これ開いたってことは自分は賢いと思って…ますよね? そんなみなさまのために人類史上最も難しい論理問題を選んでみました。
僕自身、Calcudoku(賢くなるパズル)とKiller Sudoku(サムナンプレ)を長年考案してきてるので、世界最難関のパズルはどういうものかなって気になって調べてみたんです。カテゴリ別に探して解いて貯めて、10個揃ったところでやめました。
以下リストには、Sudoku(数独、ナンプレ)とか賢くなるパズルといった馴染みのあるパズル&ゲームもあれば、Bongard Problem(ボンガード)やFill-a-Pixといったあんまり知られてない分野のもあります。
このページにいながらにして解ける問題もあるし、ダウンロードしたり外部サイトに移動して解けるものも。ですが、どれもあなたの解決能力の絶対的限界に挑む難問揃いですんで、何日というのは大げさでも、何時間か潰れることは間違いありません。この僕が保証します。
もっと難しいの探せって? あったら、ぜひぜひ教えてください! 他の論理パズルと企画の詳細は僕のサイト「Calcudoku.org」で。そちらに連絡先もあります。
1. ナンプレ(sudoku、数独)世界最難問
数字は独身に限る、縮めて数独。世界で最も愛され研究されてる数独で世界一を極めるのは、もうそれだけで偉業ですよね。これは2012年にフィンランドの数学者アルト・インカラ(Arto Inkala)氏が考案した「世界一難しい数独」です。
大体の数独の難解度は5段階評価の枠に収まるんですが、英紙テレグラフによると、このパズルはなんと星11つ! 難解度評価の詳しい話は氏のサイトで。
2. 史上最も難解な論理パズル
A、B、Cの3柱の神が召喚された。順不同で真、偽、ランダムで、真は必ず本当のことを言い、偽は必ず嘘を言う。が、ランダムが本当のことを言うか嘘を言うかは完全にランダムである。
YES/NO二択の3つの質問をし、A、B、Cの誰が真、偽、ランダムかを割り出せ。但し質問できる相手は1つの問いにつき1柱の神だけである。
神たちは英語を理解できるが、回答は神の言葉(「da」と「ja」)でする。あなたにはdaとjaのどちらがyesかnoかはわからない。
アメリカの哲学者で論理学者のジョージ・ボーロス(George Boolos)氏が考案し、1996年がんで世を去る直前にハーバード哲学誌(Harvard Review of Philosophy)に「最も難解な論理パズル」として掲載したもので、初出記事はここでダウンロードできます。
ボーロスの補足事項はギズ過去記事。MITのPhysics arXivブログには昨夏ニコライ・ノヴォジロフ氏がもっと難しく修正した話が紹介されてます。
3. サムナンプレ(Killer Sudoku)最難問
日本生まれ。サムナンプレ(Killer Sudoku:キラー数独)は数独に似てるんですが、ヒントはセルのグループ+そのセルの数の和で与えられます。
Calcudoku.orgで難解度最高のパズル(発表日のうちに解答できた人の割合いを目安に評価)を多数抽出してみたところ、余裕で難解度TOPだったのが上のサムナンプレ(2012年11月9日発表)。挑戦したい人はここ。
4. ボンガード(Bongard Problem)最難問
ロシアのコンピュータサイエンス学者ミハイル・モイセーヴィッチ・ボンガード(Mikhail Moiseevich Bongard)博士が1967年に考案した分野。アメリカの認知科学教授ダグラス・ホフスタッター(Douglas Hofstadter)氏がピューリッツァー賞受賞の書『ゲーデル、エッシャー、バッハ(Gödel, Escher, Bach)』で紹介して一挙に広まりました。
上の難問は愛好家ハリー・ファウンダリス(Harry Foundalis)氏のサイトに出ていたものです。左6つの模様に共通するルールを探さなくてはなりません。ただし右6つの模様には同じルールは適用されません。例えばこのページの最初の問題はすぐ解けますよね。左6つの模様はどれも三角です。
5. 賢くなるパズル(Calcudoku Puzzle)最難問
賢くなるパズル(Calcudoku)はサムナンプレ(Killer Sudoku)に似てるんですが、相違点は(1)ブロック内の計算指定は足し算だけじゃなく足し算・引き算・掛け算・割り算すべてあり、(2)マス目にサイズ制限なし、(3)3×3マスのブロックごとに1~9の数字を割り当てるという数独のルールは適用されないこと。発案したのは日本の数学教師宮本哲也(Tetsuya Miyamoto)氏です。
数独と同じ方法で選んだ難易度トップの問題は、こちらの9×9マスのパズル(2013年4月2日発表)。Calcudoku.org常連ユーザーの回答率は9.6%でした。挑戦したい方はこちら。そんな時間(頭)ないぞという方は、clmさんのステップ・バイ・ステップの解き方解説でもどうぞ。
6. Ponder this出題の最難問
24ビットの情報を4ビットのディスク8枚にエンコードするストレージシステムをデザインせよ。ディスクは以下の条件を満たすものとする。
