ムフフ...な興奮のお仕事と思いきや!
インターネット上にはポルノやバイオレンスなどが溢れかえっているとは言うものの、メジャーなSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)だとか写真共有サイトまでが、超グロテスクなコンテンツばかりになってしまうことのないように、日々闘い続けている人たちが世界中に大勢いることは、実はそれほど知られていません。えぇ、そうなんです。来る日も来る日もエグいポルノ画像や身の毛もよだつバイオレンス映像、ホラーの数々をチェックしては、インターネット上に一般公開してもよいかどうかを判断するプロフェッショナルの存在です。あまり公にはされていませんが、こういうスクリーニングの専門家たちの助けなしでは、いまはマイクロソフトもヤフーも一切オンラインサービスを提供できないほどになってきてるんですよ。
ただ、この知られざるお仕事をめぐっては、現在かなり大変な問題も各地で生じてきてるみたいです。周囲が思うよりも、このスクリーニング作業は過酷で過酷で、全く人材不足が解消されません。ちょっとその超ハードな仕事の裏側に迫ってみることにいたしましょう...
あのさ、あんまり大きな声では言えないんだけど、なんか毎日毎日勤務時間中に堂々とエッチでセクシーなお姉さんばかり眺めては、世間の皆さまのためにポルノチェックとかしまくれるんでしょう? そんなのどう考えても夢の職場じゃん。ボクだったら、それでお金までもらえるんなら、もう喜んで志願するけどな~
そう思わず心の中で叫んじゃった人はいませんか? 甘いですね...。確かにそれは当たっているようでいて、実態は全く違うんですよね。
世界中のインターネットユーザーから怒涛のごとくアップロードされてくる写真や動画を、静止画ならば1日に1人で数千枚のペースでチェックしていくことを求められるスクリーニングビジネスの従業員は、どんなに技術が進んでも、人間の理性の目でしか防止できない判断力を駆使して、絶対に広くオンライン公開してはならない児童ポルノを始めとする醜い形態のポルノ、虐待レベルのバイオレンスやホラー映像などなど、依頼元の大手サービスプロバイダーに対する守秘義務もあるので詳しくは語れないようですが、確実なブロックが求められているコンテンツを次々と選別していきます。
しかしながら、1日の仕事の終わりには、想像を絶するようなストレスを抱えてしまう人が多いんだそうです。事実、こうしたスクリーニング企業の大半が、従業員のためにスペシャルカウンセリングを設けなければならず、ある専属の精神科医の話では、一般的にスクリーニングの作業スタッフは、以前よりも怒りっぽくなったり、感情的な浮き沈みが激しくなったりして、ひどい場合には仕事中に特定の写真や動画を目にした瞬間、泣き叫んだり、嘔吐したりする症状が見られるとのことです。残念なことに、性欲が減退して、恋人や家族との関係にも亀裂が入ってしまうケースが少なくないんだとか。
よく面接に来た20代の若者が、毎日毎日ポルノばかりスクリーニングの作業過程で見れるなんて、アダルトビデオの天国だってノリで志望動機を語ってくれますけど、そういう人は、ほとんどがすぐに現実に打ちのめされて、早々と会社を辞めていきます。
一般公開できないような劣悪なポルノが正常な人間に及ぼす影響について、何も知らない人が多すぎます。中には、その目にした画像や映像が脳裏に焼きついて、その後の人生に多大の悪影響をもたらすことだってあります。一生の間、拭い去れないような悲劇のインパクトを受けることすらあるのです...
そう語った、あるスクリーニング事業部でトップを務めた男性は、この仕事を続けていくには、信じられないような苦闘を強いられるケースがほとんどで、それでも世の中のためには、だれかがやらないといけない仕事なのでやっているのだと自分を納得させながら、来る日も来る日もポルノやバイオレンスと向き合う社内の様子を明かしてくれましたよ。
現在、米国内では、こうしたスクリーニングのプロを養成しつつ、その過酷な労働に十分に報いられるような制度を整えるべく、国家通信情報管理局(NTIA)傘下のOnline Safety and Technology Working Groupといった団体が中心になって活動を広げているようです。従業員がカウンセリングなどのケアを受ける時には、特別な補助金を出していくシステムなども用意されるみたいですね。
ポルノこそが世界を変える! そんな主張もある裏で、ボクらがインターネットでトンでもないシーンばかり目にしてしまうことがないように、影ではこんな闘いも続いているとは全く知りませんでした...。アジアでは、インドやフィリピンのアウトソーシング企業が、結構大がかりなスクリーニングの下請けに回ってるそうですよ。情報公開が進まないので、そのほとんどは謎に包まれたままですけどね。
[NY Times]
Adam Frucci(原文/湯木進悟)