家族の死に目に会うため空港・駅を全力疾走した経験者はハンカチorティッシュorバスタオルのご用意を...。これはElliott.orgに読者のナンシーさんから寄せられた投書です。
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「デンバーに住む3歳の孫が、娘と同棲中のボーイフレンドに殺害された」
そんな悲しい報せが夕べ夫と私のところに入りました。
孫の両親共に献体を希望しているため今晩9時に生命維持装置が外され、直ちに移植手術が行われる、とのこと。孫の体は25人をこえる人たちに捧げられ、多くの人たちの命が救われます。
私たちは数時間だけ仮眠をとり、デンバーの娘の元になんとか夫を送り届けられるよう、朝が来るのを待ってチケットの手配を始めました。夫は今LAに出張中で、航空会社はサウスウェストです。
夫の勤務先のノースロップ・グラマンが早速トゥーソンまで今日中に着けるようチケットの行き先を変更してくれるというので、トゥーソンからデンバーまでの乗り継ぎ便は私の方でサウスウェストに電話で手配しました。夫は何枚か無料搭乗券を持っていてサイトでは手配できなかったんです。
発券代理店の方は電話のあいだ中、泣き通しでした。私は実言うと血の繋がった祖母ではありません。私なんかが行くより夫が死に目に会うことの方がずっとずっと重要なんですね。
いざ空港に着きましたが、LAX(LA国際空港)は荷物チェックイン、セキュリティ検査、どちらも長い長い行列ができていました。空港には2時間前に着いていたのに飛行機にはギリギリ間に合いそうもありません。
夫は1歩進むごとに今にも涙が溢れそうになるのを堪えて、なんとか離陸に間に合わせてもらえないかと、TSA(検査担当の米運輸保安局)とサウスウェストの社員にお願いしてみました。
でも誰に話しても、みな木で鼻を括ったような態度(夫の話)。やっとセキュリティを通ると夫はコンピュータバッグと靴、ベルトをひったくるように取って、靴下のままターミナルに向かい駆け出しました。
ターミナルに着くと、自分が乗る飛行機のパイロットさんと発券業者さんがいて口々にこう言ったのです。
「マークさんですね? お見えになるまで飛行機待たせてあります。この度はお孫さんのご不幸、さぞお辛いことと心中お察しいたします」
なんとパイロットさんが11:50出発の便を12:02までホールドしておいてくれたのです。搭乗ブリッジを一緒に歩きながら夫は言いました。「なんとお礼を申し上げていいか...」。するとパイロットはこう言ったそうです。
「どうせ僕がいないとどこにも飛んでいけないんだし、あなたを残して飛ぶつもりなんてなかったですよ。さあ、あとはリラックスしてください。我々がちゃんとお届けします。先ほども言いましたけど本当に大変ですね、心中お察し申し上げます」
これで夫もやっとその日初めて胸の底まで息をつくことができました。
こんなことできる飛行機、他にないです。
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サウスウェスト航空ではいかなる事情があろうとも出発を遅らせてはならないという社員規則があります。が、今回に限っては事情を鑑み、処分を見合わせたそうです。
[Elliott via Consumerist]
Photo by gTarded
Sam Biddle(原文/satomi)