1. 8*4ビットの数を合わせて32ビット数にする(各ディスクから1ニブル[4ビット]ずつ抽出)際、24ビットから34への関数fは5回だけの演算で求めることができ、演算はおのおの可変長整数に対する{+, -, *, /, %, &, |, ~}(足し算、 引き算、掛け算、 整数除算、モジュロ演算、bitwise-and演算、bitwise-or演算、bitwise-not演算)の組み合わせで表される。つまり各演算が所要1ナノ秒だとすれば、関数は5ナノ秒で求められる。
2. もともとの24ビットの情報は、ディスク8枚のうち2枚がクラッシュ(読出し不能となって2ニブルが不良になること)してからもリカバリできる。
IBM研究所では1998年5月からPonder thisというページで毎月難問を出題してますが、正答者の数が最も少ない最難問がこれ(2009年4月発表)。ヒント欲しい方はここ。
7. 加算パズル(Kakuro)最難問
加算パズル(Kakuro)は数独、論理、クロスワード、基礎数学が全部盛り。各ブロックの数字の合計が左(横の合計)や上(縦の合計)のヒントの数になるよう、空いたマス目に1から9までの数字を埋めてゆきます。同じ数字を同じブロックで2回以上使ってはなりません。
詳しい人の話では、世界最難関の加算パズルはConceptis Puzzles出版の本『Absolutely Nasty Kakuro Series』にいろいろ収録されてるとのこと。上の超難関パズルは、この記事のためにConceptisのスタッフが特別に考えてくれました。オンラインでトライしてみたい人はここ。
8. マーティン・ガードナーの最難問
ある数の粘度は、すべての桁を掛けて出る答えが1桁になるまでにかかる積算の回数で表す。それぞれの桁の数を掛け算して出るのが2番目の数で、そのまた全桁の数を掛けて出るのが3番目の数…こうして1桁の数が出るまでやり、出るまでに重ねた掛け算の回数を数えるのだ。
例えば、77は粘度4だ。なぜなら1桁になるまで4回掛け算しなきゃならないからね(77-49-36-18-8)。粘度1で一番小さい数は10、粘度2で一番小さい数は25、粘度3で一番小さい数は39、粘度4の最小数は77だ。では、粘度5で一番小さい数は何?
数学を楽しむことを教え万人に愛されたアメリカの数学者兼科学記者マーティン・ガードナー(Martin Gardner:1914-2010)。その興味範囲は手品、マジック、文学、哲学、疑似科学・超常現象批判、宗教など多岐に及びます(Wikipedia日本版)。著書『The Colossal Book of Short Puzzles and Problems』では幅広い分野のパズルが難易度順に収録されているのですが、この出題は「数」の章収録のもの。
9. 碁の最難問
2500年以上前、中国で生まれた碁。ルールは比較的単純なのに戦略がいくらでも組み立てられる奥深さで知られます(Wikipedia日本版)。上掲のものは史上最も難解な目で、高段位の学習者グループでも解くのに1000時間かかると言われているものです。解き方と参考リンクはここ。
10. Fill-a-Pixパズル最難問
Fill-a-Pixはマインスイーパーっぽいパズル。ピクセル絵が中に隠れてます。ロジックだけを手がかりに隠れた絵の全体像が現れるまで、どのマス目を塗りつぶし、どのマス目は白いまま残すか考えます(解説の動画)。
この上のような上級のロジックが要求されるFill-a-Pixともなれば、2つのヒントが同時にきて互いに影響しあったり、周りのマス目からの影響も受けるので、超大変。
Fill-a-Pixを考案したのは、元高校数学教師で専門サイト「Hanjie」やPuzzler Media出版の英国著名誌各誌の編集長を兼務するトレボー・トルーラン(Trevor Truran)氏。
For Fill-a-Pix解決のルール、高度解決テクニック、歴史はconceptispuzzles.comのGet startedでご覧になれます。上の超難問はこの記事のためにConceptisが特別に用意してくれました。オンラインで解いてみたい方はここからどうぞ。
*本稿はConceptis Puzzles初出記事を寛大なる許可を得て転載しました。Conceptisは世界の出版・電子ゲーム専門メディアに論理パズルを提供している主要サプライヤー。世界の新聞・雑誌・オンライン版・モバイル版で解かれるConceptisのパズルは1日平均 2000万件にものぼります。
筆者のパトリック・ミン(Patrick Min)さんはフリーの科学プログラマーで、専門は幾何学のソフトウェアですが、検索エンジン技術、アコースティックモデリング、情報セキュリティなど他分野の仕事も多数手がけており、こうした分野の論文、オープン/クローズドソースのソフトウェア発表の実績もあります。オランダのライデン大学でコンピュータサイエンスの修士号取得後、プリンストン大学で同博士号取得。パズルが大好きで、7歳の頃から父親のために数学のパズルを考案してきました。これはいまだに続いており、今日もまたパパは息子の考えたCalcudokuパズルで唸る日々。ロンドン在住。
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PATRICK MIN - CALCUDOKU.ORG(原文/satomi)