しばらく使ってみて、考えました。
新しいiPadとは何なのか、まとめてみると、こんなことが言えると思います。- 愛すべきモノ
- スペックが向上
- ホームコンピューティングの未来
- 市場にある中でベストなタブレット
ただ正直、
- プレスカンファレンスするほどでもない何か
だったような気もします。
僕らは新しいiPadをもう1週間以上使いまくりました。たしかにRetinaディスプレイは素晴らしいです。それにA5Xプロセッサだって、タブの読み込みやゲームの表示が速くて驚きます。あと、異常に高速なLTE接続にいたっては、僕の家のケーブル接続でさえかすんでしまう勢いです。それにデザイン上の美しさも相変わらずです。
ただ...。これまでiPadを持っていた人や、少しでも触ったことのある人にとっては、何かこう足りないものがあるんです。これはアップグレードであって、革命的というよりは、まるでオプションを追加したような感覚なんです。
そこがすごく、ひっかかっています。
新しいiPadの位置づけ
新しいiPadは、同じ金額で買えるタブレットの中ではベストの存在です。ただ初代iPadの時代と違って今はAndroidも存在感を増しているし、もっと高価でパワフルで速いタブレットだってあります。でも、それらはメインストリームではありません。
iPadが生まれて2年が経ち、無数のAndroidデバイスがやって来てはいなくなっています。そんな中、もっとも洗練されたモバイルOSであるiOSや優れたインダストリアルデザインによって、iPadが相変わらずトップなのです。
でも今、課題が生まれつつあります。iPadはクルーズモードに入っていないでしょうか? 今はまだ先代の名声や優れたソフトウェアという遺産で十分食べていけています。でもそのデザインはもう新しくないし、さらに今回は薄くならずに若干ながら厚くなったという点で、ジョブズの法則に反しています。競合他社にとっては、今はアップルの牙城を崩すチャンスに見えているんじゃないでしょうか。
良い点
スワイプ、タップ、プレイ...。タブレットの動かし方はみんなが知るところになりました。それは素晴らしいことです。iOS 5.1は非常に洗練され、成熟しています。タッチにはすぐに反応し、読み込むときすべてにデュアルコアの速さが感じられます。増強されたRAMのおかげで、複雑なWebページを複数タブで開いたって平気です。
初代iPadと新しいiPadの性能上の違いはすごいです。でも、iPad 2と比べると、ものすごく重いアプリを動かしたりしない限り、違いはよくわかりません。たとえばゲームアプリのReal Racing 2 HDでは、新しいiPadの方がiPad 2より平均6秒速くロードできました。ただ、米Gizmodoみたいなすごく画像の多いサイトの読み込みとかNetflixみたいな定番アプリでも、違いは無視出来る程度でした。
2048 x 1536ピクセルのRetinaディスプレイは、色、シャープネス、彩度の向上で、コミックとか高解像度の写真とかはありえないくらい良く見えます。テキストだって、他のどんなデバイスよりもシャープに見えます。電子書籍専用端末の方が目に優しくはありますが、それはスクリーンからの光のせいです。電子ディスプレイという意味では、これ以上のデバイスはどこにもないと思います。1920 x 1080のHDTVよりたくさんのピクセルが、この小さな9.7インチディスプレイに詰まっているんです。50インチのフラットスクリーンよりも多く、です。その差はドラマティックに思えるほどです。...ときどきは。
普段は、正直別に意識しません。iPad 2のディスプレイがだめだったというわけじゃないし、他のタブレットにしたって、ピクセルを見分けようと至近距離でまじまじと見たりは普通しないですし。Retinaディスプレイそのものは、間違いなくアップグレードです。が、別に絶対必須かというと...。好きじゃないところ
バッテリーが大きくなったので、新しいiPadはiPad 2と同じくらい長く使えます。アップル自身が発表している「10時間」は、リアルな使い方をしたり、何日もスタンバイしたりしても持ちます。でも、充電時間に関して違いました。僕らのテストでは、新しいiPadの方が最大2倍、9時間もかかりました。つまり、一般的な人ならiPadを寝るときに充電開始して、朝起きたらフル充電、かと思いきやちょっと足りないということが起こりうるんです。これは困ります。
また、発熱問題もあります。46℃なので、やけどするほどじゃないですが、ずっと持ち続けたり、ひざに載せていたりするのはつらいです。これは、持って使うタブレットとしては問題です。
また、カメラとしてもオススメしません。アップルでは勧めているようですが...。アップルは背面カメラの「iSight」のために1年がんばって画素数を5メガピクセルにし、赤外線フィルタやサイドイルミネーションも入れて、iPhone 4Sと同等に持って来ました。つまり、雑誌と同じくらいのサイズの高性能デジタルカメラになったんです...が、それってやや微妙です。
一方、iSightががんばっているのに対し、Facetime用の前面カメラは依然VGAのままです。Facetimeでは、遠く離れた友だちや家族とも顔を見ながら会話ができて、テクノロジーが生活を変えられるんだなって感じられます。でも、その素晴らしい体験の質は、そういう意味ではiPad 2と同じにとどまります。
でも最大の問題は、買う側に生じる罪悪感です。もしすでにiPad 2を持っていて新しいiPadを買ったら、感じざるをえません。あのもやもやした感覚、すでに持っているものと大して変わらないものに何万円も払ってしまった...という感覚です。新しいiPadに関するハイプを額面通り受け取っていたなら、新しいiPadには奇跡を期待していたことでしょう。でも、そうじゃなかったんです。それは単に「売るための戦術」というにはちょっと度を越していて、そのあたりもアップルの変化が感じられるところです。アップルには、大きな約束もちゃんと守ってくれる歴史があった、と思っていたのですが。
買うべき?
まだタブレットを持っていなくてタブレットがほしいなら、新しいiPadを買うべきだと思います。でも、コミックブック大好きとか、前世代のiPadでやたら読書をしていたとかでなければ、iPad 2からアップグレードする理由はないと思います。別に悪く言ってるわけじゃなくて、単純にそんなに大きな違いがないんです。たしかに、比べればより見やすい、速い、とかはあります。でも残念ながら、新しいiPadは、期待したほど「新しい」ものじゃなかったんです。Joe Brown(原文/miho)