広島の原爆より1000倍パワフルな水素爆弾を宇宙まで運んでいって爆発させたらどうなる?
どうしても知りたかった米政府は冷戦がピークの1962年7月9日、太平洋上空約250マイル(402km)の外気圏で1.4メガトンの水爆実験を行いました。俗に言う「スターフィッシュ・プライム」ですね。
そして約50年後。
アメリカ中の町が7月4日(独立記念日)の花火大会の準備で大わらわの今月1日、米公共放送NPRは、「人工の光のショーで、あれに並ぶものはない―今後もナシに願いたいものだ」という前振りで、当時の空の模様を公開しました。
こちらの映像には、VCE.COMのピーター・クーラン(Peter Kuran)さんがドキュメンタリー『Nukes In Space(宇宙の核)』制作で集めた、最近までトップシークレットだった写真も混じっています。
1:00ぐらいで打ち上げてるのが水爆爆弾で、その後で打ち上げられる小さなロケットは観測用。真っ暗な空が「真昼間のように」(目撃者証言)ピカッと白く光って...赤...緑...青...爆弾の粒子が大気に戻る瞬間、窒素に触れる瞬間ごとに色が不気味に変わっていくのが分かります。
それにしてもアメリカ政府は具体的に何を観測したかったのか? 「爆発させたらどうなるのか」の中身は?
その辺の話は、NPRが科学技術史に詳しいコルビー大学ジェームズ・フレミング(James Fleming)教授に取材していますので、以下に引用しておきます。実験には日本の教科書でもお馴染みの、ある意外な人物が噛んでるんですよ。
「事の発端は1958年5月1日。宇宙科学者ジェームズ・ヴァン・アレン(James Van Allen)がワシントンD.C.の米国科学アカデミーで人々を前に立ち、地球に関する新事実発見を発表した日に遡ります」
ヴァン・アレンはこの席で、磁場にとらわれた高エネルギーの粒子(主に陽子と電子)の放射線帯に地球が取り囲まれていることを発表した。今で言う「ヴァン・アレン帯」のことだ。
驚くのはここから先で、フレミング教授はヴァン・アレンの伝記の下調べのためアイオワ大学でヴァン・アレンの論文に目を通しながら、あることに気づいたのだという。
「記者発表が行われたのとまさに同じ日にヴァン・アレンは、磁界圏で核爆弾を発射しヴァン・アレン帯が破壊できるかどうかを確かめるプロジェクトに参画することで、軍に同意していたんですよ」
プランでは地球大気圏より高い上空数百マイルまでロケットを打ち上げ、そこで核爆弾を爆発させ、以下のポイントを観察する予定だった。
a)爆弾の放射線で上空が見えづらくなるかどうか(たとえば、こちら目がけて飛んでくるロシアのミサイルが見えるかどうか)
b)爆発で近くの物が破壊するかどうか
c)衝撃がバンアレン帯を下って地上のターゲット(たとえばモスクワ!)に当たるかどうか
d)人工爆発が地球磁気の帯の自然な形を「変える」かどうか。
そう、1962年当時アメリカ政府は太陽風の放射線から地球を守る磁場をいじったり、宇宙からロシアに死の灰を降らせるなんてことを普通に考えてたんですね...。
まあ、もっと変なのは地元の反応で、「核爆弾は今晩。予報では見晴らし良好」と一面トップで見出しを打つホノルル市内の新聞も新聞なら、ホテルは屋上やベランダで「虹の爆弾ショー」なるもの主催して盛り上がるホテルもホテル。市内で停電が発生し、ガレージのドアが勝手に開いたり閉まったりしてる異常事態だってのに、見世物かい。
Annalee Newitz(原文/satomi)