米共通テストの奇問「パイナップルとうさぎ」受験生の反応&原作者が明かす正解

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米共通テストの奇問「パイナップルとうさぎ」受験生の反応&原作者が明かす正解

先日NY州共通テストで出た奇問「パイナップルとうさぎ」の原作者ダニエル・ピンクウォーター(Daniel Pinkwater)さんのところに悩める受験生から「答えを教えてくれ!」と問い合わせが殺到、悲鳴をあげています。

読者のみなさまもスッキリしないと思うので、沿革と現地受験生の反応、原作者の解説・回答を補足しておきますね。

原作は「うさぎと茄子」。出題は6年前からあった!

「パイナップルとうさぎ」はピンクウォーターさんの童話「BORGEL」で111歳のじいちゃんがバスに揺られながら子どもに語り聞かせる小話「うさぎと茄子」がベース。

テスト制作会社が茄子をパイナップルに置き換え、「袖がない」のオチを文末に太字で加え、倍の長さの文章題にアレンジしたものが「パイナップルとうさぎ」です。

調べてみたら、実は2006年頃から何度かバージョンアップを重ねながら(さすがに毎回同じではまずいので)、あちこちの州の共通テストでリサイクルされていたんです! で、どの州でも騒ぎになってます。今回これだけの騒ぎになったのは受験競争激化の影響もあるけど、やはり場所がNYだからでしょうね。

現地の中学生の反応は?

2007年にイリノイ州共通学力テスト(ISAT)で出たときの記事に歴代受験生のコメントがついてるので、ピックしておきますね。

・(これは本文)試験の途中で「誰も賢いこと言う奴なんかいないじゃん」と教室がザワザワし始めて先生が何度もシーッと黙らせてた。後で出題読んだ先生も呆然として真顔維持するのが大変そうだったよ。(2007年3月)

・ニューメキシコのテストにも出た!(2007年3月)

・同じ問題、2006年に見たよ。フロリダ州の学力テスト(FCAT)だけど。変な問題だねってトイレ休憩はその話題一色で、友だちと答え合わせしたら賢い動物はみんなバラバラの選んでた。(2007年4月)

・原作者のサイトに質問してる人がいたけど、「なんせ沢山書いてて、記憶にない」って答えてたよ。ハーブで意識エンハンスしながら書いたんかな。(2007年12月)

・14歳。すごい沢山の人が回答のこと言い合ってて面白かったです。私の出題はイリノイのとは違って「一番賢い動物はどれ? ふくろう、ヘラジカ、うさぎ、パイナップル」という4択。私はヘラジカ選びました。「パイナップルに袖ない」って言ったのヘラジカなんで。(2008年4月)

・8年生のSAT(アメリカのセンター試験)で出ました。(2009年4月)

・テストに出たのでネットで回答調べてるとこです。私と友だちは「お腹が空いたから」にしたけど...。(同)

・アーカンソー州の試験で出ました。友だちと笑いが止まらなかった。(同)

・8年生のFCATで出ました。こういうランダムな文章題ありますよね。この前なんてリスに話しかけたいのに話しかけられない男の話でした。一度、鳥に話しかけて交尾のし方教えようとしたら鳥が怒って襲いかかってきたんで、また拒否されたらと思うと怖くて話しかけられないんだそうです。WFT!?! こういうアホテストはそんな気にしなくていいですよ。(2009年4月)

・デラウェア州のテストで出ました。意味不明!(2010年3月)

・アラバマも出ました!(同)

・アラバマ在住。2日前、SATの読解で出ました。これまで受けたテストで一番好き。(同)

・今日Benchmark試験で出ました。アーカンソーの8年生です。学校中この話で一日もちきりでしたよ。僕は「袖がない」と言ったフクロウが一番賢いと思ったけど、ここ読んだらちょっとずつ話を変えてきてるんですね。僕はうれしかったけどな、この問題まで試験は退屈の連続だったので!(同)

・アラバマのSATで出ました。(2011年3月)

・NYのELAで出ました。みんなでパイナップル食べたところで吹きそうになりました。6歳の読解レベル(2012年4月=今回ニュースになったテスト)

・NY州共通テストで今日出ました。クラス中がWTF!? って感じで顔見合わせてました。(同)

・賢いのはカラス。食べたのはお腹が空いたから。2時間ただ待ちぼうけしたんだから腹ペコかと...みんなは「ムカついたから」にしてましたけど(同)

