2008年、アップルにデジタル教科書を提案したインターンがいました

  • author 福田ミホ
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2008年、アップルにデジタル教科書を提案したインターンがいました

まだiPadも世に出ていないときでした。

アップルの教育分野、そして教科書の変革への意気込みが発表されましたが、そんな思いはかなり前から温められていたのかもしれません。アップルではインターンの学生たちに製品やサービスのアイデアを経営陣に提案させるイベント「iContest」を年1回行っているのですが、2008年にインターンだったジョー・ピーターズさんらが安価なデジタル教科書のiTunesでの販売を提案し、優勝していました。それはiPadが発表される2年前のことでした。上の画像は、そのプレゼンで使われたスライドの1ページです。

米Gizmodoの前編集長ブライアン・ラムさんのサイトWirecutterに、インターンだったピーターズさんのインタビューが掲載されています。

Q.アップルが教科書を売るというアイデアはどうして思いついたんですか?

A.もともとは僕自身が教科書の価格が高いことに不満で、ちょっと調べたら価格が人為的に吊り上げられてることがわかったんです。教科書は使い終わった学生が中古で売るので、その分出版社の売上が減ってしまうからです。(略)

コンテストのプレゼンは午後に始まり、10件のアイデアが中堅役員数人の前で提案されました。僕らは5番目でした。

僕らの前の人たちはいまいちで、Q&Aでは役員たちがすべてのアイデアを抹殺していました。でも僕らはQ&Aもすごくそつなく答えられました。彼らは僕らのアイデアを気に入ったと言ってくれたんですが、他のプレゼンには皮肉なコメントばかりされてたんです。

いくつか質問に答えてから、経営陣が完全にやる気になっているという印象を受けました。すごくうれしかったです。僕らの後のプレゼンもうまくいかず、僕らが優勝しそうな感じがしました。それもうれしかったです。

最後に会社から僕らが優勝だと発表され、僕らはMacBook Airをもらえました。それもうれしかったんですが、僕のアイデアについてより多くの人と話す機会ができて、それはもっとうれしいことでした。アップルは数日後に教育部門のヘッドであるジョン・カウチさんとのミーティングをもうけてくれました。僕らはジョンとそのチームの何人かと小さな会議室で会って、コンテストのときと同じようにアイデアについて話しました。

全体としては、僕は自分のビジョンを共有できたことがうれしかったんです。

Q.アップルのボスたちからはどんな質問がありましたか?

A.ひとつは、リアルの本が好きな人もいるよね? という質問でした。僕はただ「これはリアルの教科書を代替するものではなくて、補完するものです」と答えました。少なくとも初めのうちは。

それから、コンピューターのスクリーンで読むという行為をみんなするだろうか? という質問もありました。僕は当時うわさされていた、のちにiPadとなるデバイスのことは言えませんでしたが、将来的にはパソコン以外の方法で読むことができるだろうとだけ答えました。

他はよく覚えていません。推測するのも良くないと思いますし。

Q.アップルが自分のアイデアをもとに教科書プログラムを開発したと思いますか?

A.あの、僕が教科書のアイデアを作り出したって言いたいわけじゃないんです。ただ、経営陣がすでに検討していたものをプッシュするのには役立ったかもしれません。僕が提案するより前に教科書について考えていた可能性は十分あります。全部僕のアイデアだと主張している、と思われたくないので、この点はクリアにしたいんです。それに、アイデアを実際形にするために必要な仕事もたくさんあったでしょうし。

こう考えてもらうといいです。ここに大学生くらいの子がいて、こんなサービスがほしいんだと言っている...と。

そんなわけで、ピーターズさんの提案がきっかけだったかどうかはわかりません。でも、iBooks 2とiBooks Authorで少なくとも安価な教科書は実現されそうですし、他にも学生にとってうれしい機能がきめこまかく実現されているようですね。勉強がもっとストレスなく、楽しいものになっていくと、世の中変わりそうです。

[Wirecutter]

MATT BUCHANAN(原文/miho)