小室哲哉さんが語る、テレビ文化の未来「作り手に求められるのはDJの感性」【TK Future Lab】

小室哲哉さんが語る、テレビ文化の未来「作り手に求められるのはDJの感性」【TK Future Lab】 1

最近、皆さんテレビ見ていますか?

動画全盛時代と言われる現代。テレビの存在はこれからどうなるのか? 放送は? そして、映像のこれからとは? 何気なく観ているテレビの出演者の方々はどう思っているのか、日本を代表するアーティストでプロデューサー、そしてテクノロジーとエンターテインメントの仕掛け人である小室哲哉さんに伺ってきました。

これまで「Internet of Things(IoT)」や「ウェアラブルデバイス」をテーマにしてきました、小室さんと、音楽雑誌「ローリングストーン日本版」とギズモード・ジャパンによるジョイントメディア連載企画「TK Future Lab」。まだ見えないテクノロジーの変革と将来像を、エンターテインメントとテクノロジーの交差する場で生きている小室さんの視点で見てみようとする本企画がピックアップした今回のテーマは、「テレビ」。

音楽番組は地上波からめっきり少なくなってしまいました。そしてYouTubeやFacebookで流れてくる動画コンテンツや、NetflixやHulu、Amazon Prime、AbemaTVのオリジナル番組をiPhoneやPCで視る時代が本格到来。ご自身もAbemaTVで音楽番組「TK MUSIC FRESH by AWA」をレギュラーで持っている小室さんは、今のテレビやネット配信を含めた「動画時代」をどう考えているか、スタジオを訪ねました。

プロフィール
小室哲哉 TETSUYA KOMURO

1958年、東京都生まれ。音楽プロデューサー、作詞家、作曲家、編曲家。キーボーディスト、シンセサイザープログラマー、ミキシングエンジニア、DJ。83年にTM NETWORKを結成以降、自身の活動と平行して数々のアーティストをプロデュースし、多くのミリオンセラーを世に送り出してきた。2014年には、30周年を迎えたTM NETWORKのライブツアーを決行。翌2015年にはglobeデビュー20周年として、セルフリプロダクトアルバム『Remode1』、2016年8月に続編『Remode 2』を発売。2017年3月15日には3年ぶりのソロアルバム『Tetsuya Komuro JOBS#1』をリリース。

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今は「サブスクTV」の観点

― 動画のネット配信が主流になってきた今の時代を、テレビが全盛期だった時代と比べて、その違いや潮流をクリエイターの視点でどのように感じていますか?

小室さん:僕の経験から言うと、全てのガジェットでもデバイスでも何でもいいですけれど、新しい機材やテクノロジーが生まれる時、まず実験に使われるのは音楽なんだよね。データの容量だったり、尺の長さだったり、音は比較的気軽に扱えると思われることが多いです。

レコードでもカセットでも、新しいメディアの形が生まれる時、まず音楽で実験されてきました。音楽で成功すると、「なら、画像でも、映像でも大丈夫じゃないか」と考えが広がって、最終的に番組も大丈夫じゃないかという発想にたどり着くと思うんです。

― その流れが動画配信で起きていると?

小室さん:最初「サブスクリプション」と言えば、音楽を連想していたのに、今は「サブスクTV」の観点で、動画のサブスクサービスがトレンドになっていますよね。ミュージシャンから見ると、音楽が最初の実験に使われるわけで、そこからコンテンツの利用法も生まれてきた。

アーティストや、アーティストに関わる人間が、新しいテクノロジーに対して賛同したり、コンテンツを守るべく抵抗するから、著作権利用や売上分配やコピーした時の規制みたいな議論を新しいサービスが立ち上がるたびにして、法整備をしているんですね。その問題が一段落ついてから、映像の世界に展開している。

今の動画配信サービスを見ても、過去にiTunesみたいなダウンロードストアや、音楽ストリーミングで、権利問題や広告収入や成長の課題がクリアになっていることを受けてから始まっている印象はありますね。

ミュージシャンから見たら、かっこよく言えば、時代の先端を行く存在なんだけれど、実は実験にされている(笑)。だから、今は全てに「すばらしいですね」と同意はできないですよね。iTunesストアが日本に来た時は、音楽は先進的だなと思ったことはありましたけれど、最近は「音楽はまた使われるのか…」という考えが先に来てしまいますね(笑)。

― 視聴者のニーズもどんどん変化していますが、ネット時代だけれど、まだまだアナログ的な要素も求められているところがあるように感じます。

小室さん:ずっと前から話していますが、究極な話をすると、人は手では綺麗な円は描けない。だから、アナログなデバイスのコンパスが今でも有効な手段なんですよ。現代は、スパコンやテクノロジーが進化して、限りなく完成された円をシミュレーションすることは可能ですけれど、アナログなデバイスを求める人が大抵一般的じゃないですか。

