Kickstarterにはもう愛想がつきた

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Kickstarterにはもう愛想がつきた

もうやってられんわ。」と米Gizは言いました。

米Gizmodoでも、ギズモード・ジャパンでもKickstarter発のプロジェクトをたくさん紹介してきました。自分も欲しいと思うものから、ネタみたいなものまでKickstarterには実に多種多様なプロジェクトが存在しています。触発されてたくさんのソーシャル資金調達プラットフォームも登場しました。例えば、ポルノ専用なんてのもできました。そんなソーシャル資金調達界の先駆者と言えるKickstarterに、米Gizのジョー記者が「うんざりだ」ともの申しております。今後、米Gizではネタにする以外でKickstarterのプロジェクトは紹介しない方針だとアナウンスしています。米Gizがここまで愛想をつかしたKickstarter。ジョー記者が言う、その理由とは?

もういい。飽きた。Kickstarterが蔓延する世界にはお腹いっぱいだ。元々、僕はへんてこなガジェットが好きだった。その理由は、どんなへんてこなガジェットだって、その裏には優秀な人々や計画やアイディアや、とにかく何かがあると思っていたからだ。絶対にある、という自信があったからだ。

が、それはもう過去のこと。Kickstarterによって、僕は革新というものにすっかり愛想がつきた。

僕は、前サンフランシスコに住んでいた。サンフランシスコと言えば米国スタートアップのメッカである。そこに住む誰もが世界を変えるようなアイディアを持っており、そのうちの半分は実際にそれを実現しようとがんばっていた。それは実に素晴らしいことで、その情熱のおかげでサンフランシスコの夏の肌寒い陽気の中でもいつも温かい気持ちでいられたのだ。

ヒラメキ、それが僕がKickstarterを愛した理由の1つだ。サンフランシスコの街がそうだったように、Kickstarterにはあちこちにヒラメキがあった。サンフランシスコと唯一違ったのは、ヒラメキを形にする方法だ。サンフランシスコでは、親に頼み込んでお金を借り小さなアパートに引っ越して、友達の助けを借りて何ヶ月も耐えに耐えて試作品を作る。そしてそこから商品化するために、話を理解してくれる人を探しだして説得して、なんとかして資金を調達してこないといけなかった。多くの人間がここで壁にぶち当たった。そしてまた、成功した者も多くいた。支援と賢いアドバイスの元に、彼らの描いたアイディアが商品化され世界中に送り出されていった。

こんなこと、Kickstarterで起きていると言えるだろうか。Kickstarterで製品化のために説得しないといけない相手は、ひどく楽観的でマヌケな集団だけだ。そして僕もその1人だった。僕も今までに数多くのKickstarterプロジェクトを支援した。その中で、今でも支援したのを後悔していないのはたった3つだけだ。

これ以上、iPhoneドックやケースなんていらない。カメラにローラースケートくっつけるのも面白いかもね、iPod nanoの時計にするなんてありふれたアイディアもあるかもね。栓抜きを何かにプラスするだけで新発明なんて言えるなら楽なもんだよね。言ったもん勝ちだ、そんなことわかっている。ただ、もうそんなのやめてくれよ、と思うのだ。

毎週何百というプロジェクトが起きている。時には週に数千ということもあるだろう。初めは、Kicksatrterに興奮したものだ。それは、世界が必要としているのに今まで誰も考えたことがなかった夢のような製品を現実にするために、どこかの革新的な天才が現れると私たちが思っていたからだ。もしかしたら、当初は実際そうだったのかもしれない。が、今はもう違う。今は、しょうもない動画としょうもない演出と粗悪な試作品の海になってしまった。中には良いものもあるだろう。が、大部分はしょうもない。さらに中には、支援と交換に約束された品物を届けることさえしない詐欺まがいのものまである。(実際に僕も詐欺プロジェクトを体験したことがある。)

初めに派手に興味を引きすぎるのだ。本当は、もともとあったものをちょっと変えただけのしょうもないものだってたくさんあるのに。似たり寄ったりのものばかり。Kickstarterがプロジェクトを精査してレベルの低いプロジェクトを排除しない限り、僕はこのしょうもないものばかりがあふれる海から、足を洗おうと思う。

そう、今日からもうこの海から抜け出そう。Gizmodo(米Giz)で今日からKickstarterの紹介を見ることはないだろう。あったとしてもネタにするくらいだ。Kickstarterが、サイト内のプロジェクトを精査して質を向上させる方法を見つけないかぎり、僕たちはもう紹介しない。僕たちはみんな驚く様な発明が好きだ、しかし今のKickstarterはスパムに近いものがある。ノイズが多くてしょうもないものばかりが生まれている。

この決断のツライところは、本当にKickstarterの中にある極わずかの素晴らしいプロジェクトをも見逃してしまうことだ。しかしそれも仕方が無い。これからまた、Kickstarterが紹介したいと思えるプロジェクトで溢れるようになってほしい。この世界では、信じられないソースは使わない。そういうことだ。

なかなかエクストリームな米Gizの決断ですね。米Gizらしいと言えばそうなのかもしれません。これに対する米Giz読者のリアクションの多くは否定的なもの。

「飽きた系の記事も落ち着けよ。そんなこと言てったら来年にはネット上でこれ以上飽きるものなくなってるぞ。」

「トレンドが『最初に始めた』から、『最初に飽きた』になってるだけ。」

「Gizも人のこと言えないって。」

「今までのGizのKickstarterの記事、いいやつもあったじゃん。馬鹿っぽいプロジェクトが多いからサイトそのものをもう見ないってのは、無責任じゃないの? その中からフィルターにかけていいものだけを紹介すればいい話でしょ。」

「支援するかどうかを決めるのは、自分だろう。」

読者の意見も理解できます。心情的にはそっちよりなのですが、このジョー記者の記事は社説のようなもの。米Gizはこの立ち位置で行くということ。米Gizは、Kickstarterが大好きなんですよ。大好きだから、期待も大きいしがっかりすることも多い。大好き故の厳しいムチなんだ、私はそう思います。

そうこ(JOE BROWN 米版