スペースシャトル「ディスカバリー」のタンクにしがみついたまま見果てぬ宇宙に旅立ち、壮絶な最期を遂げた宇宙コウモリ(Space Bat)。最後に一度でいいからその小さな体を抱きしめてやりたかったよ…。
2009年3月15日。―翼が折れたオヒキコウモリの君は、何故か若田さんが乗るシャトルにヒシッとしがみついたまま、飛べなくなってしまった。
「10、9、8…」。やがてカウントダウンが始まり、NASA職員が外部燃料タンクの発泡体表面にへばりつく君の姿に気付いたときには、既に手遅れだった。君は時おり体を動かしたけど決してその場を離れなかったね。
NASAはあの後、こんな冷たい見解を発表した。
あの動物はディスカバリーが軌道に上る際、速やかに死亡したものと思われる。
でも僕にはこう読めた。
飛ぶ能力を奪われ、行くあてないコウモリは、勇気を振り絞って、我々のディスカバリーに登った。弱々しい小さな両目に星を瞬かせながら。発射スタート。空に向かってやさしく押さえつけられる虚弱な哺乳類の体が緊張に震える。
宇宙コウモリは最後の最後に、空を飛ぶ原始の喜びを感じた。あの耳をつんざく洞窟の喧騒を遠く離れ、底なしの黒い闇が永久に広がる世界へ―。彼は初めて、夢に向かって上りつめていく名状し難い感覚を味わった。
噴き上げる炎に焼かれたか、成層圏でカチコチに凍ったか、そんなのはもはや問題ではない。宇宙コウモリは死んだのだ。それは僕らも分かってる。しかし彼の夢は、僕らの中に永遠に生き続けるだろう。(完)
立派だったよ、宇宙コウモリ。感動をありがとう。
関連:CNN.co.jp
John Herrman、Jesus Diaz(原文1、原文2/訳:satomi)
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