ジョブズ書簡に対するAdobeナラヤンCEOの反論(動画あり)

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ジョブズ書簡に対するAdobeナラヤンCEOの反論(動画あり)
Macクラッシュの一番の原因がFlashとは心外だが、仮にそうだとしたなら、それはApple [Mac] OSの問題でもある」-AdobeナラヤンCEO

ゴールデンウィークを丸々挟んでしまいましたが、Appleのスティーブ・ジョブズCEOが29日、Flash外しの6つの理由を書簡「Thoughts on Flash」にまとめて公開しましたね。

ジョブズ書簡については、もう各所で話題になってますので、ここでは割愛...。

[N] サマリー

ジョブズを関西弁で

マイコミジャーナル

スラッシュドット

Engadget

全訳 - Tarosite.net

ジョン・グルーバーの感想- maclalala2

SF作家チャーリー・ストロスの感想- maclalala2

これに対し、ナラヤンCEOはなんと? 書簡が発表になった当日、ウォールストリートジャーナルはアドビ本社にシャンタヌ・ナラヤン(Shantanu Narayen)CEOを訪ねて反論をライブブログしました。そのときの動画とあわせて、どうぞ。

アラン・ムレイWSJ副編集長(以下WSJ):今日はAppleのスティーブ・ジョブズCEOに散々攻撃されましたね。ここまで言われること、やったんですか?

シャンタヌ・ナラヤンAdobe CEO(以下ナラヤンCEO):まあ、こちらにはアプリとコンテンツはオープンになるべき、というビジョンがありますからね。マルチプラットフォームのオープンなシステムを我々は信じているわけで。

WSJ: ジョブズ氏とはビジョンが異なると?

ナラヤンCEO: これからはみんないろんな端末からネットにアクセスできる世界が勃興してきます。カスタマーはいろんなデバイスからアクセスできる利用環境を求めている。携帯もタブレットもTVもパソコンもね。

WSJ: アップルが言ってるのは、アップルのプラットフォーム向けには特別に作れ、ということですよね。

ナラヤンCEO: この記事もそうですが、アップルの最近の言動を見ていると、アドビがカスタマーとコンシューマにこういったオープンな環境を提供できることを危惧してるように見受けられます。

WSJ: ほとんど感情に任せてるというか、ちょっと尋常じゃないものを感じますね。例えば、こういうくだりもありますよ。アップルとアドビは古くからの付き合いで、一緒に緊密にやってきた仲なのに、黄金の日々は去り、会社の成長につれ、お互い離れ離れになってしまった―。

二社の間に何があったんです? どうしてここまでひどく憎み合う? うちのカーラ・スウィッシャー記者なんて「ジョン&ケイト・ゴスリンの痴話喧嘩よりまだ酷い」って言ってますよ。ここまでエスカレートした原因はなんなんでしょう?

ナラヤンCEO: 我々は創業以来の理念を通しているまでです。マルチなOS、ヘテロな環境(異機種環境)。今Flash対応の携帯端末は多いので、その数からくるプレッシャーがあるんでしょう。5月はじめのグーグルI/OではAndroid最新型に搭載になりますし、Creative Suite 5(CS5)は明日出荷です。CS5では1回つくれば複数のデバイスで走るものが書けます。CS5に投入したイノベーションはとにかくスゴいですよ。

WSJ: ですが、iPhone、iPad...Appleのプラットフォームはもう断念せざるをえない状況かと..。

ナラヤンCEO: この記事に書かれている技術の話なんて本当のことを煙に巻くための煙幕です。Adobeのツールを使ってiPhoneにアプリやコンテンツが作れることは既に実証済みですよ。現にAdobeのツールで作ってStoreで承認をいただいたアプリは既に100件以上あるんですから。(先方は技術的問題と仰るが)技術とは全く関係ない話です

WSJ: でもアップルはトレンドセッターですからねぇ...ビジネスにダメージを受けるというご心配はないんですか? iPadやiPhone向けに何か作りたい人はみんな他の技術使わないといけないんですよ?

ナラヤンCEO: 当社が提供するオーサリングツールは、どんな端末向けのものでも作れるツールです。

WSJ: iPad以外はね。

ナラヤンCEO: iPad向けにだって作れる。印刷素材の作成で使うInDesign、ウェブ素材の作成で使うDreamweaver。これらをお使いのお客様(大勢います)は、そのコンテンツをiPadで読み取り可能なフォーマットにエクスポートできるんです。WSJさんみたいなところはPC端末用、iPad用、Android用、Palm/HP用、Nokia用と別々に作業フロー抱えるのは面倒でしょう? カスタマーからも「それは我々の得策ではない」との声が届いています。

当社は世界最高のオーサリングツールをつくる。ピリオド、おわり。

WSJ: では具体論に。彼は「セマンテックがFlashを2009年最悪のセキュリティの脅威として取り上げた」、「セマンテックの言葉を待つまでもなく、Macがクラッシュする一番の原因がFlashなことは我々が一番良く知っている」と書いてますが、これ、本当ですか?

ナラヤンCEO: さっきも言いましたけど、こういう言いがかりはみな煙幕なんですよ、本当の問題から目を逸らすための。

WSJ: いいでしょう、煙幕で。要するに彼は自分のプラットフォームにみんなをキープして、自分のプラットフォーム向けに開発させようとしてるってことですよね。でもここでお伺いしたいのは具体論です。本当にFlashはMacがクラッシュする一番の原因なんですか?

ナラヤンCEO: 仮にMacがクラッシュする一番の原因がFlashだとしたら、それはAppleのOSにも問題があるんじゃないですか。Windowsも含め、Flashは1日800万回ダウンロードされてます、動画も、ゲームも。それで動いてる。ですから、技術が問題じゃないんです。

WSJ: バッテリー寿命は? 「H.264ならiPhoneは最大10時間もつのに、Flashが使うようなデコーダーを使うと半分になる」と書いてますよ? ユーザーから見たら10時間と5時間じゃ大違いですよ?

