SpaceXの火星旅行のお値段は2,000万円! 命がけの旅は安いか高いか?

SpaceXの火星旅行のお値段は2,000万円! 命がけの旅は安いか高いか?

SpaceX創業者のイーロン・マスク氏は、あなたを火星に連れて行ってあげたいと思っていますが、もちろんタダじゃありません。再利用ロケットの打ち上げと回収に成功したSpaceXは、火星オタクや億万長者たちを赤い惑星に引きつけています。

火星行きのチケットは20万ドル

「みんな火星行きのチケットのことを考えますよね!」SpaceXの社長(COO)グウィン・ショットウェル氏は、第33回スペース・シンポジウムで聴衆に呼びかけた、とInverseはレポートしています。「すばらしい将来性を秘めている再利用ロケットの可能性」を売り込んでいるようです。

マスク氏は昨年9月、メキシコ・グアダラハラの第67回国際宇宙航空会議で、SpaceXが主導する火星旅行の値段は20万ドル(約2,200万円)と初めて発表しました。この会議でマスク氏は、人類を「多惑星に住める種」とする計画について討論しています。この計画は、SpaceXが再利用可能なロケットで打ち上げコストを下げ、火星の観光客が手頃な値段で旅行できるかどうかにかかっています。

しかし、再利用可能なロケットであっても、人を火星に送るには、おそらく20万ドルでは済みそうにありません。ミシガン大学航空宇宙工学科の教授Ella Atkins(エラ・アトキンス)氏は、特に着陸後に生き残ることを考えると、この数字は疑わしいとみています。

ロケットと重力の基本的な分析から、人が生き残るためにどれくらい必要か計算し直すと、20万ドルじゃ足りないだろう。しかし、火星に行くには100万ドルかかると言えば、実際どれだけの人がついていくか。

Atkins氏は米Gizmodoに対し、このように語りました。

SpaceX 火星

夢膨らます火星オタク

たしかに20万ドルなら望みがあります。Atkins氏によると、20年か30年お金を貯めればチケットに手が届く、と夢膨らます火星オタクがいるそうです。

SpaceXは人々の支持を集めて議会にプレッシャーをかけたいんだろうが、「ヨシッ! 火星に億万長者を連れてくぞ!」と気勢をあげても、億万長者でもなんでもない有権者を抱える議員たちは、SpaceXに大金を出そうとは思わないだろう

「死ぬ覚悟はある?」

またAtkins氏は、火星への旅にかかる「別のコスト」を指摘しました。20万ドルの値札よりもはるかに高くつくかもしれないもの、それはあなたの命。 「宇宙旅行の危険性がどれほど高いか、人々はわかっているんだろうか」とAtkins氏はいぶかしんでいます。

またマスク氏は、特に最初のミッションでは、夢のために死ぬ覚悟が必要だ、とファンに警告しています。彼はグアダラハラの会議でこのように聴衆に言い放ちました。

死ぬ覚悟はある? それなら候補に残れるよ。最初のミッションでは、死ぬ確率はかなり高い

アポロ13号やコロンビア号の悲劇のような、突発的な大惨事の可能性のほかに、火星への1年間の旅行そのものが健康に深刻な影響を与える恐れがあります。双子の宇宙飛行士、スコットとマーク・ケリーを分析したNASAの研究「Twin Study」の結果、スコット・ケリーが宇宙で過ごした1年間で、遺伝子レベルにおよぶ変化が発見されました。

また別の最近の研究では、感覚、知覚、感情その他の重要な機能を担う宇宙飛行士の脳の灰白質の量が、短期・長期の宇宙飛行の結果、いくつかの領域にわたって変動したこともわかっています。科学者は、これらの変化が健康に与える影響を解明しようとしていますが、地球を離れる時間が長引くほど、骨量減少、筋肉疲労、視力の変化、および有害な放射線の被曝をもたらすことは定説となっています。

もっと読む:宇宙空間で脳や遺伝子はどう変化? NASAや大学から意外な研究結果

火星への旅は片道旅行になるかもしれない、あるいは人の生態を根本的に改造してしまうような劇的な影響を健康に及ぼすかもしれないリスクについて、SpaceXがどうやって火星の観光客に覚悟させるのか明らかではありません。 この問題についてすでにマスク氏は「バカらしい」と一蹴しています。「深宇宙や地球の軌道に長時間いるよりも、火星のほうがずっとマシなんだぞ」と。

生還する確率を現実的に考えるべき

さらにAtkins氏は、厳しい現実を突きつけます。

探検家精神に満ちた宇宙飛行士はともかく、生きて帰ってくることを期待する市井の人々に売り込むのなら、一般人が火星から生還する確率をもっと現実的に考えるべきだ。しかし、その確率はかなり小さいと思う

宇宙が危険であることは、ある程度わかっています。宇宙船がどんなにすごい設計だろうと、宇宙に金属のカタマリを放つこと自体、そもそも狂ったように思えます。 火星ツアーに大金を出せる人はどうぞ行ってらっしゃい。 しかし、「命がけ」と正直に伝えず、庶民の退職金を火星に注ぎ込ませる権利はだれにもありません。

「何が何でもやりたい人は常にいるから、社会に誠実な対応が求められる」と、良識に訴えるAtkins氏。火星の夢が膨らむ今だからこそ、ちょっと頭を冷やして考えてみるときかも。

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image: SpaceX / Flickr 1, 2
source: Inverse
reference: Gizmodo US 1, 2

Rae Paoletta - Gizmodo US[原文
(Glycine)

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