アマゾンの「Flow」、商品をスマホで顔認識、瞬時に検索

  • author 福田ミホ
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アマゾンの「Flow」、商品をスマホで顔認識、瞬時に検索

リアル店舗にはますます脅威。

今日、近所の小さな本屋さんに行って、ウィンドウに飾ってある本を確認しました。前から買おうと思ってた本です。そしてスマートフォンを取り出し、その本の表紙をスキャンして、注文しました。本屋さんで買うよりも7ドル(約710円)安いし、2日後にはデスクに届くことでしょう。それは簡単で、シームレスで、そしてフェアではありません。これを可能にしたのが、Amazonアプリの新機能「Flow」です(日本語版では未対応)。

アマゾンのiOSアプリがオーバーホールされて、商品を見た目でスキャンできる機能、Flowが搭載されました。これを使うと、スーパーとか本屋さんの店内をうろつきつつ購入はアマゾンでっていう、お店的にはありがたくないお客さんが増えてしまいそうです。

Flowを使うと、買い物がますます簡単になります。何か買わなきゃいけないものを思い出すときに限ってコンピューターの近くにいないものですが、そんなときのための最速・最良の方法です。

アマゾンのスマートフォンアプリはそもそもそういうものですが、Flowを使えば、買いたいものにスマートフォンのカメラを向けるだけでいいんです。元々アマゾンアプリには2009年から画像検索機能があって、そのひとつの「Scan it」(日本語版「スキャンする」)を使えばバーコードをスキャンできたし、もうひとつ「Snap it」(日本語版には一時「フォト検索」として存在、現在はなし)を使えば商品の写真を撮ってアマゾンの画像データベースと照らし合わせたりができました。

FlowはSnap itをオーバーホールしたものですが、はるかに使いやすくなっています。というのは、「Snap it」だと写真を撮る手間があったし、撮った写真がうまく認識されるかどうかはやってみないとわからず、さらに認識される割合も低かったんです。だからバーコードをスキャンする方がずっと簡単でした。

でもFlowは違います。Flowをオンにすると、スマートフォンのカメラがスーパーのレジみたいにスキャン対象をずっと待ち受けてくれるんです。スーパーのレジでスキャンするのはバーコードですが、Flowではリアルの商品の外見をスキャンして、それをアマゾンのデータベースに入ってる商品の姿と照合するんです。本やDVDだけじゃなく、スナック菓子とか洗濯用洗剤とかまで、まるで魔法みたいに一瞬で認識されます。

アマゾンのショッピング担当副社長サム・ホール氏によれば、Flowではアマゾンが販売するもの全てを検索可能にすることを目指していますが、とりあえずはパッケージに入ってるもので使うのが最適です。実際使った感じでも、たしかにパッケージに入ってるものでしか使えないし、特に太く大きな字が書かれてるものが認識されやすかったです。ホール氏はFlowの裏側の技術についてあまり明かしてはいませんが、特に目新しいものでもありません。たとえばデジタルカメラでの顔認識機能とか、Facebookで友達の顔が判別される機能とかも同様の技術です。

そういえば、IBMもFlowと同じような技術を1年前に発表していました。IBMがデモしていたのはAR(拡張現実)機能で、リアルのモノを認識してそれについての情報を表示、みたいなものでした。たとえばスーパーの棚にあるものを認識して、栄養価を表示するみたいな。

でも前出のホール氏いわく、Flowの主目的はリアル店舗で使われること、ではなく、いつも買っているものを簡単に補充できるようにすることです。たとえば歯ブラシやゴミ袋やトイレットペーパーがなくなりそうなとき、家にあるパッケージをサッとスキャンすればいいってことです。つまりリアルのお店をアマゾンのショールーム化したいわけじゃなく、ベッドルームからティッシュペーパーが買えたらいいな、ってことです。でも結局、両方のシチュエーションで使っちゃうとは思いますが。

アマゾンもIBMも、この技術で価格比較ができることを前面に押し出してはいません。でも冒頭の僕の経験で言えば、明日11ドル(約1120円)で手に入るものを、今手に入るからって18ドル(約1830円)で買うかは疑問です。価格比較はFlowでさらに簡単になります。アマゾンはすぐにも、たとえばコストコの代替になりえます。シリアルの箱をスキャンしてみたら、Flowが商品名も内容量もきっちり認識したし、しかも価格は約500g入りが3箱で8.94ドル(約910円)です。ニューヨークのスーパーじゃ、どこ探してもそんなに安く買えません。

Flowは、小規模なリアル店舗にますます打撃を与えると思われます。アマゾンは巨大企業であり、これまでもパパ・ママショップをつぶしたとして糾弾されてはきました。アマゾン自身も、テクノロジーのそんな負の意味を前面に出さずに立ち回ろうとしています。でも結局、アマゾンの仕事は人に物を売ることであって、小規模なお店を潰さないことではありません。だから地元のお店もつぶしたくない人は、地元のお店でも買い物をするようにしなきゃいけませんね。。

Flowが実際使われるシナリオは、価格比較とホール氏が言うような利便性、その両方の組み合わせになると思われます。そしてまたひとつふたつ、アマゾンを使う場面が増えていくんですね…。

iTunes、Video by Nick Stango]

Mario Aguilar(原文/miho)