今は待ち、と。
iPad mini発売から1週間ちょっと経ちました。でもタブレットはもう持ってるし、iPad miniってどうなのか様子見...という方も多いかもしれません。米Gizmodoのバレット記者が、Kindlw Fire HDとNexus 7も同時期に使い比べながらレビューしていますので、実際どんな風に感じるのか見ていきましょう。以下、バレット記者による記事です。
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フルサイズのiPadは高すぎるし、Kindle Fire HDやNexus 7はチープすぎる。そんな中間を埋めるように、iPad miniが登場しました。1週間使ってみて思うのは、iPad miniは美しいけれど、欠点もあり、突き詰めるとわざわざ手に入れる必要もないんじゃないか、ってことです。
iPad miniとは
1年前なら、小さいタブレットはあくまで派生物のひとつであり、初代Kindle FireやGalaxy Tab、その他iPadと正面切って勝負できない企業の作ったミニサイズの失敗作がごろごろしていました。子供用プールが空いてるのに、わざわざジョーズのいる海で泳ぐことなんてない、そんな雰囲気でした。
でもあるとき、意外なことが起きました。今年6月、グーグルがNexus 7という小さいタブレット史上最良のタブレットに、最大の馬力を詰め込むことに成功したのです。続いて9月には、アマゾンのKindle Fire HDもそのエコシステムの全パワーを7インチタブレットに注ぎ込んできました。どちらも完ぺきではありませんでしたが、たった200ドル(米国価格、約1万6000円。日本ではNexus 7が1万9800円、Kindle Fire HDが1万5800円)という価格には抗いがたい魅力がありました。すると徐々に、スティーブ・ジョブズが一笑に付したことで知られる7インチタブレットがアップルの市場シェアを奪い始めました。そしてついにアップルも自社タブレットの小型版を打ち出して応戦せざるをえなくなったのです。
会社の事情としては、グーグルもアマゾンもハードウェアの利益度外視でやっているのにとか、アップルが他社の後追いするのはどうなんだ、みたいな議論もありますが、それはひとまず置いておきましょう。安価で便利な小さなタブレットは、今後しばらくテクノロジーの激戦区になりそうだ...なんて話も今はしません。みんな大事なことですが、それらについてここで深入りする必要はありません。
iPad miniが今大事なのは、小さなタブレットが今年の年末商戦で売れまくろうとする中、多くの人は間違ったものを買うと思われるからです。そしてアップルが、グーグルやアマゾンの対抗機種の1.5倍以上の価格をつけているからです。そしていくつかの意味では、iPad miniはアップルが作った最良のiPadだからです。
デザイン
iPad miniはすごく魅力的なタブレットです。それは議論の余地はないでしょう。個人の好き嫌いとか趣味を超越して、魅力的なんです。
アップルのティム・クックCEOは、iPad miniは7インチタブレットじゃないと主張していますが、それは対外的にそう位置づけているだけか、引き下がれないから言い張っているだけかのどちらかです。Kindle Fire HDよりディスプレイの面積は大きいですが(7.9対7です)、いずれもフットプリントはびっくりするくらい近いです。Nexus 7は若干細身ですが、みんなだいたい同じようなサイズ感です。
iPad miniが他と違うのは、iPod touchと同様にタテのベゼルがすごく細いことです。iPad miniをポートレートモードで持つと、画面横のベゼルの幅は、親指はもちろん爪の先ほどもないんです。これはちょっと指の置き場がない感じだけじゃなく、不安な感じさえあります。タブレットがするりとどこかに行ってしまいそうな気がするんです。
また厚さは7.2mmで、他のどのタブレットよりも薄いです。iPhone 5が軽すぎる(と感じる)ように、iPad miniは薄すぎるんです。ただ、薄っぺらい感じはありません。しっかり、がっしりした感じがします。それは手に持ちやすいアルミの背面によるところが大きいでしょう。
