アラン・チューリングの隠されていた直筆ノートがオークションに

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    アラン・チューリングの隠されていた直筆ノートがオークションに

    映画の公開もオークションの結果も待ち遠しいところ。

    映画「イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密」(日本公開3月13日)でその生涯が描かれ、一躍再注目が集まっているアラン・チューリング。彼はイギリスの重要な数学者です。彼がいなければ第2次世界大戦中のナチス・ドイツの悪名高い暗号、エニグマ・コードは解読できませんでした。もしかしたらイギリスはこの戦争を生き延びられなかったかもと言われています。また、彼はコンピューター・サイエンスの先駆者でもあり、「人工知能の父」と呼ぶ人さえいるほどです。

    そして、このチューリングのおかげで、開発者達はいまだに「チューリング・テスト」という人工知能の判別テストをなかなか合格できずにいるんですよね。何度もトライするハメになっていたりします。

    そんなチューリング、同性愛者であったために1952年にイギリス政府から科学的去勢を受け、その2年後に青酸入りリンゴを食べて自殺するという、すさまじくも悲しい人生の閉じ方をした人でもあります。彼のおかげでイギリスがナチスの潜水艦に壊滅的打撃を受けなかったにも関わらずです。

    チューリングの生涯はアンドリュー・ホッジスによる伝記「エニグマ」で詳細に描かれていて、それが、ベネディクト・カンバーバッチがチューリング役を演じる今回の映画の原作にもなっています。その貴重なチューリング本人の直筆ノートが4月13日にNYで行われるオークションに出品されることになり、すでにかなりの熱気に包まれています。

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    今回のオークションを担当するイギリスの有名なオークション・ハウス、「ボナムス」によると、このノートは、チューリングが数学的記号やコンピューター・サイエンスを編み出した頃の本人手書きのものであり、それらがどうやって生まれたかを示すものとなっている、きわめて歴史的価値が高い資料となっているそうです。

    1942年頃のものですが、その当時イギリスではブレッチャリー・パークにあった専門学校を中心に暗号解読の全盛期でもありました。ただそれは、理論的な仕事に使われるものであって、エニグマ・コードの解読目的ではありませんでしたが。

    チューリングの死後に友人の数学者、ロビン・ガンディによって保管されていたもので、ガンディはこのノートを自分の夢の日記のように扱い、他人の目にはほとんど触れさせないようにしていたとのことです。ボナムスによると、このチューリングの直筆ノートは、原稿1ページにつき「100万ドル(約1億円)はくだらない」といい、収益の一部はチャリティに寄付されることになるそうです。

    source: Bonhams

    Chris Mills - Gizmodo US[原文

    (沢田太陽)