AppleTV 2012レビュー。ブルーレイに忍び寄る死神?(動画あり)

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AppleTV 2012レビュー。ブルーレイに忍び寄る死神?(動画あり)

100ドル(8800円)の箱ひとつ買うだけでブルーレイ並みの高画質でネットやiTunesやNetflixの映像が楽しめる新Apple TV。ディスクの存在を脅かす初の製品というわけじゃないけれど、血管1本切るぐらいのダメージは与えられそうですよ。

何が注目なの?

茶の間でTVに差し込んで使うストリーミングボックスではApple TVが依然ベスト不動です(次点はRoku)。今回は長らく待望の1080pの動画配信がiTunesでスタートし、映画ストリーミングの最高標準というだけじゃなく、物理メディアの王者Blu-rayに対抗しうる力を初めてつけたことで注目を集めています。

オーディオの世界でCDが廃れた時から将来が危ぶまれてきた映像ディスクですが、それを早める製品かもしれない、ってことですね。

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好きなところ

Apple TVは前モデル同様、MoMAに飾っておきたくなるようなミニマリストの芸術品。フォルムは前とそっくりんこ、設定が楽なところも一緒です。電源に差し込んで、HDMIケーブルで繋いで、おしまい。リモコン同梱。A/Vコントロール復活。プロセッサをアップグレードし、圧縮を改善したことで、1080pの高画質の動画にも対応しました

120321AppleTV_b.jpg
まあ、HDで観てもTV番組・映画によっては違いが出るものと出ないものがありますが、違いが分かる時には顔のうぶ毛、皺、毛穴が飛び出して見えます。ライン、質感も出てるし、文字もずっとシャープ。ピクセルが増えたぶん細部もよく出てますね

鮮明さでBlu-rayにほぼ並ぶものがiTunesのクラウドから直接ストリーミングできるのは、嬉しい限り。

好きじゃないところ

「ほぼ並ぶ」、つまり「互角」ではありません(これはArsに載ってるBlue-rayとiTunesの比較写真がわかりやすい)。Blu-rayのフル映画の巨大な容量のファイルをストリーミングするなんて今のネット接続スピードでは土台ムリなのです。ロスアラモス国立研究所のWiFiとか、ケーブル会社の人とねんごろになるとかしない限りね。アップルはソフトの技で近道をして最小の容量で最大の結果を引き出そうとしてるのですが、Blu-rayが何十ギガバイトも保存できるのに対し、iTunesの1080pはたったの数ギガバイト。作品によって良く出たり、そうじゃなかったり、水物なんです。

例えば、鮮明な色、明るさ、深み、夜のスピードシーンが堪能できる映画「Drive」(日本語解説)のiTunes版では、この「近道(圧縮)」が目でわかるほど出ちゃってました。質の悪いJPEGのようなもので、ストリーミング中、映像にシミや歪みが出るんですね。特に高速モーションや暗いシーン。「Drive」はそればっかりみたいな作品なので。iTunes版ではゴスリンのあごとかオーナメントはレンダリングできてましたけど、不快なカラーの縞々がLAの空、ダスト、街の灯りにずっと入って見えました。光量が十分ある明るいシーンでも、壁の模様や森の細かいところがボケて、カラーのシミが入ってました。

一方、Blu-ray版(PS3で視聴)でボケて見えるのは、街を覆う本物のスモッグだけ。つまりアーティファクトや圧縮のアラは文字通りゼロです

全部こうではないし、探してるから目に付くっていうのもあるけれど、差は厳然とあります。

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あ、あと、新しいメニューのことも書いとかなくっちゃ...。新メニューは新モデル独占じゃなく、旧モデルのApple TVもソフトウェアのアップデートをダウンロードするだけで取り込めるんですけど、これがなんとも使いにくいのです。iPhoneのホーム画面コピーしたような感じで、前の上品なテキスト主体のUIが派手なアイコンに変わっちゃって、見た目ダサいのもあるけど、ナビしづらくて。削除したくても削除できないアイコンもあるし。Netflix直行したいのに、見たくもないアイコンをズイーッとスライドしてかないと辿りつけない...それも「これ以上ボタン削れないところまで削りました」のリモコンで... これは辛いです。将来Rokuのようなチャンネル(日本語解説)導入できるスペース確保したんでしょうけど、今は見た目的にも機能的にもすねキック~! という感じ。

買い?

そんなアグリーなインターフェイスではありますが、Apple TVはまずこの種のボックスでは一番です。画質も上がって、ストリーミングボックスとしてだけじゃなく、Blu-rayプレイヤー買い控え(or放棄)の理由にもなり得る製品となりました。カウチから好きな映像をカタログ(品揃えは薄いかも)からササッと選ぶとバファーして再生してくれる、この一連の流れに淀みがなく最高ですよ。

未来を先取りしたい人は今が買い。もはやディスクは純粋主義者だけのものになってしまった感がありますね。完璧を求める人にはBlu-rayがやはり一番ですけど、自分がそこまで求めるかどうか、ですよね。CDの再現性を犠牲にしてMP3の便利さを取って満足な人は、案外この新Apple TVでも満足かもしれません。

Apple TV 2012

• サイズ:0.9 x 3.9 x 3.9インチ(23×98×98mm)

• 重量: 0.6ポンド(272g)

• プロセッサ:Apple A5 (シングルコア)

• メモリ:512 MB

• 動画: HDMI最大1080p

• 音声: HDMI、光学式オーディオ

• 接続:イーサネット、WiFi (a/b/g/n)

• Gizrランク: 4星(5段階評価)

• 価格: 100ドル(8800円)

動画:Apple TV review (2012) | The Verge

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SAM BIDDLE(原文/satomi)