ひとつデザイン上で疑問に思うのは、(シャカシャカした音の)スピーカーが底面に、Lightningコネクタをはさむように付いていることです。つまりランドスケープモードにすると、スピーカーを手で覆ってしまうことになります。つまり、映画とかゲームには適していません。
他はおなじみのものばかりです。ホームボタンが前面にあり、ボリューム調節ボタンが側面に、ヘッドフォンジャックと電源ボタンが上面に。iPadと同じです。そういう意味では、これまでで一番かわいいiPadです。
使用感
まず「おおっ」と思うのは、驚くほど片手で使いやすいってことです。当然のことのように聞こえるかもしれませんが、そうでもありません。ベゼルが細くてディスプレイは大きいので、そのへんに置いてあるのを見ただけでは、実際より大きく、扱いにくそうに見えるんです。でもiPad miniは見た目ほど大きくないし、軽くて完ぺきなまでにバランスがとれています。
iPad miniはスマートで、指がただディスプレイに触れているだけなのか、タップとかスワイプをしようとしているのかを判断できます。これは、ポートレートモードだと手の置きどころがなくてつねにスクリーンに触れがちなので、よく考えられた機能だと思います。でも僕のデフォルトの持ち方は、タブレットを手のひらでちつつ、親指で軽く側面を支える持ち方です。Kindle Fire HDとかNexus 7では、こんなふうに無造作な持ち方は(少なくとも僕は)できませんでした。
iOSデバイスを使ったことがある人なら、iPad miniの操作は簡単です。製品固有の使い方みたいのはありません。僕自身心配してたのは、4本指スワイプみたいなジェスチャーは小さなディスプレイでは使えないんじゃないかってことでしたが、大丈夫でした。操作に必要な面積は十分にあって、何ならハイタッチだってできます。
でもじっくり使い始めると、プロセッサが追いついてないことに気づきます。A5プロセッサは悪いものじゃありませんが、1世代以上前のもので、もう古さが見え始めています。アプリの立ち上がりには、Nexus 7やKindle Fire HDや最新のフルサイズiPadより数秒余計にかかります。全体的な使用感はすごくスムースなんですが、グラフィックが重いゲーム『Infinity Blade』をプレイしているときとか、何らかのアプリ上でプルして更新しただけで、動きが遅くなることがたびたびありました。イラッとくるほどでもないし、僕以外の人もそうは思わないでしょうが、とにかくそんな状態に気づきはします。
iPad miniはポケットに入れるには大きすぎます。僕はなんとかお父さんジーンズのポケットに入れられましたが、動いたらどこかが裂けそうな感じでした。Kindle Fire HDとかNexus 7だって普通のポケットには入りませんが、とにかく気軽に持ち歩ける感じじゃありません。
でも、それでいいんです。iPad miniはセカンドスクリーンとか、ソファとかベッドでTwitterとかメールとかニュース記事とかちょっとゲームをしたりとかで使うのがベストです。普段の持ち歩きデバイスじゃ不便なときのための、持ち歩きデバイスです。
カメラについても言っておくと、まあ良いです。iPad miniには第3・第4世代iPadと同じ5メガピクセルのカメラがついていて、普段あまり使わないだろうものにしてはちゃんとしたものだと思います。電話の方が良いカメラが付いてますし、目立ちません。電話のカメラを使えばいいんじゃないでしょうか。どうしてもというなら、これはiPad miniで僕の犬を撮ったものです。僕が挙動不審だから、目も合わせてくれてません。
好きなところ
僕はiPad miniの価格については、発表されて以来声を大にして批判してきました。アップルがなぜ競合より65%も高い価格を付けて売れると思っているのか、本気で疑問でした。でも、持ってみてすぐ、それがわかった気がしました。なんとなく。
上にも書きましたが、iPad miniは美しさで競うならタブレットで一番です。Kindle Fire HDもNexus 7もチープではありませんが、iPad miniと見た目という点だけで比べれば雲泥の差です。
しかも外見だけじゃないんです。4:3の画面比率は8.5x11インチ(A4に近い、北米の紙の規格)と同じで、ブラウジングや読書、ゲームプレイがしやすいサイズです。iPad miniを使ったあとでは、WebはKindle Fire HDやNexus 7だと狭苦しく感じるし、フルサイズのiPadでゲームをしたらすごく変な感じがしました。
