1990年イギリス―
モーリス・ワード(Maurice Ward)という、あるひとりのアマチュア発明家がTV出演し(動画上)、ある超素材を披露しました。科学を実地で学んだ経験もないワードが独自に発明したその素材は、名付けて「スターライト(Starlite)」。
1000度の高温に耐え(これを塗りつけた卵は割れない。動画の1:05-)、壁に穴が開くほど硬く、表面に塗りつけるのも簡単。そんな夢のマテリアルです。
ところが2011年、ワードは学界の誰にも詳しい話をしないまま、この世を去ってしまいます。そしてそれはスリルとサスペンスの物語の始まりでもありました。
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という後日談を追う特集が今月ニュー・サイエンティストに出ています。報告はリチャード・フィッシャー(Richard Fisher)。科学とストーリーテリング、ふたつの要素が見事に絡み合って最高に読み応えのある記事です。
これを読んで、極一握りだから目立たなかっただけで、1990年のデビュー以来、スターライト(Starlite)がその道に詳しい世界中の専門家からマークされてたことがわかりました。20年の間に民間の会社、防衛の専門家、果てはNASAとも話し合いを持っていたというんですから、その関心たるや想像以上です。
もちろんアマチュアの言うことですから、最初は半信半疑の科学者も大勢いました。でも時が経ち、実証試験が何回も行われるに従い(もちろんワードの厳しい監視の下)、最初懐疑的だった科学者も態度を軟化。しまいにはスターライト(Starlite)をちょこっとでいいから分けてくれ、と欲しがるようになるんですね。
ところがワードはガードが堅くて、ちょっとやそっと甘い言葉かけるぐらいじゃ落ちません。力をちらつかせても、お金をちらつかせてもダメ。岩。結局、秘密を教えるほど心が許せる相手にはついぞ出会えぬまま2011年5月、ワードは秘密を墓場まで持っていってしまうのです。
まだ希望はありますけどね。記事にもあるように、ワードは死の直前に行われたあるインタビューで、「スターライト(Starlite)のレシピは家族が知っている」と漏らしているので...。
ところがワードの遺族というのがこれまたガードが堅くて絶対口を割らないんでございますよ!
そんなわけでスターライト(Starlite)の未来はまだ未知数、宙ぶらりんこ、なのでした。
JAMIE CONDLIFFE(原文/satomi)