ここが1つのゴール地点かも。
高級コンデジの代名詞ともいえるリコーのGR DIGITALシリーズ。その最新作「GR」と付き合って一ヶ月が経ちました。APS-Cサイズのセンサーをポケットサイズのボディに詰め込んだ2013上半期のトレンドリーダーといえる存在の製品ですが、その性能、そして満足度はどうなのかレポートさせてください。一部の画像はクリックで大きいサイズが見られます。
一眼デジカメはグレートだけど、日々持ち歩くには重い
スマートフォンのカメラ性能が向上し、デジカメを持たない人が増えてきていると聞きました。確かにスナップを撮るぶんにはiPhoneやAndroidで十分と思うこともしばしば。だからこそ単機能製品としてのデジカメには、スマートフォンをはるかに超える凌駕する性能を求めたくなります。
その代表格が一眼デジカメでしょう。高精細で広ダイナミックレンジ、暗部に強くハイレスポンスでストレスフリー。レンズを交換、ストロボを追加、といったようにオプション次第で、どこまでも可能性を伸ばしていけます。
しかし一眼デジカメを日常的に使う場合、「重く、かさばる」という代償を背負わなければなりません。コンパクトな製品もありますが、暗い場所ではノイジーな絵になりやすい。
いつでもポケットに入れて持ち歩けるコンパクトデジタルカメラクラスで、一眼デジカメに負けない画質の製品を…。その願いを叶えてくれるのが「GR」です。
「GR」は暗い場所でも本気で使えるコンデジ
35mm換算28mmのレンズを持つ単焦点デジカメ。それが「GR」です。広角レンズを生かした風景スナップが得意なカメラなんですよ。なおスマートフォンのカメラの画角は35mm換算で35mmほど。スマホより一回り広い範囲を撮影できます。「GR」の最大のポイントは、117×61×34.7mm・215gの小さなボディに1620万画のAPS-Cサイズセンサーを搭載したこと。一般的な一眼レスデジカメ、そして一部のミラーレスデジカメしか採用していなかった、大きなセンサーを使っているんです。
センサーサイズが大きくなると、高感度ノイズが出にくくなるから夜や室内での撮影もラク。個人的にはISO3200を常用してもいいんじゃないか、緊急時にはISO6400もいけるよねと思えるほどでしたよ。
こちら、すべて三脚は使っていません。展望台の縁に本体を押しつけて撮影しました。横幅640ピクセルにリサイズしたからというのもありますが、高ISOでも撮影結果は良好です。ホワイトバランスはちょっと崩れちゃいますけどね。
データ書き込みしながら電源OFFできる!
従来のコンデジがシングルコアCPUだとしたら、「GR」はデュアルコア以上。というのも、2つの動作を同時におこなってくれるんですよ。
その一例が撮影後すぐの電源OFF。普通のコンデジはシャッターボタンを押してすぐに電源をOFFにしても、メモリカードにデータを書き終えるまで飛び出ていたレンズが収納されませんでしたが、「GR」は書き込み作業と終了作業が並列で処理されます。
ポケットからカメラを取り出して即シャッター。電源OFFにしてまたポケットに。という撮影を行ったときの快適さはちょっと感動モノです。
RAWで撮影可能、本体内現像も可能
一眼デジカメのようにRAWでの撮影も可能です。これはGR DIGITALシリーズの伝統でしたが、「GR」では本体内での現像機能もつきました。現像時にエフェクトを利用することも可能なので、まずは素のままで撮影しておいて、あとからゆっくりと好みのトーンに仕立てることができます。
GRD4は1cmだった最短撮影距離は10cmに
GR DIGITAL4(以下GRD4)と比べると、マクロ域が弱くなりました。GRD4は最短撮影距離が1cmだったのに、「GR」は10cm。これは明らかにウィークポイント。
オートフォーカスが速くなったとはいえ、一眼デジカメ(特に昨今のミラーレス)と比べるともたもたしているので、被写体に近寄って撮影したときに、うまくピントが合わないのか、そもそもピントが合わない距離なのかが慣れるまで判別できません。
「GR」を使うにあたっては、心持ち引いて撮る、ということを意識する必要があるでしょう。
35mmクロップ機能で最短撮影距離問題をややカバー
そこで「GR」には35mm単焦点レンズと同じ画角で撮影できる35㎜クロップ撮影機能があります。
センサー外周部のデータをカットすることで実現している機能ゆえ1000万画素相当の解像度となりますが、1世代前のGRD4とほぼ同じ画素数なので問題ないでしょう。むしろ被写体を大きく写すことができるので、体感的に最短撮影距離が短くなるというメリットがあります。
スナップシーンにおいても35mmの画角は使いやすいしね!
明るいところ専用なら格安なGRD4もいいかも
さてここで、「GR」の強力なライバルであるGRD4にも触れなければならないでしょう。明るい場所シーンの描写力は今なお一級品。しかも「GR」にはない手ぶれ補正機能を搭載、より小さくて軽い(108.6×59.8×32.5mm、190g)といったメリットもあり、お値段は「GR」の半分以下の3万円から。お買い得すぎる。
初めての単焦点高級コンデジを選ぶのなら、現時点におけるGRD4の商品力は侮れませんよ。
注意点としては、ノイズ感の好みによりますが常用感度はISO800まで。そして暗い場所でのオートフォーカス性能にやや難があるところですね。
通勤通学中も、旅行先にも連れて行きたくなるコンデジが「GR」
ローパスレスAPS-Cセンサー&専用レンズは想像以上にシャープな映りでびっくり。色のノリもいいし、立体感も十分です。28mm&f2.8でもボケがこれだけ出せるとは。広角域はこれでアガリでいいかもしれません。フルサイズの一眼デジカメまでたどり着いた方にも一度は手にとって欲しいですね。標準~望遠域は一眼デジカメに担当させるとして、良質なセンサ一体型広角レンズとしてカメラバックに入れておきたくなりますよ。普段着のときもポケットに入れて持ち歩きたくなる魅力を持っています。それこそスマホとツガイで飼うのもオススメです。
GR[リコー]
(武者良太)