【閲覧注意】脳を喰う条虫は本当にいる(写真&解説)

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【閲覧注意】脳を喰う条虫は本当にいる(写真&解説)

思わず二度見...。

有鉤条虫と言えば、腸に寄生して、大きいもので体長50フィート(15.24m)まで成長して胃腸に悪さをする虫ですが、あれって下手すると脳までニョロニョロ入ってしまうこともあるんですね。

これがその証拠、有鉤条虫に巣食われた脳の写真です。

朝から別口で回ってきて気持ち悪くなってしまったのですが、以下、詳しい解説続きます。もっと気持ち悪くなるので弱い人は読まないように。

脳の有鉤条虫とは?

有鉤条虫が脳に達して起こる神経系の寄生虫感染症は「神経嚢虫症Neurocysticercosis、NCC)」と呼ばれます。感染した脳の神経の写真を見ると、まるで日なたで腐っていく虫喰いリンゴ。ぶどうのような白っぽい腫瘍が随所にできており、虫が頭蓋に穴を掘って這い回ったかのようです。

どう脳に入るのか?

ふつう条虫感染「条虫症(Taeniasis)」は豚と人の接触で起こります。よくある感染ルートは完全に火が通ってない豚肉。これを食べると腸に留まり、そこに何千個もの卵を産み付け、卵は断続的に便に混じって体外に出ます。

で、豚が便に汚染された餌を食べると、豚の体内に入ります。

そこで卵が孵って、幼虫が豚の血に入り、細い血管の中や筋肉組織の中に棲み着き、それを人間が食べると、幼虫が今度は食べた人間の血に入り、巡り巡って脳にゆき、脳室内で大きくなって嚢胞(写真のぶどう状のもの)を形成。←ここで初めてNCCの症状として認められる、というわけですね。

次回ポークチョップ食べる時は火が通ってるかダブルチェックをお忘れなく。

どんな症状が出るの?

条虫で脳の液体の流れが滞ると、脳に水が溜まって水頭症(脳水腫)になる恐れもあり、これが引いては脳ヘルニア、脳卒中、昏迷(知覚まひ)、昏睡を起こし、最悪の場合、死に至るのです。

卵から成虫になって死ぬまで、まったく宿主は知らずに過ごしちゃうこともあります。

虫も不死身じゃないのでいつかは死ぬんですが、死んでひと安心と思ったら大間違い。脳の条虫の死がキッカケで宿主の体に免疫反応が起こると、脳腫脹や発作になったりするので要注意です。しかもこうした問題は寄生虫が死んでから何年も続くのですよ、嚢胞は石灰化して残るので。おのれ、条虫。

でも、珍しい病気なんでしょ?

NCCは主に衛生インフラが整備されていない途上国で起こる疾患と言われますが、他の脳疾患に誤診されるケースも多いため、実際は発症頻度は掴みづらいのが現状です。NCCと断定するのには、状況証拠(同じ世帯内に条虫感染者がいる人はNCCを発症する場合が多い)と、この病気に顕著な頭蓋の穴を捉えたMRI、この両方が揃ってないと十分な証拠とは言えないんです。

Discover Magazineの記事では、アメリカ国立衛生研究所(NIH)胃腸寄生虫部門チーフのセオドル・ナッシュ(Theodore Nash)氏が米国内で1500〜2000人がこの病気に罹っている、と見積もってます。が、実際の数はこれよりずっと高い可能性もあるし、本当のところは彼らにもよく分かってないんですね。

ナッシュ氏は同僚と一緒に主に南米の状況を血液検査・CTスキャンで調べているのですが、南米の疾患者数は100万~2900万人にも上るといいます。世界が抱えるとても重要な衛生問題だし、もっと注目されるべきだと氏は話していますよ。

治療はあるの?

これが微妙で、'80年代半ばに開発されたプラジカンテルという薬があることはあるんですが、Discoverの記事にもあるように、この脳内で条虫の幼虫を殺す薬は、強過ぎて腫れが悪化する人もいるという問題を抱えているんですね。そのため現在ナッシュ氏のような医師たちが注力しているのは、豚の予防接種や、腸に条虫がある段階で患者さんに投薬することで脳への侵攻を食い止めるといった予防策の方だ、ということです。

自分が罹ってる心配は?

だぶんありません。米国や他の先進国にもNCCにかかる人はいますが、やはり第三世界の方が発症率は高いので。

だからと言って完全に忘れていいかというと、そういうことでもないので、まあ、普段から常識の範囲で、火の通らない肉は避ける、不衛生な場所での食事は避ける、調理・食事の前には必ず手を洗う、それぐらいの心がけはしておきましょうね。

脳が虫喰いになりたくなかったら。

[Discover Magazine, eMedicine, CDC]

Image credit: Theodore Nash/Discover Magazine

LESLIE HORN(原文/satomi)