別にキーボードを使うな! と言うつもりはないのですが。
みなさん、マイクロソフト、IBM、デル、レノボ、HPのキーボードがどんなに劣悪な労働環境で作られたものなのか、知っていますか?
この件について、先日米国のNational Labor Committee(NLC)という団体が調査しました。この団体は米国内やグローバル化した米国企業が世界に展開する工場などの労働環境を調査しており、過去にGAPやWal-mart、ディズニーなどの労働環境改善に貢献したことがあります。
彼らが今回報告しているのは中国、東莞(トンコワン)市のMeitai(美泰)工場。以下にその内容を一部抜粋して引用します。
● 労働者は、会話、音楽を聴くこと、頭を上げること、ポケットに手を入れることが禁じられている。労働者は遅刻1分ごとや、爪を切っていないこと、草を踏みつけることなどに対して罰金を科せられる。労働者は工場に出入りする際、係員の検査を受ける必要がある。チラシを配ったり、工場の労働条件について外部の人間と話し合ったりした労働者は解雇される。
● 組立ラインは決して止めてはならない。労働者はトイレに行きたくなっても休憩時間まで我慢する。
● 1週間に7日の12時間シフトに加えて残業が義務であり、休暇は平均月に2日。日曜に休暇をとる場合は賃金から2.5日分が差し引かれる。労働者はサービス残業を含め、平均では81時間、多い人で週に87時間を工場で過ごしており、そのうち労働時間は74時間(34時間の残業含む)。この数字は中国で法的に許される数字のなんと318%!
● ベース賃金は時給64セント。これは中国で必要最低限の生活が維持できる水準を大きく下回っている。寮の部屋代と食事の分を差し引くと時給41セントまで落ち込む。週に75時間働く労働者の場合手取り57.19ドル、または時給76セント(ボーナスや残業代含む)。労働者が賃金を14パーセントから19パーセント騙し取られることもよくある。
また、労働者にあれこれペナルティを課す規定も多数あります。以下にBoing Boingがピックアップした部分を引用。
● 規則違反として2時間分の賃金(10人民元-1.44ドル)の罰金支払いに相当する行為
・ シフト開始時間に1分から5分の遅刻
・ 定期的に爪を切っていない(製品の品質に影響を及ぼすとされる)
・ タイムカードを押すとき、またはカフェテリアにて列にきちんと並ばない
・ 業務用の靴を職場以外で、仕事以外のときに履く
・ 工場内、または作業スペースでズボンのポケットに手を入れる
● 規則違反として分の賃金(20人民元-2.88ドル)の罰金支払いに相当する行為
・ 職場で私用電話に出る
・ 業務に励んでいる様子が見られない、または来客があったときに顔を上げてあたりを見回す
・ 作業用の机の上に私物を置く
・ 仕事中にラジオを聞く
・ 会社の決めた規則に従って自転車を駐輪しない。会社の決めた規則に従って社内外で自転車に乗らない
・ 寮の門限を破る
● 規則違反として分の賃金(30人民元-4.32ドル)の罰金支払いに相当する行為
・ 許可なくベッドを交換する(寮のベッドは管理職によって割り振られる)
● 規則違反として分の賃金(50人民元-7.20ドル)の罰金支払いに相当する行為
・ 1時間以上の遅刻
・ 許可なくエレベーターを利用する
・ 寮において、私用のため電源を利用したり家電製品を利用する
・ 会社の電話で私用電話をかける
・ 品質の劣る製品を生産する
・ 業務中に他の労働者のところを訪れる
・ 業務中に作業スペースにて談笑する
・ 警備員の検査を受けずに工場を出入りする
・ 監督に対して傲慢な態度をとる
● 規則違反として約3日分の賃金(100人民元-14.40ドル)の罰金支払いに相当する行為
・ 許可なく勝手に持ち場を離れる
・ 私用の張り紙をしたりチラシを配る
・ 社外秘の事項や製品に関する情報を漏らす
● 解雇に相当する規則違反
・ 労働秩序を乱す。企業が業務上行う指示に従わない
・ 違法な団体に参加する。(中国ではこれは、独立系組合、人権団体、無認可宗教団体などを指す)
・ 仕事の放棄、仕事を遅らせる、他の労働者の仕事を遅らせる、などの行為。
・ 3日間の欠勤
・ 中国のひとりっこ政策に従わない
・ 企業の指示に従わないまた集団でトラブルを起こす
・ 以上に示した行為に類する行為、また結託してそうした行為を起こしたり、そうした行為を助長すること
確かにある程度規則を決めるのは工場の権利だとは思いますが、それと罰や報酬のバランスがあまりにも取れていないように感じます。
もしより正確な情報が知りたければ、Meitai工場と契約しているマイクロソフト、IBM、デル、レノボ、HPなどに直接確認してみるのもいいかもしれません。たとえその場では情報が得られなかったとしても、企業に対してフェアなトレードを考えるきっかけになるかもしれませんから。
National Labor Committeeのページではたくさんの写真(寮の部屋、カフェテリアで出る食事など)と詳細レポート(英語)を読むことができます。
なんかドラマ「銭ゲバ」の第1話の派遣労働シーンとか思い出してしまいました。日本の労働環境の実態についても、同じような調査が必要かもしれませんね。
[NLCNet via Boingboing]
Jason Chen(MAKI/いちる)
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