福島第一原子力発電所に最後まで命がけの任務で残った50人に、海外で「Fukushima 50」という名がつきました。
16日朝、敷地内の安全な「地域」に避難させると枝野官房長官が発表したのが「敷地外に避難した」と誤訳のまま報じられ一時は混乱を招きましたけど、正午過ぎの会見で「10:40am過ぎから11:30amまでの小一時間退避しただけで4号機の火災現場に戻った」ことが明らかに。
それ以降は、「まだ残っていたのか!」「なんてこったい」、「真のヒーロー」、「がんばれよ!」とネットはFukushima 50の無事を願うエール一色となっていますよ。
各原子炉の今の状況
この会見で枝野氏はさらに、燃料棒の冷却水の温度が理想の40℃から84℃ まで上がっていると語りました。1、2、3、4号機は既に爆発・火災にやられており、5号機と6号機も温度上昇に直面中とのこと。
東電は16日軍用ヘリで海水・ホウ酸散布を開始しましたが、海水を注入し過ぎるとそれが水蒸気になって水素を生んで圧力を上昇させるだけとなり裏目に出る懸念があったため間もなく中止。放射線量が危険レベルのため空中からは消火できず、17日から地上からの消火を行うことも検討中です(3月16日22:07現在)。
16日深夜現在の各原子炉の状況をまとめておきましょう(ソース:共同通信ほか)。
1号機:冷却停止、炉心部分溶融、蒸気発散、水素爆発でビル損壊、海水注入中
2号機:冷却停止、海水注入、燃料棒が一時的に全露出、蒸気発散、3号機の爆風で月曜ビル損壊、格納容器に繋がる圧力抑制室破損の可能性(火曜)、メルトダウンの恐れあり
3号機: 冷却停止、炉心の部分溶融の恐れ、蒸気発散、海水注入、水素爆発でビル損壊、高レベルの放射線量が測定さる(火曜)、白煙(水曜。東電は使用済み核燃料プールの水が沸騰し放射性物質を含む水蒸気が上がっている、との見方を同日明らかにしました)、格納容器破損の可能性も
4号機: 火曜火災発生、原因は使用済み燃料棒を貯蔵するプールで起こった水素爆発と思われます。水曜、原子炉のある建物で火災発生
15日未明に菅直人首相自らが東電に乗り込んで「TVが報じているのに、首相官邸に1時間以上報告がなかった。どうなってるんだ!」、「撤退などあり得ない。覚悟を決めてほしい。撤退したときには東電は100%つぶれる」と経営陣に厳命したニュースは海外にも伝わってきています。大変な重圧ですよね...。
Fukushima 50
発電所では既に作業員800人が外に避難しました。土曜以降、発電所爆発で負傷した作業員は約15人に上り、残る200名が50名体制を組んで消火活動に当たっているわけですが、放射線の体に与える影響はまだ分かりません。
地震後、数値は絶えず上下していますが、現在発電所内の放射線は通常レベルの100倍の毎時約20マイクロシーベルトとされます。これはレントゲンを2時間置きにとって受ける放射線量に相当するらしいですね。放射能中毒は段階に応じて嘔吐、甲状腺疾患、がんなどの症状が出ますが、発現に時間のかかる症状もありますので予断を許しません。
米国防省は水曜、米兵に福島第一原子力発電所から半径50マイル(80km)への侵入禁止命令を出したことを明らかにしました。これは在日アメリカ大使館が在日アメリカ人に出した避難勧告と同じ半径。厚木基地から第一原発の半径70マイル(113km)の救援活動にヘリで向かう米軍兵士には念のためヨウ化カリウムを服用させているそうですよ。
Fukushima 50に直接取材は叶わない状況ですが、米CBSニュースのコンサルタントが友だちの東電社員に話を聞いてみたところ現場の友人は彼に、死ぬことなど恐れていない、これが自分の職務だ、と語ったそうです。
チェルノブイリ原発事故対策チームを率いたCham Dallas氏は、核エネルギー部門で働く人ならこんな返事が返ってきてもおかしくないと言っていますが、核安全管理の専門家Margaret Harding女史は「長くいればいるほど危険は高まる」、「それでも現場に残る、それでいくならいくまでだ、と彼らが言えるのはそれだけ気概がある証しだ」と話しています。
[CBS, NYTimes, The Guardian, Al Jazeera, AltJapan, ABC, CNN, FoxNews, @Matt_Alt and Joi]
Kat Hannaford(原文/satomi)