今年の東京モーターショーは明らかに転換期。各メーカーともにハイブリッドや次世代エネルギーの提案をしています。特に今年はEV(電気自動車)が目玉で、ゼロ・エミッション社会の到来を予感させますよ。
ということで、今回ゼロ・エミッションについて力を入れている日産自動車で色々とお話をきいてきたのでまとめてみました。
ゼロ・エミッションとはエミッションとは排出の意味。自動車から排出されるものは排気ガス、CO2、騒音など様々。こういった排出物をゼロにしよう、というのがゼロ・エミッションの試みです。特にCO2は地球温暖化の原因ともなっているということで昨今注目されていますし、ガソリンは今は安定供給されていますが将来に渡って永続的になるか分かりません。我々世代は「あと20年で枯渇する」と常に言われ続けてきたんですけど、どうなっちゃたんでしょう。エミッションの原因の大きなものは内燃機関であるエンジン。そこでゼロ・エミッションを達成するために電池と電気モーターで駆動する電気自動車が脚光を浴びているというわけです。
電気自動車の仕組み電気自動車の原理は結構シンプル。電池と電気モーターがあるだけです。最初の自動車も電気自動車だったんですよ。ただやはり電池の性能が悪く、長距離走れないということで内燃機関におされてしまってはや100年たってしまいました。
100年たった今も課題は同じ、電池の性能と航続距離。内燃機関の効率が極まっているので、それに対抗するのも大変です。
電池と航続距離の関係はiPhoneに似てる?電気自動車はiPhoneに似てます。iPhoneを丸1日フルに使うと電池がなくなってしまうのと同じで、電気自動車も走っただけ電池がなくなるので毎日充電しなければなりません。
iPhoneを家で充電して、心元なくなったら出先でUSBポートから充電したり、AC電源やカーアダプタを使って車の中で充電したりしますよね。電気自動車も同じで、家で充電しておいて、心元なくなったら出先で充電すればいいんです。
充電スポットはどこ?さてここからが本番。電気自動車は自動車を作るだけでは成り立たないといわれる由縁。出先で充電する充電スポットが必要なんですね。これには社会インフラの整備が必要で、日産自動車では関係各所に働きかけているそうです。
そして面白いのは様々な充電方式。
プラグインで充電するだけではなく、非接触式充電、走行中充電など、ちょっとだけつぎたし充電を可能にするアイディアが満載。非接触式充電方式は最近携帯電話などのガジェットでも注目されていて、これが実現するとショッピング中や電気自動車専用レーンを走行中に充電することもできそう。
電気はどこから?そもそも日本の電気は火力発電所も相当の割合があるのでゼロ・エミッションではないじゃないか、という声もあります。そこで注目されているのが太陽光発電や風力発電。ゼロ・エミッションで発電した電気をバッテリーに一度ため、それを直接電気自動車に充電するというアイディアがあります。エネルギー版の地産地消、送電ロスもないしまさにゼロ・エミッションです。
ガジェット化するリーフさらに有効に電気を活用するために電気自動車リーフのガジェット化がすごいんです。たとえばエアコン。走行中にエアコンを作動させると電池が減っちゃうから走行前、充電中に予め冷やしておくんですね。そうすると走行距離が減らないし、快適と一石二鳥。そしてこの操作はiPhoneや携帯電話、PCからウェブ画面でできるんですって。なんと電気自動車に通信機能が標準装備されていて、サーバーと通信。充電完了したらメールで知らせる機能もあります。
またナビゲーションシステム、カーウィングスと連動し、実際の走行データを元にした渋滞回避ルートの案内はもちろん、エコ運転のアドバイスもしてくれるとか。もちろん近くの充電スポットや航続可能なエリアも案内してくれます。
もはやこうなってくると自動車というよりも、サーバー・クライアントシステムか、クラウドかといった勢いですね。
リーフの電池は汎用品でレゴブロック風これまで自動車用バッテリーといえば車種ごとの専用開発品でした。日産リーフでは日産とNECで合弁会社を作って開発した汎用バッテリーをつかい、より使いまわしができるようにしています。一つ一つはお弁当箱みたいなケースになっていて、リーフでは48個使用しています。小型車種では減らしたり、大型セダンでは増やしたり。
また置き方も縦横自在なので車の形にあわせて配置すればいいそうです。みんなが大好きなレゴブロックみたいなもんですね。
この汎用バッテリーは数年使用した後、リユース、リサイクルなど、その他の用途で有効活用されます。
新しい車の形、ランドグライダー日産リーフは普通の車の形をしていますが、バイクみたいに傾く自動車、ランドグライダーはまったく新発想の自動車。バイクよりも快適で、自動車よりも気軽。バイクのようにハンドルを切ると内側に傾くのですが、その角度は速度によって変化します。またUターンなど低速でも曲がりが深いとぐっと大きく傾くそう。まるで白バイが交通違反者を追いかける時みたいですね。サイズは軽自動車よりも小さく、特に幅は狭いです。同乗者は横ではなく後ろに乗せる、タンデム方式。このような形も小型モーターとバッテリーを自由にレイアウトできる電気自動車ならではですね。
電気自動車インフラの横連携自動車の素敵なところとして、インフラは共通ということがあります。ガジェット使っているとACアダプタが機種によって違うだとか、カメラのレンズはなんとかマウントでメーカーごとに違うのが当たり前。ガソリンノズルが同じように、電気自動車用のノズルもといプラグは規格品でどのメーカーのものでもOK。だから充電スタンドは自動車メーカー問わず充電できます。
(写真:三菱iMiEV)
電気スタンドは200Vが一般的ですが、各家庭にすでに200Vが来ているので比較的簡単に設置できるそうです。エアコンも200V電源を使うことがありますが、それと同じとのこと。
まとめ電気自動車がゼロ・エミッションを目指すとなると電気の作り方から考えなきゃいけません。試算によるとガソリンエンジンで使うガソリンや排出するガスと、電力会社が発電で消費する重油や排出するガスを比較するとやはり電力会社の方が少ないとのこと。ですから今すぐゼロとまではいかないですが、電気自動車を使うことで環境面への負担は減らしていけるそうです。また同程度の性能であれば電気代の方がガソリン代よりも安いとお財布へも優しいとのこと。
またカーシェアリングやパーク&ライドなど、公共交通機関の一部として考えたときにも電気自動車は親和性が高いです。ガソリンと違って電気はどこにでもひけますからね。
使っているガソリン車を今すぐ電気自動車に切り替えるのは極端ですが、今後の100年のモビリティを考えると流れは電気自動車で間違いなさそうです。
それにしてもiPhoneに携帯電話、PSPにNINTENDO DS、デジカメにノートPC。充電するものがまた増えるなんて! ガジェット好きにはたまらない? です。
(野間恒毅)