40年前の事故が原因?NYの高校で広まるトゥレット障害のような奇病(動画)

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40年前の事故が原因?NYの高校で広まるトゥレット障害のような奇病(動画)


「これと同じ症状に悩まされてる人いますか? いたら連絡ください。どう対処してるのか知りたいの、本当に...」

と呼びかけるローリ・ブラウネル(Lori Brownell)さん(17)。元々はスポーツ万能だったのですが、今ふつうの状態じゃないことは見れば分かると思います。

体に変調が出始めたのは昨年8月のこと。病名はわかりませんでした。その後、同じ地域に住む他の17人の子たちにも続々と同じ症状が出始めたのです。

クリスマスイブの日、ローリさんは「トゥレット障害(Tourette syndrome)かもしれない」と医師たちに言い渡されます。トゥレット障害(症候群)は本人の意志とは関係なく体が動いたり声が出る病気で、罵詈雑言を吐くケースも稀にあります。

問題は何故これだけの短期間にこれだけ狭い範囲でこの症候群が同時多発生してるのか? これについては謎に包まれたままなのです。




残りの子たちも症状はローリさんと一緒です。

これまでに発症したティーンは合計17人、うち16人は女子です。15人はNY州ジェネシー郡にあるリーロイ高校(LeRoy High School)在校生で、残る女子2人はそこから約50マイル(80km)離れたサラトガ郡コリンス村に住む子たち。この2グループの間に相関関係があるかどうかは不明です。

転換性障害(conversion disorder)(心理的葛藤が神経症状に転換されて現れる病気。日本語解説)ではないかと見る医師たちもいます。昔は「ヒステリー」って呼ばれてた病ですね。転換性障害になると発作、無感覚、視覚異常、麻痺といった症状が出ます。外的な病原体や化学物質ではなく、生活のストレスや悩みが原因で起こると精神科医の間では考えられています。

でも一応、ローリさんの診断は転換性障害ではなくトゥレット障害ですし、これだけ大きな広がりを見せるからには内的原因では片付けられないような気もしますよね。

ローリさんと同じトゥレット障害に罹った女の子の父親ジェームズ・デュポン(James Dupont)さんも、物理的要因がないとは到底思えないと言っています。「現地では女の子たちが狂ったような勢いで病気にかかってる。この週末もまた新たに4人の患者が出た」(デュポンさん)

トゥレット症候群の場合、このローリさんのように筋肉や喉が勝手に動き、まばたき、首振り、手足のびくつき、鼻や口で音を立てる咳払いといったチックが起こります。思ってもいない罵詈雑言が飛び出す汚言症も出るのですが、これは稀ですし、今回のローリさんたちには出ていない模様です。

生活に与える影響は深刻です。ローリさんもずっと学校に戻れない状態。外では人にジロジロ見られるので、止めようとするのだけど、「背骨を上下する、動かしたい感覚があって、動きを止めるとそれがどんどん強まっていってもっと酷い動きになって出てしまうので、それはやらないの」と動画で言ってます...。

幸い、トゥレット障害の症状は大人になるにつれ弱まっていくようです。しかし科学的研究では、完全に消えることはないとも言われています。怖いですね...。

トゥレット障害の原因ははっきり分かっていませんけど、専門家の間では、遺伝と環境、両方の要因で発達してしまうと思われています。

今回の場合、全員を繋ぐなんらかの共通点があれば納得もいくのですが、誰にもその心当たりがないんですね。唯一見つかった共通項、それはローリさんを含む一部女子たちが同じソフトボールチーム所属で、昨年一緒に遠征している、ということ。地元の報道によると、そのチームにいるローリさんの友だちのひとり、アリシア・ニコルソン(Alycia Nicholson)さんも同じ症例に悩まされている、とのことです。

高校側は感染・毒物中毒・公害の可能性は「まずない」と話しているのですが、この事態を受け、国立衛生研究所も調査に乗り出す方針を固めました。事件の真相究明には、あのジュリア・ロバーツ主演映画でお馴染みの環境運動家エリン・ブロコビッチ(Erin Brockovich)女史も動いています。科学班を現地に派遣し、リーロイ高校周辺の土壌サンプルを取ってこさせ中。

これだけの人が動いたら原因も特定されるんじゃないでしょうか。ローリさんたちが1日も早く元の生活に戻れるよう、願ってます。

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2011年12月18日、通院途中のローリさんに新たなけいれん症状が始まる...


2011年12月24日、トゥレット障害と診断された日のローリさん

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上記原稿入稿後、エリン・ブロコビッチ女史が「シアン化合物が原因かもしれない」という中間報告を発表しました。

1970年にリーロイ高校から3マイル(4.8km)の現場で列車脱線事故があり、その際に撒き散らされた1トン分のシアン化合物と35000ガロン分のトリクロロエチレン、その影響が今頃になって出てきているのでは?...という仮説です。シアン化合物と言えばナチス強制収容所のガス室で使われた毒ガスで有名...。国立衛生研究所の診断結果も待ちましょう。

[WYNT, Rochester Homepage, National Institute of Neurological Disorders, US National Library of Medicine]

JESUS DIAZ(原文1原文2/satomi)