鳴らせるドラムが出現! 描いた円の大きさによって音の高さが変わります。また左から右へ線を引くとキーボードが現れました。

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Xperia Touch DJも実演されていました

見えすぎる「超知覚鬼ごっこ」

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Super(超)+Perception(知覚)で「Superception」と名付けられたこちらは、視界ごちゃまぜ鬼ごっこ。4人で迷路の中に入り、HMDで全員の見ている視界の映像を共有しながら鬼ごっこをします。

鬼の視界がわかるなら余裕で逃げられる!と思ってましたが、いざ始まってみると大混乱。他人の視界につられて迷路の壁にぶつかってしまったり、鬼のいるほうへ自分から行ってしまったりとなかなか苦戦しました。慣れれば、人間も4つの視覚をうまく使いこなせるようになるんでしょうか…?

スポーツをもっとゲームにする

同じく身体を使って遊ぶスポーツが、こちらの『スパイダーマン:ホームカミング』とコラボレーションしたイマーシブ・プロジェクションマッピング・ボルダリング。

「クモの巣」になったホールド(石)を使って早く登ればハイスコア。ちゃんとクモの巣が投影されたところを掴んだかどうかは、手首の赤外線センサーで判定しています。

将来的にはボルダリングしながら「敵と戦う」イベントなど、もっとゲーム要素も加えていきたいそうですよ。

「モーションソニック」は新しい楽器だ

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2016年に発表された、身体の動きを音に変換するデバイス「モーションソニック」。ダンスやスポーツの動きを音に変換したり、パフォーマンスに動きに連動した音の演出を取り入れることのできるリストバンドのデバイスです。

3つのマイクセンサーで動いたときに発生する空気の流れ(音)を音に変換したり、また内部の6軸センサーを使って腕の角度や動かし方で音楽を操作したりすることができます。

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performance: s**t kingz

The WOW Factoryでは、s**t kingzによる、モーションソニックを使ったステージパフォーマンスも披露されました。

それぞれのモーションソニックに兵士や魔法使い、ヒーラーの効果音を割り振ってRPG風にしたり、ギター、ベース、トランペット、ドラムとバンド編成にしたパフォーマンスなど、会場からは彼らのコミカルな演出に何度も笑いが起き、最後のダンスでは拍手喝采でした。ステージ全編は上の動画で見られます。

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全13の展示にステージパフォーマンスと、盛りだくさんのソニー「The WOW Factory」。その名のとおり、デモを見たり体験していると何度も「ワオ!」という瞬間がありました。

特に「モーションソニック」のステージでは、あまりにs**t kingzがこのテクノロジーをうまく自分たちのパフォーマンスに溶け込ませていたせいか、途中からその存在を特別意識しなくなっていることに気がつきました。思い返せば他のデモだって、スペック表なんかどこにも貼り出されてはいなくて、「こんな最先端テクノロジーを使ってるんだ」というよりも先に、楽しいとか怖いとか驚いたといった感動があったんです。

もちろんその感動は、これまで研究開発されてきた最先端のテクノロジーに支えられています。テクノロジーの姿をうまく隠したテクノロジーたち。これが、WOW!の飛び出す「遊び」を作るヒミツかもしれません。

ソニーが左右分離型の純正ワイヤレスイヤホンをCES 2017でチラ見せ

photo: ギズモード・ジャパン編集部
source: SXSW, ソニー, s**t kingz, YouTube 1, 2, 3, 4, 6

(斎藤真琴)