HIV患者の細胞からウイルス除去に成功、遺伝子編集ツールで

2016年3月25日 16:00

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エイズが不治の病じゃなくなるかも。

テンプル大学の研究チームが、遺伝子編集ツール「CRISPR/Cas9」を使ってHIVに感染した人の免疫細胞からHIV-1ゲノムを取り除くことに成功しました。これによって、エイズ治療が根本から変わるかもしれません。

CRISPR/Cas9は、遺伝子を改変して病気を取り除いたり、新たな遺伝子を埋め込んだりするツールとして使われています。この新たな研究では、CRISPR/Cas9を独自にアレンジし、ホスト細胞の中に入り込んだウイルスをなくすために使っています。この研究の論文は、Nature Scientific Reportsで公開されています。

HIVなどのレトロウイルスは、他のウイルスと違い、自分のゲノムのコピーをホスト細胞に挿入することで増殖していきします。HIV感染後のコントロールには抗レトロウイルス薬が有効であることがわかっていますが、薬を飲まないとすぐに逆戻りしてしまいます。薬での治療を止めると、HIVが再現して免疫システムを弱め、後天性免疫不全症候群=エイズの発症に至ります。

これまで長年、HIVに感染した白血球のひとつであるCD4陽性T細胞からそれを除去する研究が続いてきました。が、「ショック・アンド・キル」と呼ばれるその手法の多くはうまくいっていません。そこに最近CRISPR/Cas9が使われるようになったことで、新たなアプローチが生まれたのです。

テンプル大学の遺伝子学者のKamel Khalili氏らは、HIVに感染した患者の血液から免疫細胞を取り出し、CRISPR/Cas9を使ってHIV-1のDNAをターゲティングしました。リボ核酸がT細胞ゲノム全体でウイルス部品の兆候を探し、マッチするものを見つけたら、核酸分解酵素がT細胞のDNAから問題の部分を切り取ります。切れ端の始末は、細胞に内蔵されたDNA修復機構でできます。

これによって、ウイルスのDNAを永続的に除去できました。この遺伝子の仕組みは細胞内部に閉じているので、HIV-1のかけらが別の細胞に入り込もうとしても、それ以上感染することを防げるのです。

この実験はペトリ皿上のT細胞で行なわれたものですが、実際患者から抽出した細胞のウイルスを減らすことができました。ということは、生きた患者の治療法につながる希望があります。それが可能になるまでに何年かかるかわかりませんが、研究チームでは、オフターゲット効果(意図しない遺伝子が編集されること)や毒性もないとしています。彼らはまた、HIV-1を除去した後の細胞が普通に成長し機能していることも示しています。

抗ウイルス薬で抑えられるとはいえ、エイズを完治させることはまだ難しいとされています。でもこの研究で、世界から不治の病がひとつなくなるかもしれません。


source: Nature Scientific Reports

George Dvorsky - Gizmodo US[原文
(miho)

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