iPad miniは僕がテストした中で唯一、スペック表以上にバッテリーが長持ちしたガジェットかもしれません。アップルでは平均的利用で10時間としていますが、僕は動画再生を11時間以上できました。強力な旅行の友になりそうです。
でもiPad miniの最大の優位性は、iPad miniそのものとはほとんど関係ないことです。iOSがいかに普及していて良いアプリがどれだけあるかなんて今さら言うのもつまらないんですが、とにかくそれは事実です。Androidは追いつきつつはありますが、まだ近いとは言えません。
好きじゃないところ
まず小さいところから言うと、キーボードが小さくて、ミスタイプしやすいです。それから、iPadで以前から購読している雑誌とかコミックも、字が小さすぎて読めやしません。文字サイズが調整できるアプリなら調整するものだと思った方がよさそうです。すべてがフルサイズiPadの大きい画面に最適化されているので、全部ピンチしながら読むようになります。Kindle Fire HDではこの問題をテキストビューモードで対処しているんですが、iPad miniにはその手の回避策がありません。
ちょっと動作が遅いとか、スピーカー位置が疑問といったこともありますが、そのへんはさほど大問題ではありません。ただ、ディスプレイに関してはどうでしょう。テクニカルに言うと、ピクセル密度がKindle Fire HDやNexus 7の216ppiに対して、iPad miniは163ppiです。その他の点に関しても、客観的に見てiPad miniの方が劣っていることがいくつかあります(詳細は英語ですがこちら)でも、全体的にダメというわけじゃなくてちゃんと見られるんですが、残念なことではあります。
解像度が(相対的に)低いことについて批判されがちですが、たしかにRetinaディスプレイとの違いははっきりわかります。文字も微妙にギザギザが見えて、完全にスムースではありません。4:3のアスペクト比は読むのには良いのですが、動画での見栄えは悪いです。標準の1024x576で再生されるんですが、(1280x720の)Kindle Fire HDとNexus 7との違いが際立ってしまうのもこの点です。
さらに、iPadは読むことに適したサイズなので、ランドスケープモードで映画を見ると、実際の映像以上に(下の画像のように)太く黒い帯が出てしまいます。これはほんとにちょっとどうかと思うところです。
まだ終わりじゃありません。ちょっと暖かい日には外で何か読んだりするかと思いますが、iPad miniは僕が試した中で一番反射しやすいディスプレイのひとつでした。明るさを最大にして、日陰のポーチにいても、ほとんど何も見えませんでした。
「Retinaディスプレイ使ったことなければ、ほとんど気づかないよ」って説もよく聞きますし、たしかにそうだと思います。が、それはたとえば、BMWの存在を知らなければどんな大衆車だって良い車に思える、というのと同じことじゃないでしょうか。悪い選択肢をなんとか受け入れるには、現実を無視するのが良い方法だと。その悪い選択肢の値段が高いならなおさらです。
買うべき?
どうしてもタブレットがほしくて、iOSにもうたくさんお金を注ぎ込んでいて、動画をあまり見なくて、Retinaディスプレイを使ったことがなくて、お金がたくさんある人なら、買うべきと言っていいでしょう。
でも、そうじゃないほとんどの人は、今は待つべきです。iPad miniは競合より130ドル(約1万400円、日本での価格差はKindle Fire HDとは1万3000円、Nexus 7とは9000円)も高いですが、その分良いかっていうとそうじゃありません。とはいえ、今Kindle Fire HDとかNexus 7を買う必要もありません。来年までには、iPad miniの性能もディスプレイも、その外見の美しさに見合うものになることがほぼ保証されています。この形態にRetinaディスプレイが付いて、文字サイズも小さなスクリーンに最適化されて、プロセッサも高速化すれば、価格なりの価値があるものになるはずです。それまであと1年です。
Brian Barrett(原文/miho)