つまり、まるでアナログデバイスのような、次世代のデジタルデバイスが出てこない限りは、次の時代は始まらないと思うんです。これは僕の極論ですけど。

今後は、もっとテクノロジーが進化して、小型化されたり、もしかしたら凄い計算処理ができるスマホが登場するかもしれない。でも、気軽さや便利さという点では、アナログなデバイスの方が便利な場合もまだ多いし、今存在するデジタルデバイスだけで補うことはできないと思うんです。アナログの手法を応用して、デジタルに移行することや、今のソーシャルメディアの時代に当てはめるやり方には全く違和感はなくて、みんなはその方がやっぱり入りやすいんだと思う。

今のテレビの作り方は、DJに近いかもしれない

― 2017年1月に出演されていたマツコ・デラックスさんの番組(『マツコの知らない世界』)を拝見していた時、テレビで見ている人がネットで反応してくれたり、ブログを書いたりする人たちが次々と現れて、テレビとネットは本当に相性が良いなあと思ったんです。

小室さん:文字だけでは表現できない、表情だったり話し方だったり、それを見ながら、SNSで議論されていくみたいな流れは一つの手法として面白いですね。

そこで一番必要なのは、話を引き出してくれる人と、上手く話せる人ですよ。全てのアーティストに当てはまるかというと、決してそうではないし、全ての音楽番組がその形式で成り立っているというわけでもないですけれど、この2つが両立していると視る人が面白いと思ってくれる気がします。

― 小室さんがMCをされているAbemaTVの番組の編集会議は、どうですか?

小室さん:回数を数えるごと、編集会議でも意見は言うようになってきましたね。視聴者は番組を見ながらソーシャルメディアで何かしらリアルタイムに語りたいのが、今の視聴体験。だとすれば、いろいろな意見や同意、反対意見を、より良い方向に軌道修正して番組に取り込んでいくのが、今の番組の作り方じゃないかな。

それは、リアルタイムでお客さんの反応を見ているDJに近いかもしれないですね。もの凄くRTされたとか、反応が低いとか、Twitterのトレンドに入ったとか。トレンドに入るための話題作りや構成を作り手側がどれだけ用意できるか。ですので、今は作り手側の手腕が凄く問われる時代だと思いますよ。番組の最中に「今トレンドに入ったから、この部分を引き延ばそう」みたいな構成が、今の時代はもっと起きてもいいはずで、そこで問われるのが、実現するための番組プロデューサーの真価です。

番組は、視聴率に加えて、視聴者に「刺さらない」といけない。特に今は、狙っているマーケットに刺さるためには、プロデューサーの手腕がどれだけ発揮できるかがキーになる気がします。

音楽番組は減ったけれど、それは欧米に日本が似てきたからじゃないかな

― 次の時代のテレビ文化はどう進化していくと思われますか?

小室さん:ディスカバリーチャンネルとかヒストリーチャンネルとか、好きなものは録って観ていて気付くのは、いろいろ実験はしているけれど、デイリーだったりウィークリーだったりマンスリーといった形式に多くの番組が追われているところは、今までとあまり変わっていない気がしますね。フォーマットが決まってしまうと、視聴者はマンネリ気味になってきたと感じてしまうし。毎週ごとに先週よりも革新的な内容が出せるわけでもないです。

ですので、1クールとか1区切りで余裕をもってじっくり作り込む制作チームと、リアルタイムやデイリーのようにその日に起きている視聴者やユーザーの反応を追って対応していくチームと、体制が2分化して良いと思うんですね。

日本の映画でも、じっくり時間をかけて内容を作り込む制作手法も行われていたりするわけで、だから成功につながっている理由の一つと僕は思っているんです。まだまだ厳しい大変な状況だろうけれど、それなりに時間を費やして、ちゃんと発表する作品と、あとは(制作過程なり予告編なり)ユーザーが喜んでくれるものを瞬間単位で出していく、2極化の流れがあって。これが混ざっていると中途半端なモノになって、3カ月(=1クール)で視聴率をどうにかキープしなければならない使命感だけに追われてしまうのは、あまりにも可哀想。

広告も代理店もだんだんと変わっていって、3カ月ではなくて、1年や2年みたいな長い期間で結果を見ようとしたり、1時間の中でもっと細かく見るとか、今の基準よりも分かれてもいいと思うんですよね。

