映画『ローガン』のジェームズ・マンゴールド監督にインタビュー:「登場人物がストーリーの流れをべちゃくちゃ説明する必要はない」

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Image: (C)2017Twentieth Century Fox Film Corporation

ヒュー・ジャックマンが演じる、ヒーローチーム「Xメン」の生ける兵器ウルヴァリン(通称:ローガン)の引退作となる映画『LOGAN/ローガン』。

今回はその最後を飾るにふさわしい、X-MEN映画最高の傑作を作り上げた、ジェームズ・マンゴールド監督にインタビューして参りました。

本作のテーマから制作における苦労、そして凄まじい演技を見せる、若干11歳の名優ダフネ・キーンを起用した経緯など、たっぷり語っていただいています。

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Photo: ギズモード・ジャパン編集部
ジェームズ・マンゴールド監督

――監督は主演のヒュー・ジャックマンとは2001年の『ニューヨークの恋人』からの付き合いですが、初めて出会った時から、彼はどのように変わったと感じているでしょうか?

ジェームズ・マンゴールド(以下、マンゴールド):出会った頃から今まで、彼は友人としても本当にすてきな人物で居続けていますが、役者としても成長を続けていると思います。

すでに最高の俳優のひとりですが、決して休むことなく、自分の限界を超えて、さらなる高みを目指していますね。そして、今回の映画での演技は、そんな彼のキャリアの中でも最高のものだと思います。

――この作品でヒュー・ジャックマンの演じるウルヴァリンは最後にしようと決めたのは誰のアイディアなのでしょうか?

マンゴールドヒューがもうこれ以上はやりたくないというのがあったんです。ここでやめておかないと、車椅子に乗っても演じ続けなければいけないですからね(笑)。

そして、今までとは大きく異なる作品にしようと決めました。過去の作品と似たようなものを作るのではダメなんです。よりクリエイティブな作品でなければやりたくなかったんですよ。

Video: 20thFOXjp/YouTube

――監督の2007年の西部劇映画『3時10分、決断のとき』は名作ですが、『LOGAN/ローガン』にも西部劇の雰囲気が強く感じられました。なぜここまで西部劇的な作品になったのでしょうか?

マンゴールド西部劇はただ昔のアメリカを描いた話ではありません。時代劇などと同じで、基本的にはシンプルな作りの寓話になっています。歴史の再現ではなく、善と悪、勇気と臆病、寛大と貪欲の物語です。

映画は過剰に複雑な作りになりがちですが、私は西部劇やノワールの定形を使うことで、よりシンプルなものを作ろうとしています

映画の中にはストーリーの構造を説明することに躍起になっている作品があります。そういった作品の登場人物に観客は共感できませんし、映画を体験するという楽しみも得られません。

映画にとって重要なのはストーリーの構造ではなく、詩的な感興やイメージだと私は思っています。登場人物が「このボタンを押したらこういうことになるぞ!」とか「この一線を越えたら、こうなるぞ!」といった具合に、ストーリーの流れをべちゃくちゃ説明する必要はないでしょう。

確かに私たちはたくさんしゃべる世界に生きていますが、映画はそういったものを超越できると思っています。

――今回の映画を作る上で一番大変だったところはなんでしょうか?

マンゴールド:人間としてのリアリティーを出すことが大変でした。本作における最大の特殊効果は、感情のリアルさだと思います。感情を観客に見せなければ、この映画は成立しなかったはずです。

すでに公開されている国で本作が高い評価を得られたのも、CGを使ってエンディングを盛大なものにせず、あえて真摯に感情を描くことにしたからだと思っています。コンピューターにはそんなことはできません。

ある意味では、昔ながらの映画作りだったと言えます。

――今の時代にそのような映画を作ることに不安はなかったのでしょうか?

