このロケット、どう見ても自動車というより、ミサイルですな…
こんな車が前から走ってきたら、もうビックリでしょうね。ブチ抜かれる~! えっ、そんな~、視界に入る時点で、とっくに吹き飛ばされてるってか?
そうなんです、この超音速自動車となるスーパーソニックカー(SSC:SuperSonic Car)の異名を持つ「Bloodhound SSC」は、なななんと走行開始から約40秒で、最高時速1050マイル(約1690km)にまで達してしまう性能があり、マシンガンから発射される弾丸なんかよりも、よっぽど速く走れちゃうそうですよ! あ~、ていうことは、こんなのが前に見えた瞬間、お前はもう死んでいる…状態というわけですね。
でも、このBloodhound SSCは、冗談なんかじゃありません。イギリスが、いわゆる大英帝国の威信をかけて、人類史上最速の自動車を作り上げるべく、まさに国を挙げて真剣に取り組んでいるプロジェクトなんです。その詳細を、後方で炸裂するロケット噴射画像とともに、続きでごらんくださいませ。
実は、今回のBloodhound SSCの開発プロジェクトに携わるメンバーには、すでに1997年という昔に、これまた超音速自動車のSSCとなる「Thrust SSC」にて、時速766マイル(約1230km)という超音速スピード記録をたたき出し、世界を驚かせた強者たちが、再び集っており、世界記録更新を狙うべくスタートしたようです。Thrust SSCのハンドルを握り、地上を超音速で駆け抜ける偉業を成し遂げた、英王室空軍(RAF:Royal Air Force)パイロットのAndy Green氏が、Bloodhound SSCの運転席にも座ることが決定しており、新たに2.5Gの加速重力が加わるとされる、厳しい運転環境に臨みます。

Thrust SSCでの世界記録を抜くため、Bloodhound SSCには、すでに欧州4カ国で次世代戦闘機として開発が進められた「Eurofighter Typhoon」に搭載されているジェットエンジンが寄贈されているそうですよ。まずはスタート時点で、この戦闘機ジェットエンジンに点火し、時速300マイル(約480km)にまで到達。その後、上の写真にある新開発のカスタムメイド「ハイブリッドロケット」にも点火して、時速1050マイル(約1690km)の突破が図られるとのことですね。まだ、このロケットエンジンに関する詳細は明らかにされていませんが、このすべてを40秒ほどで成し遂げてしまう計画が練られています。
これだけでもすごいプロジェクトだな~と思っちゃいますが、驚くべきは、英政府がプロジェクトの立ち上げに当たって出した、以下のコメントです。
「地上最速の自動車開発を目指すBloodhound SSCのプロジェクトにより、英国の若き才能あふれる学生たちが、最先端の科学研究に興味を抱き、さらに研究に打ち込むきっかけとなり、より優秀な成績を上げるのをサポートしていきたい」
英科学大臣のLord Drayson氏が、この発表を行いましたが、本当にこの約束を果たすため、Bloodhound SSCのプロジェクトの進行状況などは、可能な限りオープンに提供され、英国民の目に触れて、刺激を与える存在になっていくとのことであります。
いやぁ、日本でも「理科離れ」や「数学嫌い」が問題となって久しいですが、ここはドカーンと、若者の心を熱くとらえて離さない壮大なプロジェクトでも立ち上げて、自然に子どもたちが興味関心を高めていくような取り組みに、国を挙げてサポート提供していくくらいの、広~い心がほしいですよね。さすが、かつての大英帝国は、今もやることのスケールが大きいです…
John Herrman(原文/湯木進悟)
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