一方、次々と大技を繰り出し、見事2大会連続で金メダルを獲得したアメリカのショーン・ホワイト選手。彼はRed Bullのスポンサーによるものすごいトレーニング環境を専用にあつらえていて、そこで数々のダイナミックな技をマスターしていたらしいのです。
そのトレーニング環境は、アメリカコロラド州のシルバートンという町から程近いところ、シルバートン・マウンテンにあります。そこはアメリカ国内ではもっとも険しい地形を持ったスキー場と言われ、決して小洒落たスキーリゾートではなく、リフトもひとつしかないような場所です。
約168メートルある練習用のハーフパイプが、この山の天然雪を約19万立方メートル使って作られました。そのためにRed Bullは、プライベート・ヘリコプターから1個11kgの爆薬を30個ばかり投下し、人工的に雪崩を起こして雪を集めたそうです。人工雪と天然雪を併せて使っている一般人用パイプと違い、固まって欠けたりするようなことはありません。設計は、ハーフパイプ設計で世界最高と名高いフランク・ウェルシュさんが手がけました。さらにRed Bullは約3.6tの鉄と7000個以上のフォームブロックを使ったフォームピットを作りました。フォームピットというのは、上の画像にあるような大きなスポンジみたいなもの(フォームブロック)がたくさん入った箱型のもので、ジャンプして飛び込んでも衝撃を吸収するようになっているものです。ホワイト選手は「ダブルマックツイスト」などの新しい技を練習する際にこのフォームピットを使っていたわけです。このフォームピットは約6m×9mという特注サイズで、畳なら33畳分くらいあるわけですが、これを普通の道ではトラックで、雪山では雪上車を使って運び込みました。
フォームピットでの練習中に足首を骨折したこともあったので絶対安全というわけではないのですが、それでも、新たな技を短時間に身につけるためには十分な環境でした。彼自身の評価では、フォームピットがあることで「数年分圧縮した成長ができた」そうです。
また、彼はプライベート・ヘリコプターで練習場に通っており、さらにパイプのスタート地点まではリフトがないため、スノーモービルを2台使っているらしいです。
五輪という場で力を出し切るためには、努力や運という要因も必要かもしれませんが、こうした練習環境を持っていることはかなりの強みだったでしょうね。ホワイト選手のサイトに、こうした練習環境にまつわる秘話やいくつかの新技が披露されてます。普通、ライバルには自分の手の内を知られたくないと思うものでしょうが、他の競争と同じように、ゲーム前からメンタルな戦いは始まっているのです。彼のライバルたちはおそらく、五輪の前にもこのサイトを見て、「なんじゃあ、こりゃあ!」と思わずもらしていたのではないでしょうか。Brian Lam(原文/miho)