マンゴールド:もちろん毎日心配していましたよ! 完全なクソ映画を作ってしまうんじゃないかってね(笑)。

うまく撮れたか、面白くなるのかなんてことを心配しながら、眠れない日々を送っていました。

撮影を終えて編集室でひととおり見てから、とりあえず大ヒットになるかどうかはわからないけど、自分としては好きな作品だと感じられるようにはなるんですが、撮影の間はいつも不安です。

ただ、監督というものは馬車馬が付ける目隠しのように、自分に目隠しをする必要があると思います。映画を作っていると、心配する周りの人々を振り切って、とにかく前へ進んで、飛び込んでいくべきタイミングが訪れるんです。

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――Xメンにはたくさんのキャラクターがいますが、その中からローガンと一緒に旅するキャラクターとして、なぜプロフェッサーXを選んだのでしょうか?

マンゴールド「ローガンが親の介護をする」というアイディアを気に入っていたからです。ローガンにとって親のような存在と言えば、チャールズ(プロフェッサーX)かマグニートーですよね。ただ、マグニートーとの関係は敵意をはらんだものだったので、やはりチャールズと旅をすることになりました。

Xメンの中で最高の頭脳の持ち主であり、最も父性にあふれた人物が、どういうわけかXメンという家族の中で最も反抗的なローガンという男の助けを必要とし、さらにローガンを成長させ、彼を父にする話を描きたかったんです。

――家族というものが大きなテーマだったんですね。

マンゴールド:そうですね。ヒューと最後のウルヴァリンの映画はどんなものにしようか?と相談していた中で、私は「ウルヴァリンが最も怖れるもの」の映画を作りたいと考えました。

ウルヴァリンは、スーパーヴィランはもちろんですが、世界の終わりや死すら恐れていない男です。しかし、彼は愛や親密さ、他人を必要とすることを恐れています。だからこそ、本作のテーマを「家族」にしたんです。

――それが今回の敵につながると。

マンゴールド:そうです。彼の過去……人殺しの「ウェポンX」という過去が追いかけてくるわけですね。ウルヴァリンを殺すことができるのは、一体誰か? そういったことを考えました。

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――そんなローガンとプロフェッサーXと旅をすることになるローラを演じたダフネ・キーンは、本作の中でもとりわけ印象に残ります。彼女が選ばれるまでの経緯はどのようなものだったのでしょうか?

マンゴールド:彼女の両親はふたりとも優れた役者で、彼女の父親が本作のキャスティング担当にiPhoneで撮った動画を送ってきたことがきっかけです。

その内容は本当にすばらしいもので、セリフを言って演技するだけでなく、本棚を登ったり、サマーソルトをしたりする様子が撮影されていました。彼女の役者としての演技力だけでなく、激しいアクションを恐れない身体能力と迫力には驚かされました。

『LOGAN/ローガン』の成功の鍵であるローラというキャラクターを一体誰に演じてもらうのか……?という悩みが一気に解決した瞬間です。振り返ってみれば、あれが本作を制作する上で、一番重要な日だったと思います。

――ヒュー・ジャックマンとのオーディションの映像も凄まじかったです。

マンゴールド:あれはもっと後の映像で、ヒューとスタジオに彼女を見てもらうといった意味合いのものでした。私としては、オーディションをする前から彼女を使おうと決心していました。本当にすばらしい役者です。

――ローラはアクションシーンも凄まじいですが、どれくらいダフネ自身が演じているのでしょうか?

マンゴールド:アクションシーンは観客が思っている以上にたくさんやっています。彼女はあらゆることに挑戦しました。

11歳の女の子のスタントダブルはなかなか見つかりません。彼女自身がやるか、彼女より大きい人が代わりにやるといった状況だったので、なかなか大変でした。

しかし、アクション俳優ですら苦労する“アクションを自分のものにする”ことを彼女はやってのけました。スタントダブルと切り替わるシーンでも、その体の動きと表情で説得力を持たせ、まるで自分がやっているようにちゃんと見せられるんです。

こういう質問が出るのも、彼女がその境目がわからないほどに上手にアクションを自分のものにしているからでしょう。

――ダフネにはどのような演技指導をしたのでしょうか?

