ビッグデータが音楽を殺す? 1%のスターが楽曲売上の77%を独占

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ビッグデータが音楽を殺す? 1%のスターが楽曲売上の77%を独占


ヒット探知器が羊の群れを加速。

ネットでどんな楽曲でも買える時代になったら無名のアーティストにも儲けが回ると思いきや、みんなますます知ってる曲しか買わなくなってきて、今や上位1%が楽曲売上の77%を独占しちゃってます。

デジタル音楽革命でむしろロングテールは死んだっていうのは前から言われてることで、やれ携帯のランキング表示画面がちっこいせいだとか、選択肢の幅が広すぎて嫌気がさしてるんだとか言われてますよね。

ですが、ザ・アトランティック上級エディターのDerek Thompson氏が新コラムで書いてる原因はちょっと違う。みんなどっかで聴いた曲にしか反応しない、ラジオから流れてくるのも似たような曲ばかり、レーベルもどっかで聴いたような曲しか売らない、なぜなら売る前に既に売れてる曲を分析してそれに似た曲しか売らないからだ、つまりビッグデータが悪い、と言うんですね。

名づけて「Shazamエフェクト」。

Shazamは曲名ど忘れの歌をスマホに向かって歌う(流れてるのを聴かせる)と曲名・アーティストを教えてくれるアプリです。スタンフォードで博士号とったAvery Wang氏らが苦労して開発して結構な人気なんですが、ここに吹き込む1日2,000万件の鼻歌検索を見れば「どんな曲が流行るか世界最速でキャッチできる!」っていうんで、レーベルのエグゼクティブが飛びつき、ヒット探知器として活用してるようなのです。それが1%を余計に加勢してるというわけ。なるなる。

Thompson記者はこう書いてます。

最近の人気楽曲はトップチャートに何ヶ月も居残るので、ヒットソングの金銭的価値は爆発的に増大した。メディア調査会社の統計によれば、バンド&ソロアーティスト上位1%が音楽売上げの77%を占有しているという。デジタル楽曲販売数は飛躍的に増大した。しかしその一方でトップセラー10曲が市場に占める割合は10年前より82%も増えている。デジタル時代のDIYのアーティスト出現で音楽業界のロングテールは確かに伸びたが、先頭集団の懐は肥える一方だ。

結果どうなるか? ラジオはますます似たような曲ばかりになっている。Grizzly Bearみたいな人気のインディーバンドですら生活費ギリギリで食いつなぐのがやっとらしい。


昔は零細・中堅アーティストもCD当たればラジオでじゃんじゃん流れて大儲けでした。それが今はアーティストとバンドのトップ集団がどっかり上にいて、ヒットも仕掛けで造られてる感があります。ラジオでエアタイムがっつり買って朝から晩まで流したりね。Thompson記者はそのラジオ(レーベル最後の砦)のことにも触れてますよ。

同じ曲を何度も何度も流すのは昔からある現象だが、昨今のラジオ局はその限界を新たなレベルに押し上げた。iHeartMediaの子会社によると、昨年全米トップ40の大手ラジオ局がトップ10の曲を流す回数は10年前に比べ2倍近くまで増えたという。

2013年ラジオで最もよく流れた曲はロビン・シックの「ブラード・ラインズ」だが、2003年ラジオで最も流れた曲の3ドアーズ・ダウン「When I'm Gone」より流れた回数は70%多かった。2013年5番目によく流れた曲のザ・ルミニアーズ「Ho Hey」ですら、10年前のどの曲よりも30%多く流れている。


それだけ流せば売れますわなあ。馴染みのあるものを好むことを心理学で「fluency」と呼ぶらしいのですが、耳タコにすれば売れるというのはそういう人間心理を利用した売り方なのだと氏はNBCニュースで語っています。



「ビルボードTOP100どれもおんなじだなって思ってたけど歳のせいじゃなかったんだね」
と盛り上がる中年キャスター


テイラー・スウィフトも朝から晩までどのステーションに切り替えても流れてて逃げ場なしでしたもんね。売る前からNo.1ヒットになることはもう決まっていたのかも。スウィフト級のアーティストがSpotifyから全楽曲削除しても痛くもかゆくもない、そんなにお金もらってないし、というのは、まあ、そうなんでしょう。


source: The Atlantic

Matt Novak - FACTUALLY - Gizmodo US[原文

(satomi)