それって使いやすいんでしょうか。
Re/Codeによれば、Facebookのメインアプリからチャットにアクセスできなくなり始めたようです。元々彼らがみんなにメッセンジャーアプリを使わせる方針なのはわかっていましたが、それがついに動き始めたんです。
この変更は、米国のユーザーから徐々に適用が始まっています。メインアプリからチャットを使おうとしたとき、メッセンジャーアプリをアピールされつつ「後で」ボタンが表示される人は、まだラッキーです。「後で」ボタンが表示されなくなっても、メインアプリでは未読メッセージの存在は通知してくれます。ただ中身を読むには、メッセンジャーアプリをダウンロードしなくちゃいけなくなるんです。
たしかにメッセンジャーアプリは、メインアプリを手動でタップしていくより使いやすいです。でもFacebookというひとつのサーヴィスを使うためにふたつのアプリが必要なのは面倒で、ユーザー体験全体で見てプラスとは思えません。
でもこのチャットのアンバンドリングは、まだまだ序の口なのです。
大アンバンドリング時代の幕開け
フェイスブックがいくつもスタートアップを買収した目的は、彼らのアプリ、またはFacebookアプリを強化する要素を手に入れることでした。InstagramやWhatsAppを買ったことで、フェイスブックは非常にポピュラーなモバイルサーヴィスをふたつも手中に収めました。Oculus Riftもそのうちアプリの形をとることでしょう。フェイスブックはアプリのスタートアップにお金を惜しみません。だってアプリこそ、彼らのモバイル戦略の基礎だからです。
フェイスブックはお金で買えないものは、自分で作っています。Snapchat買収に失敗すると、そのクローンのSlingshotを開発しました。フィードを美しく表現するFlipboardはPaperとして再現しました。フェイスブックがアプリをひとつひとつ増やすたびに、ユーザーがスマートフォンに入れるフェイスブック系アプリも増えていきました。
でもスマートフォンをフェイスブック系アプリで埋め尽くすのがうれしいなんて人はいません。少なくとも、Facebook自体のアプリはひとつでいいという人が大勢ではないでしょうか。アプリをバラバラに立ち上げればメモリも占有します。Facebookのスピンオフとか買収したアプリをダウンロードすればするほど、他のものを使う余地がなくなるんです。
それは偶然ではありません。フェイスブックのアンバンドリング戦略は、メインアプリに詰め込みすぎてモバイルでうまく動かないという課題への答えでもあるからです。またフェイスブックがアプリのエコシステムを支配したいという思いもあり、それにはポピュラーなアプリをたくさん持っている方が、ひとつしかないよりも有利だからです。Facebook Homeはヒットしなかったかもしれませんが、そこで目指したスマートフォン乗っ取りという夢は消えていません。多くのユーザーにメッセンジャーアプリを強制しているのは、その野望の一環なのです。
バラバラ化は続く
フェイスブックは、可能であればみんなの全アプリを支配しようとしているかのようです。それはビジネスだから仕方ないのかもしれません。でもサーヴィスを可能な限りバラバラのスタンドアローンアプリにする(または別のアプリを買収してくる)というやり方は、ユーザーにとってはうっとうしいものです。
上にメモリの問題を書きましたが、それが一番大きいことではありません。かりにメモリが700GBとかあって動作に問題がなかったとしても、いろんなアプリを目的別に切り替えなきゃいけないってだけで面倒です。
フェイスブックがここまで成功した理由のひとつは、ワンストップのソーシャルネットワークだったからです。写真にコメントしたりウォールにポストしたり、または個別にメッセージを送ったりがひとつのサーヴィスでできるのが便利なんです。それをわざわざ分解してしまうと、その一番コアな魅力が失われてしまいます。1ヵ所でできるはずのことを、いちいち3つとか4つアプリを立ち上げてするようになるなんて、ユーザー体験を複雑にするだけです。
それに、個々のアプリの質もあまり良くありません。Paperはきれいですが、誰も使っていません。メッセンジャーアプリはユーザーは多くても、絶対存在しなきゃいけないものではありません。SlingshotとかPokeとかFacebook Cameraはみんなイマイチです。フェイスブックは利用価値も体験の質も低いアプリを次々と作ることに貴重なリソースを注ぎ込んでいますが、それがもし既存のアプリに向けられれば、バラバラにしなくてもわかりやすいものにできたのかもしれません。
でもそれだとビジネス的な旨みが少ないんです。アプリを増やせばそこに広告を載せられます。競合が入る余地も少ないです。ただアプリが増えることで唯一損なわれるのが、ユーザー体験です。
さらにフェイスブックの戦略は、もうFacebookを使っていない人にさえ影響を及ぼします。フェイスブックの機能と同じようなことができるアプリは他にもあります。他のアプリはフェイスブックの動向を意識しているので、もしサーヴィスをバラバラにしたフェイスブックがビジネス的にうまくいったとなると、それなら自分たちもと追随してしまうかもしれません。すでにFoursquareは、最近ふたつのアプリに分かれました。これからもある日突然、Instagram PhotoとInstagram Videoが登場するかもしれません。Snapchat Storiesが単独アプリになるかもしれません。
フェイスブックの戦略は、利益には結びつくかもしれません。でももし彼らがこのバラバラ化に成功したとして、他のサーヴィスも追随してしまうなら、我々のアプリライフはちょっとした悪夢に変わってしまうことでしょう。
source: Re/Code
Kate Knibbs - Gizmodo US[原文]
(miho)