ガン関係の学術誌、論文107本を撤回。ニセの査読にだまされる

ガン関係の学術誌、論文107本を撤回。ニセの査読にだまされる

論文書いた人が、査読も自作自演。

2014年に起きたSTAP細胞をめぐるてんやわんやでは、大手の学術誌に掲載された論文だって必ずしも信用できないってことがわかりました。STAPの一件に限らず、とある研究によると、科学論文の0.01%程度で捏造などの不正が発見されているようです。つまり、論文が1万本あったらうち1本がデタラメという割合です。(関連記事:世界的に科学論文の撤回が増えている。その理由

ただたいていの学術誌にはその分野の専門家が論文を客観的に評価する「査読」という仕組みがあって、内容に不自然な部分があればそこで指摘されることもあります。でも今回、腫瘍関係の学術誌「Tumor Biology」がニセの査読者(実は論文を書いた本人)にだまされて107本ものガセ論文を掲載していたことが発覚しました。世界の論文撤回を監視するブログRetraction Watchには次のようにあります。

ニセの査読を提出するには、問題の人物(たいていは論文の著者)は、論文査読者として外部の専門家をでっち上げるか、実在の研究者を提案するかして、いずれの場合もニセのメールアドレスを提示する。そのメールアドレスは問題の人物につながっており、その論文には間違いなく素晴らしいレビューが与えられる。この件に関して、2016年末まで「Tumor Biology」の出版元であったSpringer(シュプリンガー)社は、実在する研究者の名前にニセのメールアドレスが付与された査読があったことが調査によってわかったと言っている。論文著者はサードパーティの編集サービスを利用してレビューを作成した可能性がある。

つまり論文書いた人が、「この人に査読依頼してね」ってシュプリンガー社に言ってメールアドレスを渡したんだけど、その依頼メールは実際は論文著者本人かその関係者に送られて、自分の論文に「素晴らしい研究成果だ!」とか太鼓判を押しまくる、という段取りだったんですね。

Tumor Biologyは世界で213誌ある腫瘍関係の学術誌では104番めと中堅どころですが、それだって影響力がないわけではありません。彼らは今回107件のガセ論文を撤回しましたが、それはひとつの学術誌が1度に撤回する論文本数としては史上最多となります。Tumor Biologyでは2016年にも論文25本を撤回していて、その後Tumor Biologyとシュプリンガーの契約が終了、現在はSAGE社が出版元となっています。

大量の論文撤回が発生しているのは、マイナーな学術誌だけじゃありません。2014年にはシュプリンガーとIEEEで合計120本以上の論文が撤回されたんですが、その理由がめちゃくちゃです。論文自体がコンピュータの自動生成によるまったくのデタラメで、中身が空っぽだったんです。しかもそのうちシュプリンガーのものは、ちゃんと査読を受けていたことがわかっています。

こうなると、査読制度ってちゃんと機能してないんじゃないかって感じがしてきます。それに、ある学術誌に出してネガティブな査読とか面倒なツッコミを受けたら、無視して別の学術誌に提出し直すことでめでたく掲載となることもあります。さらに中には査読なしで、掲載料だけとって論文を載せる学術誌もあります。

ちなみにSAGEはシュプリンガーからTumor Biologyを引き継ぐにあたり、この撤回問題も知っていたそうです。彼らはTumor Biologyだけでなく、同社が出している他の学術誌も含めて、査読プロセスを改革したいと言っています。

だって、ひとつの学術誌で107本というのはかなりの割合です。特にひどかったのは2014年1月に発行された号で、撤回リストによれば110本の記事のうち論文43本が今回の撤回対象と、半分近くがデタラメだったことになります。

さらに気になるのは、これがもしかしたら氷山の一角で、他の学術誌も同じ手口でだまされてないかってことですね…。

top omage: Springer Tumor Biology
source: Springer via Retraction Watch

Ryan F. Mandelbaum - Gizmodo US[原文
(福田ミホ)

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