2000年プリツカー賞受賞の建築家レム・コールハウスが10年前に建てた地球上で最もすごい家「Maison a Bordeaux(ボルドーの家)」です。
動く壁、床がせり上がる寝室、自動の床も窓もオーナー(交通事故で危うく一命を取り留めた車椅子の男性)が完全に思い通り動かせるようデザインされています。サイエンスフィクションの映画から抜け出たような驚くべき仕掛けにシリコンバレーのギークたちも口あんぐり。このエンジニアリングの粋を集めた家の暮らしを描く映像作品『Koolhass Houselife』(監督:Ila Beka&Louise Lemoine、製作プロダクション:Bekafilms=本社・ローマ)が現在全米で展覧中です。
フランスのボルドーに建つこの家は、まるで軌道に打ち上げを待つばかりの宇宙ステーションのよう。いつX-Menが出てきてもおかしくない、そんなフューチャリスティックな雰囲気に包まれていますけど、それと同時に暖かな陽の光に満ちているところが、この家の素晴らしさです。
この『Koolhass Houselife』はそのクオリティーを余すところなく収録した映画ですけど、面白いのは家政婦Guadalupe Acedoさんの視点から家を描いているところでしょう。
普通なら詰め襟のキュレーターか建築の権威が宇宙人語のような専門用語で家の哲学と理想を説くフィルムを想像しちゃいますけど、そうではなく、もっとハイテクな実用面にも注目し、この巨匠のデザイン本来の素晴らしさを生きたものに保つため家を手入れする人の目線に寄り添っています。
Gizmodo編集部では早速Ila Beka監督にこの家のこと、その関連のお仕事についてお話を伺ってみました。以下でどうぞ。
[Ila Bêka監督インタビュー]
Jesus Diaz : 家の暮らしそのものにフォーカスを当てたところが面白いですね。この発想を得たキッカケは?Ila Beka : 『Koolhass Houselife』は、現代建築を映像で辿るシリーズ『Living Architectures』第1弾の作品です。最近は建築を完全なるアイコンとして提示するあまり、建築とその中で営まれる日々の暮らしの間の糸が切れている、そんな傾向が強いですよね。そこで建築の遺産を理想化してプレゼンするのはやめようじゃないか、そんな今の傾向から離れて現代建築を見る眼を養おうじゃないか、というコンセプトから、この映画シリーズが生まれました。家政婦の登場人物Guadalupe Acedoさんの中には僕らが求めている逆転イメージそのものが内在しています。映画全体を通して彼女は、こんな家が要求してくるケア、メンテ、そしてその中で日常生活を送るという複雑極まりない世界に僕らの注意を促してくれますから。
JD : 家を撮影する上で一番の苦労は? 他の建築と比べてどこが大変でした? IB : 既に撮影を終了した映画は3本ですけど、それぞれ発掘する対象の尺度が異なりますかね。『Koolhaas HouseLife』 は個人宅の日常生活の密やかな営みを描いた作品ですし、『Pomerol, Herzog & de Meuron』 はヘルツォーク&ド・ムーロンが葡萄摘み農夫のために設計した食堂がテーマ、『Xmas Meier』ではRichard Meierがローマ近郊に建てた新しい教会Tor Tre Teste界隈が都市に与える影響を掘り下げています。『Koolhaas HouseLife』制作プロジェクト一番のねらいは、建築の傑作はそこら中で見かけますけど、そこに暮らしてみて「現実は」どうなのか知る機会は殆どない、そこに「生活感を与える」ことですね。
JD : 本当に素晴らしいコンセプトですね。映像もすごく美しいと思います。撮影・編集の機材は何をお使いで?IB : この種のプロジェクトでは撮影側は「軽く」ならなくてはならない。日常生活を追うわけですから、被写体がこちらの存在を「忘れる」ぐらいで丁度いい。なので撮影ではカメラに1人、音響に1人の計2人体制を心がけています。動画編集にはFinal Cut Pro、サウンド編集には最新世代のMacProでLogic Studioを使いました。[Bêkafilms, Stories of Houses, Wikipedia(日本語版) via Archidose]
Jesus Diaz(原文/訳:satomi)
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