・賢いのはフクロウ。「袖がない」というオチを誰よりも先に言ったから。(同)

・食べたのはムッとしたからで、賢いのはうさぎ。競争してもしょうがないの知ってたのはうさぎだけだし。フクロウは誰にでもわかること言っただけ。(同)

・オチを言ったフクロウが一番賢い。(同)

・みんな1日中、フクロウかヘラジカかで議論になってました。私はわからないのでヘラジカにしました(同)

・自分は、あんま人気ないようだけどウサギ。与えられた中では一番現実的で正しい選択じゃないかと。みんなオチ言ったのはフクロウだからフクロウ選ぶのはわかってるけど、ヘラジカがモノの喩えで言ったことをフクロウは言葉尻捉えて返しただけって解釈も成り立ちますよね。フクロウが本気でトリックないと思ってるんなら何故みんなと一緒にパイナップルの応援に回ったのか? みんな深読みし過ぎな中、ウサギだけは現実を見ていた。自分が勝つこと分かってたのはウサギだけで、他の動物はみんな自分がバカに見えるのが悔しくて何故か南国の果物応援してたんです。まーしかしどれ選んでもそれなりに擁護が成り立つので殺人的な出題だよね。採点にカウントされないといいですね。

・5回読み返しました。(同)

・ウケたんだと思います。賢いのはフクロウ。でも修士号持ってる先生もわかんないみたいでしたよ。(同)

・フクロウとカラスとヘラジカとウサギでクラスが4つに割れました。(同)

・空腹、ムッとした、で割れました。(同)

――

因みにNY Daily Newsによると、原作者ピンクウォーターさんのところに舞い込む問い合わせは以下4パターンに大別されるそうです。

1)なにあれ? ハイになって書いたの? バカ?

2)どの選択肢もしっくりこない。正解は?

3)わけわからい。頭くる。

4)お~NY州もやるなあ!

このうちピンクウォーターさんが好きなのは4)だって。

原作者が考える正解

で、気になる正解ですが、ピンクウォーターさん自身、最初の「うさぎと茄子」から全くかけ離れたストーリーになってしまってるので、答えはまったくわからないそうです。WSJのインタビューでこう語ってますよ。

[...]元々こういう意味に解釈しなきゃならない、という具体的なものはないのだよ。

テスト作る人が僕みたいなナンセンス提唱者の文章使うんだから傑作だよね。物事には意味があるとは思うが、こういう意味に解釈しなきゃならないというのはない。

人は物事に公式が必ずある、と思いがち。そんなおぞましい傾向に細々と反旗翻すために僕はこの地球上にいるのさ。「これこれやったらきっと大統領に選ばれる」―まさかそうはならんだろう。「これこれやったら自分のアートは素晴らしい作品になる」―とは限らん。「このレシピの通りつくったら美味しい料理がつくれる」―たぶんね。

数学でもなければ、世の中のほとんどのものには公式なんてもの、ないのさ。

聞き手:あのテストの問題、答えられますか?

もちろんNO。あれは禅問答だから。禅の坊さんが「手を叩いて片手の音は聞こえるか?」と訊くようなもんだね。さっさと答えないと棒で叩かれて、ほんで悟りを得る。あのテスト作った会社もなんかそんなようなの思い描いてたんじゃないかな...と思いたいところだけど、実際はなにも考えてなかったんだろうな。

あと文章面白いんで気に入って、ちょっと面白くない文章(プロの目でみた私見だけど)に書き直してテストに出題したのかもしれないね、理由もなく。ナンセンスに重なるナンセンスに重なるナンセンス。しかもそのナンセンスについて僕がこうしてウォールストリートジャーナルに話してるというナンセンス。

みんな笑ってましたよって書いてきてくれた子には、「意味不明でだんだん腹が立ってきました」と書いてくる子より、もっと高い点つけてあげなくちゃね。[...]

聞き手:でもせっかくなので出題しますね。どうして動物たちはパイナップルを食べたんでしょう? A)ムカッときたから、B)ウケたから、C)腹が減ったから、D)食べたかったから

社会主義が怖いからに決まってるだろう。ミネソタのおばに会う約束だから。あーあとなんだ、「あんたバカ? 動物喋れるわけないでしょ」って回答もありだね。

次に...一番賢い動物はどれ? A)うさぎ、B)ヘラジカ、C)カラス、D)ふくろう

回答はふたつ。作家か、この文章題書いた出版社さ。

[WSJ, In the Break Room]

Image:NY Daily News

(satomi)