マンゴールド:ダフネはすでにすばらしい役者だったので、「ここを見て、これをやるんだ」みたいな細かな指示は必要ありませんでした

私がやったのは、そのシーンではどんな感情で何をするのか?を伝えるだけでした。ダフネはシーンの後にちょっと話をするだけで理解し、ちゃんとやってくれる本当に賢い女の子です。

私がダフネを含め、全員に必ず伝える指示は「常に新しいシーンだと思え」ということです。たとえ何度撮っても、まるで初めて撮ったかのように演技しなければいけません。

11歳の子には難しかったと思います。ダフネがある時、「ねぇジム、このシーンを今日は47回もやってるけど……」と言ってきました。リハーサルやアップ、引きでの撮影などなど、映画ではたくさん撮影しますからね。

それでも私が「じゃあ今は何テイク目かな?」と尋ねると、彼女は「テイク1よ」と答えます。彼女はただ、私がいつも言っている「常に新しいシーンだと思え」ということを確認しにきただけなんです。

「これが初めてなんだ」と自分に言い聞かせれば、セリフや感情に新鮮さを持たせることはそれほど難しくありません。

私自身もこういったインタビューを受ける時には、自分に「これが初めてなんだ」と言い聞かせています。同じ質問を何度もされるので、台本があるかのように同じ答えを返すこともできますが、なるべく新鮮味のある答えを返すようにしています。

そして、新鮮味を出すために欠かせないのは相手です。インタビューでは熱意のある質問をぶつけてくるインタビューアーが欠かせませんし、ダフネの場合、常に新しいものを引き出してくるヒューやパトリックの存在があったからこそ、やり遂げられたのだと思います。

――次の質問のハードルがだいぶ上がった気がします……(笑)

マンゴールド:11歳の子にもできるんだから、大丈夫だよ!(笑)

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――それこそインタビューアー全員に聞かれている可能性もあると思いますが、本作が本当にローガン最後の作品になるのでしょうか?

マンゴールドもちろん!! いったいどんなクレイジーな人が次のローガンの映画を作るかはわかりませんが、とにかく私は関わりません。

いずれ誰かがもっとお金を稼ぐために、どうにかして続きを作るかとは思いますが……ヒュー・ジャックマンが演じることはないでしょう。

――新たなウルヴァリンを作るのであれば、コミックと同じようにローラがいいと思います。

マンゴールド:そうですね。実際、今はローラの話の続きとなる作品の脚本に取りかかっています

――他にX-MENや他のヒーロー映画を撮る希望や予定はあるのでしょうか?

マンゴールド:ダフネのローラで私は十分です。他にも撮りたい映画はありますからね。

私はXメンの映画を撮っているのではなく、興味深いキャラクターの登場する映画を作っているだけです。なので、キャラクターが面白ければ、別のXメンを撮る可能性も無いわけではないですが……とにかく今やりたいことはそれではないですね。

***

これまでさまざまな映画人にインタビューをしてきましたが、インタビュー中にお茶を飲みながらクッキーをバリバリ食べる人は初めてで、その豪快さが、あえて地味とも言われかねない映画の企画を通し、人気キャラクターの完璧な終幕を生み出すことにつながったのでは?と思ってしまいました。

『ローガン』は最強の改造人間であるウルヴァリン/ローガンが無様に落ちぶれた後、血みどろの人生の終着点で自らが最も恐れるものと対面する姿を、コミックでの描かれ方にも負けないゴア満載の暴力表現とともに、手加減なしにハードに描ききった作品です。

ローガンを演じたヒュー・ジャックマン、そして同じく落ちぶれてしまったプロフェッサーXを演じたパトリック・スチュワートの共演もさることながら、そのふたりの名優に負けない存在感をダフネ・キーンが見せます。

ローラという凄まじい生い立ちのキャラクターに説得力を与える迫真の演技は、本作の完成度をより一層高めるとともに、映画が終わってすぐさま「ローラの話の続きを見せてくれ!」と思わせるほどです。

そして、本作は『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー リミックス』とは少し違う、「家族」の物語でもあり、心にグッとくる内容となっています。私は試写会でボロボロ泣いたので、心配な方はハンカチやタオルの準備をして、ご覧ください

映画『LOGAN/ローガン』は6月1日(木) 全国ロードショー。
ウルヴァリンが今まで何人殺してきたかカウントする動画

Image: (C)2017Twentieth Century Fox Film Corporation
Source: 映画『LOGAN/ローガン』オフィシャルサイト, YouTube
Photo: ギズモード・ジャパン編集部

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