ナラヤンCEO: それは明らかにデタラメ。同じFlashでもハードウェアアクセラレーションが使えるプラットフォームではMacよりバッテリーを食わないことも実証済みです。こっちが悪いと責めるが、そもそもカスタマーが求めるようなイノベーションの提供を間で阻んでいるんですよ。

1度つくれば何種類ものデバイスで動く。これ、世界最高のコンテンツの提供元であるあなたならどう思われます?

WSJ: そりゃ誰が見たって生産性の観点からは、開発ツールをワンセット使って全プラットフォーム向けに開発できるに越したことないですよね。でもジョブズはさておき、そちらのソフトウェアに問題があると言ってる人は他にも大勢いるんです。Macのクラッシュの問題はもちろん調べられたと思いますが、これがこういうかたちで明るみに出たのは今回が初めてかと...。

ナラヤンCEO: みなさんが事実と報じる中には、そうじゃないこともあるんです。その具体例をもうひとつ。アップルは最近やっと当社にもハードウェアアクセラレーションを提供しました。それを実装したFlashプレーヤーのベータ版、「Gala」というんですが、これでその問題は全部解消されています

当社には提携パートナーもついています。AndroidのGoogle、Web OSのPalm、Nokia、日本の全ての携帯、ハードウェアベンダーのNVidia、Qualcomm、Broadcom...みなさん我々とビジョンを一つにする仲間です。未来はマルチプラットフォーム、当社はそれに賭けてるんです。

WSJ: ジョブズは「Flashのモバイル端末でのパフォーマンスはロクでもない」って書いてますよ。

ナラヤンCEO: うむ...ある時点まできたら、そこから先はもう、消費者の選択に委ねるしかないですね。技術がダメなら消費者は選ばない。当社の技術を使ってアプリを作る人がいる、採用された、それすなわち出版社にも消費者にもプラスになる技術だという何よりの証です。それがアップルにはプラスにならない。だから、こんなリアクションが出てくるんです。

WSJ: この書簡で一番面白いのが、これです。あなたは先ほどオープンな、プラットフォームを選ばないシステムを目指してる、と仰いましたが、彼は「アドビのプロダクトは100%プロプライエタリだ」、「自分こそ真のオープンウェブのサポーターだ」と書いてますよ。この点は、どう思われました?

ナラヤンCEO: 正直、笑っちゃいました。Flashの仕様はオープンになってます。仕様はパブリッシュされてる。アップルのアプリで、アップルがコントロールしてないアプリなんてあるんですかね?

WSJ: スティーブ・ジョブズに会ったことは?

ナラヤンCEO: 何度か会う機会はありました。

WSJ: こういうやり取りはあったんですか?

ナラヤンCEO: はい

WSJ: 面と向かって?

ナラヤンCEO: YES

WSJ: 彼を衝き動かしているものはなんだと、感じられました?

ナラヤンCEO: ビジネスモデル

そもそも世界観が違う。こちらはマルチプラットフォーム。譲るつもりはないです。

WSJ: 歩み寄る余地は? iPadが出た時にはみんな両社とも居心地のいい静かな別室でじっくり話し合って、他の端末からでもiPadに翻訳できるツールを最低なんか考えてくれるんじゃないかと期待したんですけど...。

ナラヤンCEO: オーサリングに関しては足並み揃えてやってますよ。Macのクリエイティブなカスタマーは、当社にとっても重要なカスタマーです。

WSJ: 今回持ち上がった批判を改善に活かすご予定は?

ナラヤンCEO: フィードバックは常に反映していきます。

WSJ: iPadやiPhoneは使ってます?

ナラヤンCEO: 私が使ってるのはGoogle Nexus Oneです。

WSJ: iPadを使った感想は?

ナラヤンCEO: 初代としては良くできています。今年下半期にはいろんなプラットフォームの製品も出揃いますし。

WSJ: 万一に備えて、手を組んでいるタブレットメーカーが他にあるんですか?

ナラヤンCEO: 何ダースもありますよ(キリッ

WSJ: タブレットではタッチが重要ですが、ジョブズは「Flashはタッチ向けにできてない、クリック、マウス、ホバリング時代の遺物だ」とか書いてます。

ナラヤンCEO: Flashはマルチタッチ対応です

WSJ: この論争を乗り越え、過去のものにする方策は何かないんですか?

ナラヤンCEO: それはカスタマーに選んでもらいやしょう。

WSJ: 勝算は?

ナラヤンCEO: あります。

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デスクトップパブリッシングを切り開いた両輪が空中分解...ですねぇ...。

アドビのケヴィン・リンチCTOは29日のうちに、iPhone OSから他のプラットフォームに開発の重点を移すと発表しました。

週明けの月曜、アップルはiPadが販売100万台突破を発表。同じ日の未明、ニューヨークポスト紙は米司法省と連邦取引委員会(FTC)が今、開発者囲い込み規約変更が反トラスト法に違反してないか調べる担当を決める最中だと伝えました。

火曜には「調査はアドビからの要請を受けたもの」、「当局はiADにも関心を示している」(WSJ)との噂も流れ、グーグルからは端末を選ばないeブックストア「Google Editions」を今年半ばオープンするとの発表がありました(きっとアップルはその前に基盤を固めておきたいんでしょうね...)。

水曜アドビCTOは「ベストなHTML5ツールをつくる」宣言も出ましたが、さて?

成り行きに注目して参りましょう。

[WSJ]

Jesus Diaz(原文/satomi)