右端のシュワちゃん、こえぇ~
こちらの写真は先日トヨタが米の電気自動車専門企業、テスラ・モーターズと提携した時の写真。テスラとは、電気関連の発明・開発を多く行ったニコラ・テスラにちなんだもので、カルフォルニア州にある企業。
テスラ・モーターズはPayPal創業者、Google共同設立者、元eBay社長などIT関連企業やJPモルガン関連のベンチャーキャピタルから投資されており資金繰りには別段困っていない様子。とはいえ現在発売しているテスラ・ロードスターではまだまだ赤字、車のベースを他社から買ってきてそれを電気自動車に仕立てるなど「自動車作り」といった面ではまだまだ発展途上。
カルフォルニア州といえば山に囲まれて空気がよどみやすいという地域特性から、排気ガスや環境にとてもうるさい州として有名。排気ガス規制はもちろん、燃費への関心も高いです。そんな中ハイブリッドカー・プリウスが好調なトヨタがEV専業メーカー、テスラと提携というのはどんな意味があるんでしょう? 米ゼネラル・モータースと合弁工場だったNUMMIを撤退して、カルフォルニア知事のシュワちゃんことターミーネーターに「なんとかせい」と睨みつけられたから?
詳しくは続きを読むからどうぞ。
ハイブリッド自動車はガソリンと電気モーターのハイブリッドなのは言うまでもありませんが、実はこの技術、ここ10年の過渡期の技術と目されています。すでにプリウスは3世代目、またホンダもシビック・ハイブリッドやインサイト、CR-Zでハイブリッドを売りにしてきています。
このハイブリッドカーの世界は特許の嵐で、低価格な方式はホンダ、高価格で高性能な方式はトヨタが占有してもはや他社が参入する隙間がないほど。後発メーカーがハイブリッドカーを出すには独自に開発するか、特許料を払って作るしかありません。先日もマツダがトヨタのハイブリッド技術を採用すると発表がありましたが、これはトヨタの軍門に下ったことを意味します。
ベンツなど高級車であれば誤差の範囲なのですが、大衆車に特許料を上乗せするとそれだけで数十万円高くなってしまうので、価格競争力がなくなってしまいます。そこで一気にヨーロッパメーカーは電気自動車にシフトしてきています。
いずれにせよ電気自動車へのシフトせざるを得ないのは業界の常識でしたが、それまでの過渡期を日本メーカーはハイブリッド、ヨーロッパメーカーは直噴ディーゼルターボで乗り切る予定でした。ところが軽油価格も高騰してコストメリットがでてこず、ヨーロッパメーカーは電気自動車へのシフトを早めてきたのです。
こうなると慌ててしまうのがハイブリッドカー主導のトヨタです。ヨーロッパメーカー全体が一気に電気自動車にシフトしてしまうと、それにともなう技術革新、特許取得、モーターや電池の性能アップも早まりますし、コストも下がります。同時にインフラ整備も進み、旧来電気自動車へのシフトに20年かかると思われたものが、10年以下に縮まる可能性もでてきました。今プリウスが好調ですが、電気自動車インフラが整備された場合次のプリウスが売れるかどうかは微妙です。今年、日産は電気自動車リーフを発売しますし。
ハイブリッドカーはエンジンにモーター、バッテリーまで搭載し、緻密な制御が必要です。車両が重くなるので燃費に悪いですし、複雑な制御はバグが発生すれば先日のトヨタのリコール騒ぎのように暴走やブレーキが効かないなど安全性にも影響します。そう考えるとシンプルな電気自動車は実は理想的な姿。
今回のトヨタとテスラ・モーターズの提携はそれぞれの複雑な思惑を反映してのものだったのでしょう。自動車の車体がほしいテスラ、NUMMIの再建・雇用確保と環境保護推進したいカルフォルニア州、ハイブリッドの次の世代の技術がほしいトヨタと利害が一致します。
EVは排出ガス・ターミネーターですが、この提携でどの企業がターミネートされてしまうのでしょうか。今後の動向に注目です。
追記)satomiさんからの情報によると「テスラはここ(フリーモント)、お祭りムードですよー」とのこと。明るいニュースでよかったですね。
(野間恒毅)