ハーバード大にある「人皮装丁本」は本当に人間の皮でした

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ハーバード大にある「人皮装丁本」は本当に人間の皮でした

昔から「ハーバード大学附属図書館には人間の皮の装幀本がある」という噂はありますが…。

「人間の皮じゃなく羊革だった」というニュースが4月に流れてがっかり(安堵)したのもつかの間、なんとハーバード大学自らが調査を行い、それとは別に人間の皮の本が本当にあることを明らかにしました。大学側が認めたのは今回が初めて。

問題の人皮本はArsène Houssaye著「Des destinées de l'ame(魂の運命)」といいます。「死後の魂との和解」を説いた19世紀の本で、本の持ち主のLudovic Bouland医師が、女性の精神病患者の皮で装丁したものと考えられています。

…というのも同医師が本の中に挟んだ原稿には、こんな病的な文章がしたためられているのです(フランス語の英訳から和訳しています)。

この本は人皮紙で製本したものだ。人皮のエレガンスをそのまま残すため、余計な装飾は一切刷っていない。人間の魂について書かれた本には、人間のカヴァーが相応しい。小生は、ある女性の背中から切り取ったこの1枚の人皮をずっと大事にしまってきた。下準備の方法に応じて、この皮のいろいろな面が見れるのは面白い。例えばこれに比べると、小生の書斎にある小さな本「Sever. Pinaeus de Virginitatis notis」は同じ人皮装丁本でも漆(うるし)で仕上げたため、色黒だ。

ったく現代の感覚では不謹慎すぎておよそ想像もつかない世界ですけど、昔は「人皮装丁本(anthropodermic bibliopegy)」は割とあったようです。「犯罪者の告白について書いた本は、受刑者の皮で装丁することも、たまにあった。家族や恋人に本の形で形見を残したり」と、ハーバード大学のライブラリアン、Heather Coleさんは書いてます。

Bouland医師のメモはともあれ、本当に人間の皮かどうか確かめるのは結構な手間。ずっと噂で終わってたんですが、ついにハーバード大学図書館のライブラリアンたちが重い腰をあげ、もう21世紀なんだし、そろそろ現代科学の力で白黒決着をつけようぜーってなったんです。

まず最初に使ったのは「ペプチド質量指紋分析(mass peptide fingerprinting)」というテクニック。これで皮の中のタンパク質を特定し、ヤギ・羊・牛といった動物のタンパク質でないことを見分けます。ただしこの手法では、もっとヒトに近い類人猿・ヒヒなどとは見分けがつきません。そちらは「液体クロマトグラフィー質量分析法(Liquid Chromatography-Tandem Mass Spectrometry:LCMSMS)」でタンパク質を組織する分子の並び方を調べて、判定しました。すると結果は…ほぼ間違いなく人間と出たのです。ごーん。

私、何を隠そうこの本は直に見たことあります。大学1年のときに見て、以来ずっと脳裏に焼き付いて離れないままになってます。キャンパスの界隈では有名な話だったので、私も人皮装丁本のことは知ってました。パーティーでよく囁かれる噂の類いで、2006年に学内新聞Harvard Crimsonに載った紹介記事は未だにネットでたびたび話題に上ってますしね。

でもこわごわ近寄っていって何が驚いたって、結構ふつうなんですよ。同じ部屋には、他にも動物の皮の装丁本が何百冊とあったんですが、まったく違いがわからないんです。

羊、豚、人間—―私たちの皮もみなおんなじように赤茶けて、老いてる。結局これだけ似てるから判別にこれだけ時間がかかったんですもんね。考えてみれば「人皮装丁本かもな」ってわかって触る分には、それほど怖くないんです。怖いのはそれが人皮装丁本とも知らずに、死んだ人間の皮に触って、触った自覚もないこと。そう考えるとゾーッですよ。

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source: Houghton Library Blog

Sarah Zhang - Gizmodo US[原文

(satomi)