― サッカーみたいな年間スポンサーをしたり、試合ごとのスポンサーをしたり。

小室さん:もしかしたらハーフタイムごとみたいに、前半と後半でスポンサーが変わるかもしれない。後半必ず追いつくチームなので、みたいにね(笑)。

それから、これは僕の中でのいい加減なマーケティングなんだけれど、よくテレビで見ましたとか、この前番組でてましたねって言われる時は、全国ネットで10%超えているんですよ。下手したら13、15、瞬間なら17%に行ったりもする。ということは、1000万人以上がリアルタイムで見ているわけですよね。1000万人以上が視る番組になれば、みんなが「視てますよ」という物になっていく。それは今のネットでは追いつかなくて。

僕がやっているAbemaTVの番組も、最高でも50万や80万人とか瞬間でそれくらい。(テレビと比べると)時にはゼロが2つ違う。なので、それだけ地上波の威力は未だに確実にあるなと思いますね。確実に人を動かすには、何十万人じゃ駄目なんだなと思います。

(第51回スーパーボウル放送時のツイート瞬間風速の推移 via Twitter)

― いつか逆転すると思いますか?

小室さん:日本単体じゃ逆転しないと思いますね。アメリカで逆転するんじゃないかと話があっても、それは北米だったりアメリカ大陸だったり、エリアという考えで、決して単一の国だけの話ではないことがありますね。

日本くらいじゃないのかな。音楽大国という大きな市場があって、テレビに全国的なプロモーション効果があった国は。今、日本の地上波で音楽番組が減ったよね、と言われても、僕はあまり違和感は感じないんですよ。そこは、今まで欧米で主流だった音楽プロモーションのやり方に日本が似てきた点じゃないですか。日本の若い子たちは、欧米と同じようなことをやればいいと思っているんじゃないかな。

だから「エリア」だと思います。アジアというエリアで考えると、僕は逆転は十分にあり得ると思いますね。

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― テレビの持っている一つの役割は、いつの時代も「公共性」じゃないかと思うんですけれど、今後はどうなっていくと思いますか? 例えば動画サービスがその代わりとなり得ると思いますか?

小室さん:今の時代において、公共性の役割は地上波ならではの役割だと思います。でも、それだけにお金も時間もアイデアも投資してほしいということはあるんですよね。瞬間的な情報の伝達の手法、それから情報収集力、そういうものはお金が無いとできない。

最近、プライムタイムとか夜の時間帯でも、映像に「視聴者提供」って出てくることが多いなあと思っているんですよ。それだけ、その場に「行けてない」ということじゃないですか。いい絵が撮れているから、じゃあ借りちゃおうと。これって良いことなのかどうなのか、と僕は思っていて。瞬間的な映像はあった方がいいと思う。だけど、海外のCNNやBBC、ABC、アルジャジーラにしても、速攻で行って凄い絵を撮るじゃないですか。あの力は、日本のテレビ局でもやるべきだと思いますよ(笑)。

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小室哲哉さんが語る、テレビ文化の未来「作り手に求められるのはDJの感性」【TK Future Lab】 2

リリース情報

Tetsuya Komuro『JOBS#1』
2017年3月15日(水)リリース
<初回生産限定>2CD+DVD+ブックレット¥6,800(税別)
<通常>2CD only ¥3,800(税別)

収録内容:
[CD 1]
M01: Can You Celebrate? Art Mix
M02: RAISE UR HAND
M03: Have Dreams! tk piano mix / Tetsuya Komuro × Tsunku♂ feat. May J.
※NHKワールド「J-MELO」2016年度オープニングテーマ
M04: #RUN / 小室哲哉 feat. 神田沙也加(TRUSTRICK) & tofubeats
※競馬エンターテインメントサイト「Umabi」テーマソング
M05: maze
M06: HERE WITHOUT YOU
M07: rêver / feat. 大森靖子
※ファッションブランド「SEPT PREMIÈRES by Kenzo Takada」
TVCMソング
M08: a new lease on life
※J SPORTS 15/16イングランドプレミアリーグ中継エンディングテーマ
M09: BLUE OCEAN
※TFM『blue ocean』テーマソング

[CD 2]
M01: one more run
※エイベックス・チャレンジド・アスリート PR映像「欲望に翼を」高桑早生編
M02: Song for ALPINE SKI WORLD CUP 2016
※アウディFISアルペンスキーワールドカップ2016湯沢苗場大会
公式テーマソング
M03: STILL BREATHING
M04: Sound of Scalar Fields additional piano mix
M05: 22世紀への架け橋 / 小室哲哉vsヒャダイン
M06: NOW1#2017
※フジテレビ「みんなのKEIBA」テーマ曲

[DVD]
内容:
01: amplification
02: amplification (VJ version)

[ブックレット]
内容:インタビュー&PHOTO (104ページ)

URL
特設サイトAmazoniTunes

Photo by TAWARA
Collaboration: ローリングストーン日本版
Source: 小室哲哉 公式サイトTwitterFacebook

(Yohei Kogami)